[SS3]LORELEY

この小説は二次創作です。SCP財団本家様ならびに日本支部様へのリンクは最下部に明記してあります。

注意:大和博士と水野研究員のCP表現(恋愛的要素)を含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

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私のローレライ、君は私よりも先に老いて先に死ぬだろう。

浅ましき躯と成り果てた私が、君の後を追うことは叶わないのだ。その声で男を誘惑しておきながら、君は泡となり水の底へ消えるのか。
 
 
非道い女だ。
――我ながら縋りつく様は、実に惨めだ。



今この瞬間も君の華奢な身体を掻き抱き、額に口づけを落としたいと切望する浅ましき愛欲、渇きは絶えず虚無の躯を蝕む。私は何者でもなく、何処にも居ない。伸ばした手が空を切るのは君が逃げるからではない――私が此処に存在し得ないからだ。

愛しきローレライ、私だけの姫君。瑞を湛えた四肢を、髪を、私に寄り添わせてはならない。骸にも成れないこの醜き躯に、無防備に寄りかかってはならない。嗚呼いけない子だ、君は本当に、いけない子だ。

私の手を求めてはいけない。この掌は厚いが、若い君の肌のように艶やかではなく、そして多様に変化する術を永遠《トワ》に失ってしまった。永遠にだ。

君に看取られて死ぬことは何度だって出来るが、君を追って絶果てることはどう足掻こうと叶わない。



人魚を追って海の藻屑と消えた幾人もの男たちが私は羨ましい、妬ましくて堪らないのだ。今になって人並みに情を交わしたいと願うようになろうとは。

少なくともあの日には思いもよらなかったことだ。あの日。70年も前のことだ、君にとっては遥か彼方、御伽噺のような昔への――悔恨だ。


 
美しき人魚姫、夢の狭間に揺らめく気泡。遍く海へ、泳いでお往き。





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【-CREDITS-】

この二次創作小説は、「クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0」に準拠しています。

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水野研究員の人事ファイル http://ja.scp-wiki.net/mizuno-author-page

大和博士の人事ファイル http://ja.scp-wiki.net/dr-oowa-s-personnel-file

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