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世一の随想シリーズ・好日・一夕・起抜

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気付いたこと、お伝えしたいこと、感じたこと、日常の出来事 そしてお祝い、お詫び、感謝…… 森羅万象についてのページです。 "世一"と呼びすてにしてチョウダイ ! !
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#小説

随想起抜 漂泊の画家 不染鉄 展 ~理想郷を求めて~奈良県立美術館 Vol 2

続・わたしだけの夢殿・夢殿『秋涙』完全版 差し込み原稿一部紹介 あのなぁ~お空から突き出された葛切りはんのような雨がありますやろ。あれはな全部仏はんなんですわ。きっと。 黒豆はんをふやかしたお水みたいて云いましたけどな……ちゃいますねん。 凡てが銀絹ですねん。画面いっぱいに塗り上げられた鼠色はな、数多の銀糸、銀ですねん。暁鼠(あかつきねず)、牡丹鼠(ぼたんねず)、藤鼠(ふじねず)、桔梗鼠(ききょうねず)、白鼠、銀鼠、絹鼠…… これな、全部「銀」ですねん。鉄さんなぁ、ほそぉい

随想一夕『わたしだけの夢殿』漂泊の画家 不染鉄 展 ~理想郷を求めて~奈良県立美術館

随想一夕『わたしだけの夢殿』漂泊の画家 不染鉄 展 ~理想郷を求めて~奈良県立美術館 2月27日の大阪は冷たい風が吹きすさぶ中、朝から霙まじりの雨が横から吹き付けるという重たい天気。それでも所々みせる雲の切れ間からは、柔らかな陽射しも顔を覗かせていた。それは夢殿にみる南の空の雲を割り、横一条の輝きを齎した様にすら思えたものだった。生憎、膵臓の痛みが引かず背中から鳩尾にかけて痛みが走っていたことから余程延期しようかとも考えたのだが、この状況であればいつ何時見られなくなる~書け

随想一夕「感謝と御礼」

このたび私共の管理する「e-puboo」での短編小説集のダウンロードが 110件となりました。たしか8月末あたりにダウンロード100件の御礼をさせていただいたと存じますが、わずか20日ほどで、更に10件ものダウンロードを頂けましたこと謹んで御礼を申し上げます。 拙い作品ばかりとは申せど、どれか一作でも好きな作品に巡り合って頂ければ、書き手にとりましてこれに勝る幸せはございません。  今回、中でも「凍裂」のダウンロードの伸びが顕著であり、私にとっても好きな作品ばかりが収められ

随想起抜『レカミエとオテーロ』

ジュリエット・レカミエ________いやマダム・レカミエと云った方が通りは良いのか。帝政時代19世紀初頭。高い教養を身に付け、柳絮の才を如何なく発揮し、フランス文学を礎に権力者たちによる"お茶会"の場でもその存在感を高めた絶世の美女であり傑出した人物として歴史に名を刻む。 フランス絵画の変遷になぞって眺めるのであればロココ終焉から新古典主義を駆け抜けた女傑であり、希望と騒乱が混沌なるままに支配した時代を、女としての生き道より人間としての生き方を貫いた女性であり…… 。 惜

随想夜曲「e-puboo飛鳥世一作品集100ダウンロードへの感謝」

 今日のこと。e-pubooの作品集が100ダウンロードのキリバンご褒美を頂戴した。昨日、99ダウンロードの報告をさせていただいていたので、きっと、お優しい御仁がポチッて下さったのだと思います。  読んで頂けたり、ダウンロードして頂けた皆さんには感謝しかございません。本当にありがとうございます。マイペースで遺して往くことしか出来ませんが、どうかこれからもよろしくお願い申し上げます。   世一 以下 8月25日本宅アップの初稿転載 7月23日にわたしの書いた小説集のダウンロ

随想起抜 「旅はけして終わらない」

作品のようなものを仕上げていると、夢か現かわからぬ処______さながら阿鼻地での目覚めをオモワせる起き抜けに遭遇することがある。考えあぐね始末をみた先のこととして堕ちて来るのか。入院の共に選んだ「林芙美子紀行集 下駄で歩いた巴里」は正解だったのだろう。これ以上ないほどにその存在をわたしの心と頭に刻み付け、再現性という言葉と共に具体的なあり様を伴い堕ちてきた。 拙著 夢殿 第四形態「秋涙」を書き上げてから今にち、リライトに取り組むことを決意するうえでその契機となったのは再現

随想好日『わたしの古道具屋が繋がった日』リライトはじまる③

風も吹くなり  雲も光るなり  生きている幸福は  波間の鴎の如く縹渺と漂ひ  生きている幸福は  あなたも知っている  私もよく知っている  花のいのちはみじかくて  苦しきことのみ多かれど  風も吹くなり 雲も光るなり。                   ◆ わたしとこの「古道具屋の古女将・お里」がやってくれた。最も繋がって欲しいところ、最も繋がって欲しい文人と繋がってくれた。さすが準主役級。 正直なところどの様に繋げるべきか、紡ぐべきかと思案していたのだが…… 奈

随想好日『わたしの煙草ネタ』リライトはじまる②

朝日の光、日光浴びて誉高き金鵄空飛ぶ日本一のフジを眺めに、ミドリのマキバに若葉を眺めに参りましょう。琥珀に迫る夕日が堕ちれば暁で、クラークなりましても、はいライトをつけてとシンセイすれば、ホープもピースもハッピーもいずれあやめかかきつばた。 さてその昔___________煙草に縁もった都都逸、小唄の類があったのだが、ご存じだろうか。かく云うわたしも正確なところは忘れている。 概ねこんな所だろうと自分で作詞したところも多いのだが…… どうだろう。 とのくらい煙草の銘柄として

随想起抜『わたしの腿膝三年尻八年』リライトはじまる。

「ももひざ三年しり八年云うてな、後家はんになってからも腿や膝に旦那はんの温もりを思い出しながら啼く日々は三年にもおよぶそうでな、尻にあっては忘れるまでには八年もの時間を要するいうんやから、そりゃぁ寂しかったんですやろうなぁ。さっさと十八年も経ってくれたらこっちのもんなんやろけど。 割れ鍋にも綴じ蓋いうて、どんな鍋にも、たとえどうであれ蓋はあった方がいろいろ都合も宜しいんですやろうなぁ。  ほれにしても… 昔の人はえらい粋なことを云うたものでしたなぁ」

随想夜曲『コンプリートしたテキスト蒐集』

カラヴァッジオの勉強には事欠かぬだけの資料はある。とは云ってみたところで素人が必要とするレベルなのだが。まぁ、読むに耐えないものとはならないものを書けるだけは揃っている。どれもこれも一流どころだ。 あとは書き手本人の腕の問題だ。  全く無かったのが今回のラ・トゥールの資料だったのだが、多分、今回集めただけでは最低限ということかもしれない。しっかりしたものを書こうと思えば、もう少しアカデミックに振れたものが必要になるのではないだろうか。が、穿った書き方をするならば、わたしのよ

随想好日『南の琳派・日本のゴーギャンと呼ばれた画描き田中一村』

随想好日『南の琳派・日本のゴーギャンと呼ばれた画描き田中一村』  わたしには紡ぎたくとも紡ぐことが出来ない画家が存在している。その生き様を書物などを通じ学べば学ぶほど距離を置かざるを得なくなる画家がいる。知らぬ方が寧ろ無手勝流宜しく無責任に書きやすいことがあることは知っている。知っているから余計に書けぬのである。  明治41年に栃木の木彫師の家に生まれた田中一村。本名田中孝である。近代日本画への造詣を傾けた御仁であれば『アダンの海辺』というタイトルは聞いたことがあるのでは

随想好日「熟まれ堕ちる瞬間に思いを寄せてみれば、孤独と闇しか無かった」

随想好日「熟まれ堕ちる瞬間に思いを寄せてみれば、孤独と闇しか無かった」 知っていたし理解していたしそこからしか産み落とすことは出来ないと分かっていた。他人様にとって良作であるか駄作秀作であるかに拘らず、自分の書いた作品たちに魂を込めようとする流れにおいては、孤独と闇しか存在しないのである。これは私にとってということであり、賑々しくあっても作品作りが出来るというお人もおられるだろう。 ここまでわたしが熟み堕とした作品たちに思いを寄せると3作品だけは賑々しい中で書いている。あ

速水御舟と三島由紀夫

三島由紀夫の「金閣寺」、水上勉の「金閣炎上」のモデルとなった人物。舞鶴生まれ________林 養賢である。 林養賢は、大浦半島突端の成生の西徳寺に昭和4年3月19日生まれる。村はわずか22戸の集落だったらしい。父が村上慈海に頼み鹿苑寺に入山、弟子入りとなる。昭和19年4月。養賢15才の時分。当時の金閣寺は三層部分だけが金箔を貼られた中途半端な有様でもあり、それをみた養賢は随分がっかりしたとも伝わっている。のちの昭和25年7月養賢21歳の犯行であった。 https://j

嗣人作品・夜行堂奇譚『山神蓮花』気配美を味わいつくす ! ! 朗読 青木双風

夜行堂奇譚、ついに第三巻発売開始!! ただいま絶賛予約受付中・お届けは7/17から 以下初稿 注)7/12大幅に増稿 おはようございます。 まぁ、御用とお急ぎの無い方は一度聞いてみてほしい。  美しいのです。そこはかとなく美しい。15分ほどの作品であるからして、5、6000字までの作品だろう。ここnoteで人気になり、続けざまに二冊の本を出されている。  わたしが嗣人氏をはじめて知ったのは去年の夏前ぐらいだったろうか。遅いのであるよ(笑)  なかでも夜行堂奇譚といえば嗣人