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何を置くか、より、何を置かないか

「本がお好きなんですか?」
「ここの本は全部読まれたのですか?」
と並んで、よくある質問。
「店の本はどうやって選んでいるのですか」

私は、書店員や司書や本に関係するあらゆる職業をひとつも経験することなく、いきなり本屋を始めた。一から十までとは言わないですが、一から八、九くらいまで、自己流です。
同じようなお店は周りになかったし、なかったから作ろうと思ったわけだし…

小豆書房は古本からスタートし、開店から2年経った現在は、古本と新刊の両方を扱っている(新刊は絞って入れていた時期もあるけど今は古本と半々くらい)
なので、新刊を仕入れるときにも、もし何年後、何十年後かに古本としてやってきたときに「ぜひ買取して店頭に並べたい」と思えるかどうか、は、ひとつの物差しとなっている。
新刊も古本も、選ぶときの基準は同じ。

今すぐに役に立つ本は、とても大事。
効率よく、手っ取り早く、読みやすい本も、とても大事。
だけど、小さな本屋の限りある本棚に並べるには、何かを諦めなければならない。
小豆書房には、
"今すぐ役に立つかどうか、だけではなく、ずっと長く手元に置いてじっくり読みたくなる本"
を並べよう、と決めている。

これは決して、流行りのものや、時代特有のもの(今ならcovid19関連のものなど)を排除する、という意味ではない。

この答えで、何かが伝わっているかどうかは分からないけど、本棚から1冊2冊、ときには何冊も抱えて帰ってくださる方には、何かしら届くものがあったのかな、と思っている。

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どちらかと言うと、「何を置くか」より「何を置かないか」を考えている。

この小さな本屋に、出来るだけ幅広く、偏りがなく、多様性(この安直な言葉に頼るのは悔しいが)に満ちた本棚をつくりたいと思うと、「置く本」をピンポイントで選んでいくよりは、世の中に出回る大量の本の情報にアクセスしその中から「置かない本」を除いていく方がいいかなと思っている(自己流)。
キリがない作業で、時間はいくらあっても本当に足りないけど、小豆書房の肝だと思う。

店にはカフェを併設している(その理由などはまた別の機会に)。
オープンから半年経った頃、食のイベントやメディアで取り上げていただく機会が重なり、カフェの方が忙しすぎて本のことに時間を割けなくなった時期があった。
店全体の売上は良かったものの、本の動きが鈍り、この時がいちばん「マズイ」と思った。本は小豆書房の要だ。
(だからと言って、カフェで提供するものにも手を抜きたくない。そりゃそうだ)

何を置くかより、何を置かないか。
何をするかより、何をしないか。

人生の選択をするときも、わりとこの考え方でやってきた気がする。
これもよく頂く質問で、「なぜ本屋をやろうと思ったのですか」の答えのひとつとして「消去法」と答えているのは、そういうことです。
最初の選択肢は、たぶん、広い方がいい。

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