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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2017年7月の記事一覧

【うたがわきしみの短歌集『きしみ卿のタンタカタン』より】 ・きしみ度0%の場合 星々が夜空に散ってまたたいて 暗き道ゆく我をも照らし ・50%の場合 ロバの耳のぞきこんだら王がいた 複合的に鼻を噛まれた ・100%の場合 宇宙宇宙 宇宙宇宙尻宇宙宇宙 宇宙宇宙尻宇宙宇宙宇宙

大空ばかりに憧れて 水たまりにも空があるってこと忘れてる そんな人を好きになれない僕は 現役で青い

裏しかないという人間は、もうおもてだ。

ぼんのくぼ 缶で冷やして 夏の息

君と一緒なら、うつ伏せで死ねる

あなたという人は 大切な 大切な 風でした

詩人は風をつかまえて移動するんだよ

『ひとさらい』

ひとさらいにあいました ひとさらいに 風のように光る言葉たち 闇のように危険な言葉たち 蜜のように濡れた言葉たち 求愛ダンスのように情熱的に踊る言葉たち ああ、あれはいけない、いけません すでに手遅れ われわれはもうさらわれている あの言葉たちに いいえ、いま吹いているわれわれこそが ささやく風の ひとさらいなのです

風を見て、待って、つかまえて、移動する。 詩人とタンポポは紙一重なところがあるよ。 そう言って、笑ってた君はもういない。 タンポポみたいに風にさらわれて ずっと遠くへ行ってしまった。 ずっと、ずっと遠くへ……

マキはいつもノーパンで登校する。知っているのは僕だけだ。彼女にはずっと振り回されてきた。それは益々エスカレートし、授業中後ろからいきなり耳打ちされたのだ。驚いて振り返ると彼女は目を細め、ゆっくりとスカートの裾を捲ってみせた。慌てて前を向く僕の背に容赦なくシャーペンが突き刺さった。

『雪』

眼を穿つ 白き声 流るる水に溶け そぞろ歩く盲の巨児となる "群れなす孤独"という名の嗅覚 大地の乳房は がむしゃらに齧りとられ 天球は乳白色の汚泥と化した 分裂する狂気細胞 アルビノの双子の蝶 絶望を信じた神々の息子たち 彼らは冬の壁に額を打ち付け みずから砕け散り 凍える夢となり果てた 舞い落ちる白銀の鱗粉 さざめく命の肖像 ――雪 ※詠み 穿つ(うがつ) 盲(めしい) 巨児(きょじ) 乳房(ちぶさ) 齧り(かじり) 天球(てんきゅう or そら) 汚泥(おで

『甘え裾』(あまえずそ)~突発的発作的うたがわきしみ句集~ 追いすがる 透かしむらさき 甘え裾 背に隠れ くわえ紫紺の 甘え裾 あと追いの 揺れて紅藤 甘え裾 母追いし 濡れるむらさき 甘え裾 母の背で しやぶるあやめの 甘え裾 甘えずそ たぐるレースの こむらさき

『ハムと忍者とはむにゃむりん』

今日は はむにゃむりんについて 知っていることを全部話そう はむにゃむりんは むかし三日月を 石弓の矢じりにしていたよ はむにゃむりんは 誰にもなりたくなかったから わだば ゴッドになるゆうてドロン 先を行く人 お達者で 胡桃を割って ホーホケキョウ はむはむニンニンはむにゃむりん もしも タンスの裏に50円玉が落ちてたら それはきっと はむにゃむりんのしわざ もしも 知らない間に洗濯物がたたまれていたら それもきっと はむにゃむりんのしわざ はむはむニンニンはむ

『青空は毎日死んでる』

夕焼けは空の赤潮。 お空を食べるプランクトンの増殖。 赤い死。 空は毎日、一度死ぬのだ。 夜の闇に還り、 また青く輝ける日まで 深い深い眠りにつく。 シー…… まだ夜中だよ 空を起こさないで。 生まれたての瑞々しい青をまとわせて。 しっかり死ぬことは しっかり生きることだから。 りくちさんが誠実な精度で立体化してくれました。朗読も合わせてお楽しみくださいませ(´ー`)