出来損ないペンギンエイビーの不幸な一生 第一話「最初にして最大の不幸」

 厚い雨雲に覆われたバートン州ミーシャの小さな町の病院で、新たな命が誕生しようとしていた。

 貧富の差の小さな、およそ幸福と呼ばれる物の全て揃った郊外の小さなミーシャの町。単純な区画整備で作られた格子状の道路と簡素かつカラフルな家が立ち並ぶ住宅街。住人達がニコやかに挨拶を交わし、助け合いながら暮らしているこの町は、町外の人間からこう呼ばれている。

「作られた幸せの町」と。

その日、世界で二番目に不幸な出来事に見舞われるサリー・マクルーシャは、自分に降りかかる恐ろしい事件のことなど知る由もなく、自らの生い立ちを回想しながら、分娩室で人生最大の喜びを心待ちにしていた。

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