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『アリスのままで 』

※ネタバレあるので、知らずに観たい人は読まないでくださいね (´ー`)

言葉のプロといってもいい、言語学者のアリス。
夫は愛情深く、長女も幸せな結婚をし、
長男も優秀な医学院生。
女優志望の次女だけちょっと心配だけど
幸福の極みにあったといってもいいアリスの日々に
ある日、影が差す。

物忘れが頻繁になり、やがてアルツハイマー病だとわかる。

切れ者だった言語学者がみるみるうちに
むざんな自分と向き合わねばならなくなっていく。

ジュリアン・ムーアが好きで観たけれど、
好きじゃない方が見ても、そこそこ感動できるかと。

ジュリアンムーアが自分の家で、トイレがわからずに
おしっこを漏らしてしまうシーンとか切ないですし、
仕事に対する誇りが破壊されていく感じやら、
支える家族との軋轢やら。

自分ならこんな風に生きなおせるか、ちょっと自信ない。
アリスがいう“知性によって自己規定してきた自分の根幹を
破壊される恐怖”ってのが、自分に置きなおすと本当に怖い。
「癌のほうがましだった。それなら恥ずかしい思いをしなくて済む。」
って言葉もがん患者に向かってはとても言えないけど、
そう言いたくなるほどの葛藤と恐怖の内圧は想像を絶する。

一番の支えになっていくのが、不安の種だった
女優志望の次女って展開もなかなかよいです。

そして、ラストのスピーチが白眉。
元言語学者として、アルツハイマー病を背負いながら、
闘う姿が胸をうちます。

All my life I’ve accumulated memories - they’ve become, in a way, my most precious possessions.
これまでの人生
私は、大切な思い出たちをつくりあげてきたの
それらは、私だけしか持ってない
価値もつけられないほど大切なものになっている

The night I first met my husband, the first time I held my textbook in my hands. Having children, making friends, traveling the world. Everything I accumulated in life, everything I’ve worked so hard for - now all that is being ripped away. As you can imagine, or as you know, this is hell.
初めて夫と過ごした夜や
自分で書いた参考書を手にした瞬間
子供が出来たとき
友達が出来たとき
世界を旅したとき
すべてが人生の中で私が積み上げてきたもので
すべて私が一生懸命に作り上げてきたものなの
今ではその全てが私の記憶から剥ぎ取られてゆく
みなさんが想像するように
みなさんが知っての通り
こんなの地獄でしかないわ。

-中略-

But for the time being, I’m still alive. I know I’m alive. I still have people I love dearly. I still have things I want to do with my life. I rail against myself for not being able to remember things - but I still have small moments in the day of pure happiness and joy..
だけど、今この瞬間、わたしはまだ生きている
私が生きているということを実感している
私にはまだ愛する人がいるし
私の人生でやりたいことだってある
覚えていられなくなることに逆らおうとはするけど
心から幸せと喜びを味わえる日々の
小さな瞬間を感じているの


So, 'live in the moment' I tell myself. It's really all I can do, live in the moment. And not beat myself up too much for mastering the art of losing. One thing I will try to hold onto though is the memory of speaking here today. It will go, I know it will.
だから、私に強く語りかけるの
一瞬を大切に生きるのよって
それこそが私にできることなの
そして、記憶を失うということに慣れて
自分を見失わないようにって
1つ心に刻んでおこうと思うことがあるの
それは今日ここで話をしたという記憶
多分、それも忘れてしまうと思う
そんなことはわかっているの


It may be gone by tomorrow. But it means so much to be talking here, like my old ambitious self who was so fascinated by communication.
明日にはなくなっているかもしれない
だけどここで話したということはすごく意味を持つことなの
まるで、言語学に心から惹きつけられた
野心に溢れたかつての私のように

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。