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髪切虫書房
2023年7月13日 21:00
「あー、だるいだるい」 上原瑞希は無数の蝉が大合唱を繰り返す遊歩道を歩いていた。その言葉とは裏腹に瑞希の足取りは心なしか軽やかだ。普通の学校であればすでに夏休みに入っているので、暑い中わざわざこんなところを歩く必要はないはずだ。「ちぇ! たかだか赤三つぐらいで補講なんて……うちの学校もけち臭いんだよなあ」 しごく納得である。 ――バサリ 膝あたりまで届く真っ直ぐな黒髪をうるさそうにかき上