特等席には置物が並ぶ

電車に纏わることばかりをここでは書いている。まだ2つ目なのに、ばかりをとは大袈裟だな。今の僕は電車に揺られるこの時間が1番書きたくなる時なのかもしれない。

扉が開き、降りる人を待つことなく勢いよく足を踏み入れ、目標とする椅子を狩りのような速さで襲いかかり、座席に腰を捻じ込む。座ると同時に腕を組み、目を瞑り、1秒前までの狩人のような動きとは真逆の、置物のようなおじ様が同じ車両の特等席に座っている。

一駅の後、同じように別の狩人がおじ様の隣へ襲いかかり、腕組みの姿勢で置物になった。

さっきまでの優雅な1人座りを満喫していたおじ様が、隣に置かれた置物のせいでとても居心地悪そうにしている。

類は友を呼ぶ。

扉横のスペースで2度の狩りを目撃した僕はこの諺が頭に浮かび、笑いを堪えるのに必死だ。

笑いを堪えてここに書いていたら乗り換え駅が近づいてきた。

2つの置物が、電車が揺れるたびにお互い居心地悪そうに同じように揺られている。日曜日の電車は平日のそれと雰囲気が違って面白い。

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