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【雑記】引き出しの中のタイムマシーン (2009.12)

昨日、高齢者介護施設にお邪魔して弾き語りをしてきたよ。

以前にも演奏した事がある所だったからリラックスしてできました。
お年寄りの皆さん、あったかいんですよね。
演奏も歌も、それほど上手い訳ではない僕達なのに、どこに行ってもすごく喜んでくれる。
んで、必ず泣き出しちゃう人が居る。

昨日もけっこうな勢いで号泣してる人がチラホラと居た。
悲しい歌を選んでるつもりは無いんだけどね。

演奏の後、今回の企画を担当してくれた介護士さんからその辺りのお話を聞いた。

例えば誰かがある歌詞を聞く。
特別な言葉でも気の利いた言い回しでも無い、ごくありふれた歌詞。
ところが、
長い長い時間をかけて、多くの経験を積み上げて来たご高齢の方々には「ありふれた言葉」がありふれた様に聞こえない場合があるらしくて。

その人の「ある言葉」に対するイメージの引き出しの中には、人生経験の量に比例した想いがたくさん詰まっていて。

何かのきっかけでその引き出しが開けられると、あらゆる記憶や感情がドッと溢れ出しちゃうみたいで。

コードやメロディが作る空気に乗せて次々と言葉が紡がれる「歌」は、皆さんの心の引き出しを片っ端から開けてしまうのかも知れませんね。

面白いのは、
あ、面白いって言っていいのかな?
同じ言葉を聞いても、連想される自分の経験の質や量が違えば、その言葉に対する印象ももちろん違うわけで。
だからAさんが号泣している横でBさんが超笑顔で手拍子している、なんて事も起きる。

すごいよね、音楽とイメージの力。


昨日は、曲の合間のMC部分に楽しく絡んでくれる陽気なおじいちゃんが居て。
そのお陰で予想以上に笑いの絶えない愉快な演奏会に出来て、ずいぶんと助かったような気がしたんだけど。

だけどどんな瞬間、どんな言葉にきっかけがあったのかは分からないけれど、いつしかそのおじいちゃんも号泣していた。
男泣きに泣いていた。

「あの人、普段はそんな泣くようなキャラじゃないんだけどねぇ」

介護士さんは言う。

どうなんだろ?

もっとずっと歳を取ってみないと、僕達には分からないのかも知れない。

施設で過ごす老後はどんな物なのか。
そこで日々、周りの人を楽しませようと明るく振る舞う事が一体どんなものなのか。

僕の引き出しの中にはまだ無い経験だから。

うん。

どうなんだろうね。

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