呪印感染シナリオ:「ねえ」

■システム

本作は、「著:力造/N.G.P.、新紀元社」が権利を有する『テーブルトークRPG 呪印感染』の二次創作作品です。

■概要

ある夏、PC達は揃って出かけた道で、喉の渇きを覚え自動販売機に近づく。日常によくあるなんてことのないその行動が、怪異との遭遇になるとも知らず。

■登場NPC

このシナリオに、NPCは登場しません。

■参加者とPC

GM1名、PC最小2体~最大4体に対応しています。PC達が過去に数度〈十の災い〉を経験しており、知り合い同士であることを想定しています。
GMはPCの呪印に応じて、〈なにか〉の《正体》を重複させてください。

■場所表

このシナリオはP284「場所表【都市】」を使用します。

■〈何か〉の正体

恋人からのDVを苦に自殺した女性。
生前は本当に酷い扱いを受けていたが、死ぬその瞬間になっても愛情が捨てられなかった。
結果、恋人に似た面影を持つPCに取り憑き、ついてきてしまう。
通称「隙間女」。
〈隙間女〉は次の《正体》を持っている。
《近代の怪異》《恐怖が好物》

■事件フェイズ

 全員で出かけた帰り道。室内こそ冷房が効いて快適なものの、屋外は灼熱に煮えるある日だった。
 真夏の日差しが目を焼き、汗が流れた。
 ここで2d6をロールさせ、最低値を出したPCを指定する。
 ふと喉の渇きを覚え、目についた自動販売機の前に立った。財布なりポケットなりから小銭を取り出そうとすると、500円玉が手から滑り落ち、ころころと自動販売機の下に転がり込んでしまった。
 10円100円ならいざ知れず、500円は少々額面が大きい。
 溜息をつきながら地面に這いつくばった君は、自動販売機の下にあった「目」と、視線が、ばちりと、かみ合った。
 そのまま、長い影を引きずるようにして、ずりずりと、「目」は暗がりへと消えていった。
 ※500円を拾わない程度に金銭に余裕があるPCの場合、連コインする可能性がある。その場合はコインを自販機に飲ませ続け、自販機横の不具合連絡のシールに誘導し、塀と背面の隙間に隙間女を配置する。
 ※立ち去るなどする場合、自販機の下から隙間女の手と髪が伸びてきてPCの足を掴む。

​■解決フェイズ

解決フェイズ内のGMシーンはありません。

■キーワード

A-3:隙間の誰か
C-3:自動販売機
C-5:自動販売機 2(追加キーワード)
E-2:神社(追加キーワード)
F-6:真相①
F-3:真相②

■キーワードの情報

A-3情報:隙間の誰か
あの隙間の手は、目は、果たして本当にそこにあったのだろうか?
オカルトサイトの記事によると、「隙間女」という怪異が存在するらしい。その名の通り、壁と家具の間などに潜み、家主にとりつき衰弱させて命を奪うのだという。
C-3情報:自動販売機
一見して普通の自動販売機。
自販機のすぐ裏、塀の向こうに神社がある。オフィス街の真ん中、珍しい立地だ。追加のキーワード「神社」「自動販売機 その2」が公開される。
C-5情報:自動販売機 2
「MOONTRY」と書かれている。このキーワードが解決されている場合、真相の命運が規定数マイナスされる。(2人で18、3人で15、4人で10)
どうやらこのあたりのオフィスビルは自殺の名所となっているようだ。自動販売機からほど近いビルで起きた飛び降り自殺の記事が目についた。飛び降りたのは20代の女性で、恋人のDVを苦にしてのことだったらしい。報道に使われている写真のシルエットが、あの影によく似ている。
E-2情報:神社
オフィス街の真ん中にある神社。こじんまりしているが、空気が清らかで気持ちいい。神職の男性に話を聞くことが出来た。この神社の付近には霊道、霊の通り道が複数通っており、あの自動販売機もその一角なのだという。
自動販売機前に立ったときに、タイミング悪く霊が通り、そのままついてきてしまったのではないかとの話だった。追加の真相「除霊」が公開される。
F-6情報:真相①
何としてでもこの「隙間の目」を引き剥がさなければならない。塩、酒、水、榊!さあこれでどうだ!
【特殊イベント】★「決戦」に判定可能
F-3情報:真相②
全ての事情と情報を明かした上で、神職男性に再度除霊を依頼した。多少不安そうではあるが引き受けてくれた。
本殿に通され、お祓いが始まる。
…何分か経った頃、不意に
「ねえ」
と、女の声が、(小銭を落としたPC)の耳元に囁いた。
【特殊イベント】★「儀式行使」に判定可能

■結末フェイズ

★「決戦」をクリアした場合
鼓膜を破らんばかりの絶叫が響き渡る。それは長く長く尾を引き、やがて、消えた。
★「儀式行使」をクリアした場合
気付くと、祭壇の前に誰かが立っている。明るい色の髪に白いレースのブラウス、デニム地のふっくらと丸いショートパンツ。すらりと伸びた脚は健康的だが、しかし足首から先はぼやけている。どこか小型犬を思わせる、黒目の大きな、愛らしい顔の女だった。
「ごめんなさい」
「あなた、私の付き合ってた人に似てたの」
「…あんなひどいことされて、自殺までしたのに。まだ、忘れらんなかった」
「ごめんなさい。もう、帰るね」
ひらひら、と華奢な手が振られ、瞬きを終えることには、もう女の姿はなかった。
「…終わりました、おつかれさまでした」
今起きたことを知ってか、知らずか。額に汗を浮かべた神職男性が、全員に告げた。

その後、GMは行動順に従って、PCのエンディングを1体ずつ演出させてください。
命運が-1以下、あるいは★「イベント」をクリアできていないPC全員がいた場合は、P273終焉表に従って処理を行ってください。