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二世古非スキー編

車窓から見える秋がたしかにあった。視界が開ける瞬間が読めなくて、何度も逃した。崖の断面ぎりぎりまで聳え立つ木が明るい。

銀山のホームでばいばいと手をふってくれる男の子の耳当てつきの黄色の帽子が遠くに流れていく。彼はこちらに向けてカメラを構えていた。小さな撮り鉄だ。

線路を鹿が悠然と横切る。電車の速度が緩まる。
🦌

言葉も話せないころ、少しだけ暮らしていた。もちろん憶えてなどいない。

二方が山だ。スキーでも滑られるとたいそういいのかもしれない。オフシーズンだからという理由でもなく、わたしは部屋で本を読んでいた。

ならぶ  とか あつまる から遠いところで過ごせることは私に必要で、貴重なことだった。


部屋にあと二人いたけれど、なに遊びもしなかった。話したいときに声を出して、少しだけお酒を飲んでいた。

読みきりたい本の文字を上滑りさせながら、小日向文世さんの出ているトーク番組を熱心に観た。ロールキャベツを食べたい。

🏔️🍁

みぞれを見ちゃった。秋がなくなってしまった。

🥔⛷️

このグラスに見惚れていたら、出しますかと声をかけてくれて、そのあたたかさは憶えていたと言いたい。

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