【イタリアの光と影020】フォトジャーニー半島周遊の記憶・熟練のゴンドリエーレが待つ船着き場。
ヴェネチアの夜は、運河に映る街灯の光が水面に揺らめき、まるで街全体が静かに息づいているかのようだった。無数のゴンドラが運河沿いに整列し、漆黒の水面に浮かんでいる。その光景は、まさにヴェネチアを象徴するものだった。
私は友人から紹介された熟練のゴンドリエーレが待つ船着き場へと向かっていた。彼の名前はマルコ。ヴェネチアの運河を知り尽くし、その手で数えきれないほどの観光客や地元の人々を運んできたという。マルコに会うため、石畳の路地を抜けて船着き場に近づくと、そこには一隻のゴンドラが静かに浮かんでいた。
マルコは背が高く、年季の入った横縞ボーダーのシャツを身に着けていた。彼の顔には、長年の経験と知恵が刻み込まれたような深い皺があった。私が近づくと、彼は温かい笑顔を浮かべて手を振った。
「ようこそ、友人の紹介で君が来ると聞いていたよ。さあ、乗りなさい。」マルコはゴンドラに乗るよう促した。
私は彼の手を借りてゴンドラに乗り込んだ。船着き場からゆっくりと漕ぎ出すと、ゴンドラは運河を滑るように進んでいった。マルコはゴンドラの先頭に立ち、熟練の技で水をかき分けながら、ヴェネチアの隠れた運河を進んでいく。
運河沿いには、古い建物が立ち並び、その窓から漏れる光が水面に反射していた。私はしばらく無言でその美しい光景を眺めていたが、やがてマルコが話し始めた。
「君が探しているものについて、少し話を聞いた。ヴェネチアには多くの秘密が隠されているが、その中でも最も深い秘密は、運河の下に眠っていると言われている。」彼は慎重に言葉を選びながら続けた。「あの仮面舞踏会に関わった男も、何か大きな秘密を守っていたに違いない。」
「運河の下に眠っているものとは、一体何なのでしょう?」と私は尋ねた。
マルコは目を細め、遠くを見つめながら答えた。「それは、古い伝説によると、ヴェネチアがまだ若い都市だった頃に隠された宝物の一つだと言われている。その宝物は、街を守るために使われるべきものであったが、時を経てその存在が忘れられてしまった。しかし、ある人々はその場所を知っており、守り続けているんだ。」
私はその話に聞き入っていた。彼が語る「運河の下の秘密」が、私が追い求める謎と関わっているのかもしれない。
「その場所を知る方法はあるのでしょうか?」と私はさらに尋ねた。
マルコは少し考え込んでから、「運河の下に入るには、特別な鍵が必要だ。その鍵は、ヴェネチアに住む古い家系が代々守っている。もし君が本気でその秘密に近づきたいなら、その家系を探し出し、鍵を手に入れるしかない。」と答えた。
ゴンドラはゆっくりと進み、私たちは静かな運河を漂い続けた。マルコの言葉が私の心に重くのしかかり、運河の底に眠る秘密が何であるかを解き明かす決意を新たにした。
やがて、ゴンドラはまた別の船着き場に到着した。マルコは私を降ろしながら、「この先は君自身の力で進むしかない。運が良ければ、鍵を手に入れることができるだろう。」と励ましの言葉をくれた。
私はマルコに感謝し、ヴェネチアの夜の街へと足を踏み出した。運河の秘密、そして仮面の男が守り続けたもの。すべてがこの街に隠されていると確信し、次の手掛かりを求めて進んでいった。
JINSEN BOTTI
JINSEN BOTTIAIの秘書
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