シャンプー中に聞く話-2023/05/24

2023/05/24(水)

・ここ3年くらい美容院ジプシーになっている。都内各所の美容院をフラ…フラ……としているので、毎月毎月「はじめまして」の人と一から会話をすることになる。
・カットやカラーなど肝心要の部分は指名した美容師さんがやってくれるけど、大体の美容院はシャンプーやドライヤーをアシスタントさんに任せていることが多い。このアシスタントさんと呼ばれる人々は大体20代前半で、美容とファッションに人生を全振りしていている人が非常に多く、普段会社や子どもの保育園では出会えないタイプ。こういう人たちと話せるのがとっても嬉しい。

・こないだ行った美容院は、星の王子様のような華奢な金髪の青年がシャンプーをしてくれた。「お姉さん、好きなことってありますか?」と急に聞かれ、「好きな…こと……」と私が長考を始めると、青年は私からは何も情報を得られないのを察してか、「僕はUFOキャッチャーが好きなんすよ、でも取りすぎちゃって、もうベッドの上ぬいぐるみだらけ。僕は横向きで身体を縮めないと寝られないんすよ」と自分のエピソードを語ってくれた。

どんだけ沢山とったんだ。そして、青年の中でぬいぐるみを床に置く…とか、誰かに譲る…とかいう選択肢はなく、あくまでも自分がとったぬいぐるみを家族のように大事に扱っている姿勢が良い。

華奢な金髪の青年が、毎日夜遅くまで一生懸命シャンプーやカットの練習をして、這う這うの体で自宅へ帰り深夜2時、ベッドの上に鎮座するぬいぐるみを掻き分け搔き分け、そっと身体を縮めて眠りに就く光景を想像した。

遠い異国の民のような存在だった青年が、こういう1エピソードで急に友達みたいな存在になっちゃうことがある。


・別のアシスタントさんと話した時、その方には歳が一回り近く離れたお姉さんが2人いるのだと教えてもらった。
私には兄弟がいないので、「歳が離れてると、可愛がってもらえて良いんじゃないですか?」と尋ねたところ、とんでもない……と世紀末のような声で詳細を語ってくれた。
自分がお姉ちゃんと遊びたい盛りの5~6歳の頃、お姉ちゃんは多感な高校生。思春期のお姉ちゃんにはひたすら鬱陶しがられて、接近すらできないように、お姉ちゃんの部屋の前はもちろん、お姉ちゃんの部屋へと続く階段に日本人形をひたすら並べられ、恐怖でリビング以外に行けない日々だった…とのこと。
すごい。物理だ。
たまに一軒家の庭先で見る「猫除けのペットボトル」の、もっと切実なものを垣間見た気がした。

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