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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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#詩あるいは死のようなもの

【断片文学】誰も知らない首の日

ただの生首より 耳を削ぎ落とした豚の生首の方が いっそ丸々として 驚くほど惨めだった この世の中に あんなに悲しいボールはない 裸足の少年たちに 雨と泥の中 西瓜のように激しく蹴られ 転げて回る豚の首 白く突き出た頚椎の鳴き声が 冷たく濡れそぼった足の甲に刺さる 少年がぎゃっと叫び 途端に蹲って どしゃぶりの石になる みんな黙って 立ち尽くし 知らない顔になった 手には手の子供がおり 足には足の母親がいる 首には首の妹がいて 血と泥と一緒に掻き抱かれ 寂れた一本道を

【掌編】君の赤いマフラー

――その日 一人のホームレスを 純粋に助けた 君 君だけは 救われると思ってた 神様が ちゃんと見てるはずだから なのに―― 富裕層だったから? 髪が金色で美しかったから? 正義なんて不純なものを愛してたから? 見つかって 集団でホームレスに輪姦され ――翌朝 交差点の真ん中で 全裸に剥かれたまま 冷たくなってた 幻みたいなマフラー巻いて 神様 見えますか 見えてますよね 首だけ―― 首だけが赤くて寒そうです ホームレス達が商店街で叫んでる 一枚 また一枚 シャ

【断片小説】微少女

機械なのに人と同じく 言霊を扱えるようになった 人形少女―― 生きていることが 奇跡みたいな 微少女だった 拮抗した生死のうち 痛みだけを触手に握らせ 井戸の底で深淵の綱渡りを続け 僅かに生の表面張力で流れ落ちずに しがみついていられただけの 性奴隷人形 二人で 魂を共有するように 嘔吐いた 〈了〉 ※↓インスパイア先、ゾクゾクします

【詩】 転がっていく花びらみたい 君の骨 月の灰と一緒に風になり 夜色を纏う桜を死に染めていく 膝から崩れ落ち 黝い幹で額をかち割れば 血吹雪の中で笑ってる 君に会えるだろう 何度でも 何度でも 春は僕の血で甦る

本日死神と手を切りました なので僕は二度と死にません むしろ死ねません 表面的には人間として衰え ひとたび滅びはしますが 本質的には不老不死で永遠に属します いのちは壊れないのです 壊せないのです 僕にも 誰にも ひとえにそれがわかるための 生涯でございました あなかしこ

【詩】春が弾けない

君の死体 ピアノみたいに弾いてみたい 棺の上で自慰するように その小さな胸の黒鍵も 下の茂みの白鍵も 指を開いて蜜まで届く 「いま何が弾けるの?」 何でもさ 雨とか灰とか神様とか 弾けないのは春くらい 「私の部屋のドアノブを舐めた時 初めて勃起した曲は?」 ああ 君のあそこは 確かに業火の味がした 無音の海 桜の煙が染みて逝く 春が弾けない 弾けそうにない 《了》

【詩】ちゃんと愚かで忌まわしい

愚かさまで ちゃんと愛せちゃったんじゃない 苦しいのは 痛いうちが華 痛くないなら恋でもない 雨に濡れた 自転車のスポークを 目に刺しても 見える血になるの 宇宙の背骨という背骨を抜いて 骨抜きになるまで 抱かれ果ててさ 翌朝には 干からびた子猫の死体から 可愛いピンクの舌がのぞく

姿無き殺人者 その名は、孤独 孤独は人を殺す 音もなく忍びより じわじわと苦しめ 放っておくだけで 確実に息の根を止めに来る 普段は影に棲みつき 昼でも夜でも襲ってくる 独り身老齢病身 連中の大好物だ いつ誰がターゲットになっても不思議はない 人は皆死神を飼って生きている

【短詩】 人は全てを失って 初めて自分の輪郭を知る #詩人

【詩】星も見えない夜に

濃く深い闇が降りている 質量のある闇だ 手を突き出せば 粘りけのある弾力まで感じる もやは闇の肉だ 肉襞だ 生きるということは この闇の襞を喰らい 突き破りながら 前に進むということだ 闇の臭いを嗅ぎ 噛みちぎり 闇の呼吸で肺腑をどす黒く染めながら 喘ぎ 呻き のたうち回ってもがくことだ 星々が蠢く音だけを道標に

今朝から自分のくちびるが無い、 この世にない #詩 #ホラー #不条理 #不合理 #ナンセンス #シュール #詩あるいは死のようなもの

今は無理でも 明日なら絶対に死ねる という覚悟が出来た君なら 確実に明日も生きれるよ そして明後日も 死ぬ気で生きれるなら 君は何だって出来る #詩 #詩あるいは死のようなもの #暴力的ポジティブ

自分の賞味期限を覚知した瞬間老いた #自由律絶句 #自由律俳句 #宇宙律俳句 #因果律俳句 #一行詩 #進撃の詩人 #詩人 #詩 #漢詩の絶句ではなく二の句が継げぬ方の #詩あるいは死のようなもの