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あたたかい亡骸

父が亡くなった。

六年の今日のこと。

肝臓がんからの多機能不全。

あと数ヶ月は生きられると

家族皆が思っていた中、

年末に容体が急変し、

自宅から病院へ移り、

数日で亡くなった。


まず、

食べられなくなった。

そして、

排尿が困難になり、

毒素を排出できないことで

意識障害が出始め、

最後は、朦朧としたまま、

亡くなっていった。


手や足の先から、

温かさが消えていく。

私たち家族は

これ以上冷たくならないように

代わる代わる父の体をさすった。

それなのに

さすってもさすっても

父の体は

温度を失っていく。


まだいかないでまだいかないで


まだ温かさが残るところを

触れて探した。

心臓に近い体の部分は

まだ温かい。



それなのに

そこで

臨終が

告げられました。

まだ温かい亡骸は

その後ゆっくりゆっくり

冷たくなっていった。



これが、

父の、

生と死の間。



父はいったい何を聞いて

何を感じて

何を思っていたのだろう。

正月二日。

家族皆が集まれる時を選んで

亡くなっていったのだろう。

行かないで

と言った母の声を

どんな風に聞いていたかな。

私がさすった手や足で、

私の温かさを感じてくれたかな。



お父さん、

何年経っても

時々あなたが

恋しくなります。






※2020.1.2に書いたものを転載しました。


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