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僕ヤバ感想:Karte.48 僕らはゆっくり歩いた

なんだろう。もう私の感想なんて必要ないんじゃないか。何を言っても野暮にしかならない。なんだろう。なんなんだこれは。



4話かけた渋谷デート編はそれはもうめちゃくちゃ甘々で、楽しく、だけど終始山田のペースだった。市川的にはマンガを借りて解散するだけの予定が、カフェでパンケーキを食べ、ショッピングに付き添うなんて、傍から見たらデート以外の何物でもない。

そんな市川がこの日の最後に山田に対してどういった思いを打ち明けるのか。ここ数週間はそればかりが気がかりで、でも杞憂だった。市川はちゃんと自分のことが分かっていて、山田と自分が全く違う存在だって分かっていて、それでも「俺」じゃなくて「僕」の自分を自ら開示して、そして山田は「僕」の市川に応えた。マンガのような恋を夢見るのではなく、現実の市川のこともちゃんと見ている事実。

これがもうちょっと、何も言葉が出てこない。すごい。「素敵」とか「愛おしい」とか「尊い」とか、何を口にしても取って付けた添え物にしかならないんじゃないか。

しかも恐ろしいことに、この後に「イルミネーション」「手繋ぎ」「今日のお別れ」が連続して続くんですよね。もうだんだんと2人の輪郭がぼやけて……光の粒に還元されていくような感覚に陥ってしまう。「こんな青春を送りたかった」とかそういう感じではない。この感情はきっと市川と山田の関係でしか生じなかったものだ。だからここまで『僕の心のヤバいやつ』に魂レベルで惹かれているんだろう。

話がそれてしまった。

でもまあ、今回の個人的ハイライトは「僕らはゆっくり ゆっくり歩いた」から始まる帰宅の途につくシーンで、祭りの後のような余韻も、「気持ちが伝わりそうで怖い」という市川の独白も、ほどけてしまった手に残る温かみも、別れの名残惜しさも、全てが揃っていて、私は完全にダメになってしまった。

フィジカルには距離の近い2人も、実際に心の距離はまだまだ離れていて、だけど今回のデート(と称することにする)で少しずつ歩み寄って、そしてまた会う約束もするし、LINEでやり取りだってするだろう。もう「思っていたのと違う」で終わるような関係ではないのだ。きっと私よりも当事者たちの方がずっと安心していることだし、その証拠に山田はろくに前を見ずに歩きだすし市川はそんな山田を見ていつものように「前見て歩け」と注意する(ここが3巻書き下ろしの電柱にぶつかる山田にかかっていると気づいたときは腹の底から変な声が出てしまった)。

極めつけに、振り返ったら電柱の影からひょっこり顔を出す山田ですよ。ちょっともう……本当に……ありえん……。今回、どこで切り取ってもまるで最終回みたいなエンドシーンになりそうなのに、本物の締めがヒロインではなく「好意を抱く女の子に頬を染めながら笑いかけようとしている中学生の男の子」ですよ。恋をしている。市川京太郎は恋をしている。

『僕の心のヤバいやつ』という作品はどこまでいっても市川京太郎・ミーツ・山田杏奈の物語であり、「かつて在り得たかもしれない青春」なんてものは存在しないんですよ。

私は僕ヤバに狂っているのではなく、僕ヤバに恋をしているんだと思う。それを証拠に、僕ヤバを読み終わった今が一番生きてるって心地がする。紛れもなく本当に。



それにしても更新スパンがたった2週なのはどう考えてもヤバい。情緒が徹底的に破壊されてしまう……。


(終わりです)


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