くるった・た・いよう
夜の中に体が溶けていく。自分がなんなのかわからなくなる。世界がとても遠いように思える。だけど気を抜くと世界は私の体の中にはいりこんでいるのだ。手のひらのしわのなか、細胞の奥の絡まった繊維の中。見られているわたしとみているわたしがこんがらがって、混然一体になって、溶けていく、まじりあっていく、わ、たしを見ているわ、たし、とみ、られているわ、たし。
とおいとおもっていた世界はすでにわたしの体の中から私を見上げている。あ、んなにも遠いと信じていたのに、ぞ、っとして、わたしは世界を取り去りたいと思う。からだの内側からわたしをみているせ、かいを。取り除いてしまいたいと思う。だけどわたしの手はわたしの体の内側に侵入ってはいけない。う、と歯噛みをするようなもどかしさ。内側にあるのに、こんなにもとおい。とおい。とおい。プロメテウスが盗んだ火のようにまぶしい光が、温かい光が、心臓の辺りから、体中に送り込まれていくのでわたし、は、あ、そこに火が。ちいさな太陽があって。うちがわをて、らすから、こんなにもからだがあたたかいのだとおもって。う、う、う、太陽、を。こんどこそ、てにいれなくては、と、おも、って、歯噛みを、す、るぅ―――――――――――――――――――――
う―――――――――――――――――――――――――――――――――
う――――――――――――――――――――――――――――
ウッ、
意志と反して弛緩するからだを、筋肉を、わ、たしは、わ、たしの、か、たちを維持し、つづけなければ、な、らないのに、太陽。たい、よ、う、が、わ、たしをう、らぎって、あんなにもぎらぎらと、不規則なリズムを、ノイズのように、わ、たしのい、しきにまぎれこませる、るるる、くるった、くるった、狂った!くるった太陽をわ、たしはわたしのからだに紛れこませておくことができない、から、鼓動を、拍動を、途切れがちなそれをわ、たしの意識から追い出さなければならない!のに!いつまで経ってもそいつはわたしのせかいを脅かしつづけるから、ああ!
手首、に浮いた血管、をしたから、なめるように、見つめている、わ、たしの目! の中に侵入したたくさんの細い血管! が相変わらずくるった、くるったノイズを! 紛れ込ませて わたしの
目の中にまで! ああ! ああ、吐き戻すように、言葉が、あ、ふれてくる、耳み、みみみの中にまで! ど、ど、ど、ど、ざわざわざわ、ごうごうごうごうごうごう どどど。あああ こめかみが 割れそうに くさったたいようの! ぎぎぎ、ぎ、あつい
歯を立てる 白い、にく
しぼう、の むこう、にすけた、みどりいろ
翡翠の
ような、血管、血の、色を
わ、たしは、しら、
しらなければ、
しらなければならない
わたしのあじわたしのおとわたしのうちがわを
ながれるるる すべての
すべてをしら、
なければ
あ、歯、に触れている肉
のやわらかさを感じているあたたかさが
歯の熱舌の熱皮膚の下に潜んでいる血管の熱
どれかわからない
感じている、わたし
と
ねつをはっしているわたし
がぶんりしたまま
永遠に出会えない気が
きがして、
ずっと?
ざり、肉を割いた、感触が
味、あじ、わ、たしのあじ
血、よりもあまい、たいえきの、にくの、し、ぼう
ちちちち、血が、あたたかい、なぜ
こんなにもあたたかいものを
とじこめて
ひとりじめしておくの?
うすぼんやりとした、色の褪せた、視界、
熱が、うしなわれてゆきます
ざ、ざ、ざざ
つめたい、
ひえていくような
みどりいろの、けしきに
あ、
いま、
うしなわれました
え
いえん
と、、、、、
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