短距離馬は適性把握が大事~中京記念によせて
夏競馬、皆様いかがお過ごしでしょうか。
個人的に「夏が来た!」と思う風物詩は、フジテレビの27時間テレビなのですが、今週末はその27時間テレビがあるので、ちょっとウキウキしております。
さて、そんな27時間テレビもある今週の重賞は、中京記念。
短距離馬は特徴をつかめると取捨が楽
3年前は阪神、
昨年、一昨年は、
・小倉なのに中京
・マイルシリーズなのに1,800m
と「情報量の多いレース」ということで話題になっていましたが、
今年から元に戻ります。
で、メンツを見てみると、まぁ色んな適性の、バラエティ豊かな面々が揃ったなという印象。一見すると、難しく思うかもしれません。
が、1,400~1,600mの馬って適性・特徴さえわかってしまえば結構絞りやすいんです。
例えば、安田記念。
以前、ヴィクトリアマイルの記事でも出したこの表を覚えていますでしょうか。
持続力が求められながらも、上がりも求められるレース、それが安田記念です。
で、今年のメンツを見た時に恐らく逃げるのはウインカーネリアン、ワンチャンでメイケイエール。
2日前に大雨が降りましたが、日曜日当日には完全に超高速馬場に戻っていました。なので、基本は上がりが必要なレース。
ただ、ウインカーネリアンは東京新聞杯で中盤緩めずにゴリゴリに逃げていたので、32秒~33秒前半の上がりが必要なレースにはならないだろうということで、ソダシ◎に。
ただし、競馬に絶対はありません。もし、少しでも緩んだら、上がりが求められたら…ソダシは確実に飛びます。
ということで、こんな馬券も買っていました。
10と12は、万が一位置とれた場合に、もしかしたらで入れましたが、
実質、4、7、14、18の4頭に絞った馬券。
これは何かというと、持続力があり、かつ上がりも出せる馬、という基準で選んだ4頭です。で、結局ソダシが飛んで、この4頭で1、2、3、4フィニッシュという結果に。
我ながらよくこんな上手く当たったなと思いましたが、レースの質、馬場、コース形態、そして馬のタイプをちゃんと掴めればこのくらい絞って当てられたって不思議はないのかもなと思った出来事でした。
とまぁ、こんな感じで、レース質、そして馬の特徴(タイプ)さえつかめれば、GⅠでもかなりギュッと馬を絞り込むことが出来るのです。
短距離馬のタイプを決める3つのポイント
短距離馬のタイプを決める要素は大きく3つあります。
§1:追走力(ペース耐性)
これは短距離馬には当然求められるスキルですね。基礎スピードとも言います。
①最初の600mのペースに対して、どのくらい耐えられるか
②中盤(前後600mの間の400m)への対応力
※中盤が緩むか緩まないかで求められる能力が変化します
§2:上がり
スパートする際に求められるスキルです。
短距離の場合、条件クラスではそこまで速い上がりが求められない(34~35秒台)ケースも多いですが、GⅠともなれば、高い追走力に加えて、33秒台、32秒台の速い上がりが使える能力が求められます。
ちなみに、上がりが使えないのには3つの理由が考えられます。
1つは、距離が長い(マイルより1,400寄り)、
2つ目に、追走で脚を削がれてしまっている、
そして3つ目に、そもそも上がりが使えない。
§3:位置取り(テン1F/3Fの速さ)
脚質です。えてして、逃げ先行馬は速い上がりが使えないので、前に行くことが求められますし、速い上がりが使える馬は差し追込にまわります。
ですが、前に行かないといけないのに、OPクラス相手だとテンが遅くてお話にならないケース、或いはマイルで上がり勝負に強い馬が1,400mに距離短縮した途端位置を悪くし、追いかけるだけで手一杯なんてケースも。
と、以上3つの要素から、短距離馬のタイプが大体決まってきます。
短距離における数値の意味
短距離馬のタイプについて語る際、「テン3Fが35秒で~」という具合に数字がドンドン出てきます。
が、ラップで普段予想していない方にはチンプンカンプンかと思います(そもそもラップで予想していない人はここ見ていない説も)。
というわけで、ここで簡単に各数値について、私が考えている大体の基準を書いてみたいと思います。参考までに。。
§1:前半3Fラップと位置取りの関係性
ここで話す前半3Fのラップは、レースラップではなく個別ラップです。
どこにそんなの表示されてんのよと思う方もいるかもしれませんが、大体は各専門紙の成績を見ると載っています。
データベースで見たいなら、例えば競馬ブックWebに入るなどすれば見られます。かなり重要な情報なので、本気で競馬予想したい方は、情報のためにお金を出し惜しみしない方が良いです。
で、前半3Fのラップと位置取りについて。
もちろん位置取りはペースによっても変わってくるのですが、前半3Fをおおよそ以下のラップで走っていると、位置取りは大体記載の通りになってきます。
例えば、ダノンスコーピオンは安田記念で前半3Fを34.7秒で走っていますが、上の表と見比べると先行ですよね。(実際、先頭から5、6番手の位置)平均~ハイペースのレースであれば、大体は合致します。
一方、スローペースだと、この基準から右にズレる、つまり36秒台でも先行していた、となればそのレースはかなりのスローだとも言えますし、重賞では何の参考にもなりません。
§2:上がり3Fの判定
競馬ファンならおなじみの「上がり3F」ですが、短距離は中距離よりも全体的にスピード能力が問われるため、本来は「上がりが速いこと」はそこまで価値を持っていませんでした。
しかし、近年は馬場の高速化に伴い、どれだけペースが速くなったり、中盤が緩まなくなっても、時期によってはGⅠレベルの馬なら平気で速い上がりが出せるようになってきました。
以下はそんな上がり3Fについての考え方になります。
なお、これはヴィクトリアマイルの記事でも書きましたが、馬は、前半を速く走るほど上がりは遅くなり、ゆっくり走るほど速い上がりが出せます。
ただし、人間が100mを8秒台で走ることが難しいように、馬も上がりの脚には限界があります。どんなに前半を遅く走っても、32秒台で走れる馬もいれば、34秒しか使えない馬もいるのです。
逆に前半速く走っても、上がり32秒~33秒台が使える馬だっています(大体そういうのはGⅠレベルです)。
これまでに、数百頭程の前半3Fと上がり3Fの関係を見てきましたが、おおよそ前半3Fの走破タイムが36秒より遅いと、上がりの脚はそれ以上速くなりづらい(タイムの伸びが落ちる)傾向にあります。
なので、前半3Fを36秒より遅く走っている馬は、その時に出している上がり3Fが大体その馬の限界に近いと思って頂ければ、実態とそこまでかけ離れてはいないと思います。
§3:中盤の重要性
もう1つ、私が馬の能力を推し量る上で、重視しているポイントがあります。それは、中盤の時計です。
このnoteではよく「前半3Fが~」と言ってはいますが、中盤がどうなるかでも全体的に求められる能力は変わってきます。
なお、中盤とは、
1,600mでは5F~4F区間、1,400mでは4F区間を指します。
例えば、、、
この場合、中盤は12.0-12.2となっていますが、12秒台までラップが落ちると、中盤が緩んだと判定します。これは1,400mでも同じです。
この場合、中盤は11.4-11.3と全く中盤が緩んでいません。このように、12秒台までラップが落ちることなく、11秒台が持続し最後までスピードが求められるレースは、中盤が緩んでいないと判定します。
これらを整理すると、以下のようになります。
このように、前半3Fと中盤如何で、決着の仕方が変化するというのが分かるかと思います。
また、ここに馬場差が加わると、もう少し複雑になります。
例えば、東京の高速馬場で、中盤が11秒台後半(11.7~11.9秒あたり)だった場合、時計そのものは「緩まない」と判定するのですが、実態は馬場が軽いため、緩んだのと変わらない状況になってしまうというわけです。
というわけで、以上が短距離における数値の持つ意味合いです。
是非参考にしてみてください。
ここからは、中京記念出走馬のタイプについて書いていきたいと思います。
中京記念出走馬で見る短距離馬のタイプ
※あくまでこれまでの戦績から推測される能力を、分かりやすくいくつかのタイプに分けただけなので、本来は馬ごとに細かく見ていくことを推奨します。
①1,400m持続力型
好走時のレース平均テン3Fが34.9~35.1秒と比較的速い流れを好み、個別テン3F見れば分かる通り、自身も前手で走ります。
そして、上がりが34.9~35.0秒と遅い。こういった馬は1,400mで走るタイプです。
実際、ホウオウアマゾンもサブライムアンセムも1,400m重賞で実績がありますよね。
特に阪神の1,400m内回りコースは前半が速く中盤も緩まない持続力レースになり、速い上がりは求められないので、こういったタイプの馬にとっては最も相性の良いコースでもあります。
一方で、速い上がりが使えないので、重たい馬場であればまだ対応は出来ますが、上がりが求められるマイル戦では好走確率がかなり低くなります。
前半スローかつ中盤が緩むようなマイル戦、東京のマイル戦はまず適性外。阪神や中京だと、馬場とペースによってはあり得る、という具合です。
②1,400m上がり型
好走時のレース平均テン3Fが「1,400m持続型」と近いかさらに速い流れを好み、個別テン3F見れば分かる通り、レースのテン3Fよりも1秒近く遅く走ることで速い上がりを繰り出して差す競馬を得意としています。
上がり3Fのタイム自体は1,400mでは速い方ですが、極端に速い上がりは使えないのでただの上がり勝負は苦手です。
こういった馬は中京1,400m或いは阪神1,400mのどギツイペース(前半33秒台)や厳しいペースのマイルで、差し追込んでくるタイプです。
実は、これに近いことを少し前につぶやきました。
なので、ストーンリッジやサトノラムセスも同じようなタイプです。
なお、カイザーミノルはメイショウシンタケやストーンリッジ等よりはもう少し速い上がりが使えるので、東京1,400mでもまあ対応は可能(実際、荊尾杯SCで3着経験あり)です。この辺りは馬によって多少差異があるところ。
米子Sは高速馬場とは言え、前半3Fが33.7秒で中盤も緩まない、まさに1,400mのこういったタイプの馬が台頭してくるのにピッタリのレース展開でした。
中京1,600mはペースが速ければ可能性はありますが、平均ないしは遅いペースで中盤緩むとなればかなり厳しいでしょう。
③1,600m高追走持続力型
好走時のレース平均テン3Fが35.0秒、①②の1,400m適性組と近しく、速い流れを好みます。先行或いは中団で脚を溜めるタイプですが、平均上がりが34.0秒とそこまで速くありません。
つまり、前半速くて、中盤も緩まない、これによって上がりが多少掛かる(33秒後半~34秒前半)というレースで好走しやすい傾向にあります。
マイルに適性はあるが、上がり勝負は苦手という馬は、このタイプか次に挙げるタイプに分類されることが多いですね。
ダノンスコーピオンの場合は、この上がりの遅さが致命的。
マイルCS以降、
マイルCS⇒上がり3Fの1箇所が10秒台に突入する程度に上がり勝負
京王杯SC⇒勝ち馬が32秒台使っているくらい上がり勝負
安田記念⇒持続力と上がりの速さが求められた
と、まぁ適性と合っていないレースばかりだったので凡走が続いているだけで、本馬が決して衰えたわけではありません。
ちなみに、タイプという意味ではソウルラッシュもこのタイプです。ダノンスコーピオンとの違いは脚質のみ。
なお、数値だけだとメイショウシンタケに近いですが、その違いは脚質。レースの平均が少し遅い分、この馬は前手にいます。また、33秒台の脚を過去に何度も使っているので、脚力にも少し差があると思われます。
④1,600m低追走持続力型
好走時のレース平均テン3F/個別テン3Fがそこまで速くない割に、上がりも遅い。(※ベジャールは芝マイル戦好走が1回のみのため割愛)
これ、どんな条件か分かります??
前半そこまで速くないのに上がりが掛かっている…ということは、稍重や重だったということはもちろんですが、他にも冬場であまり高速にならないとか、ちょっとした雨で高速化していないとか、そういったことが好走条件で、上がり勝負は苦手なわけです。
また、アナゴサン、ベジャール、ディヴィーナ、セルバーグの4頭に共通することとして、もう1つあるのが、前半厳しく中盤も緩まなかったレースでは好走できていません。そもそも追走力がそこまで高くはないのです。
こういったことを踏まえ、名称を「低追走持続力」としています。
以上を踏まえると、好走するための条件は以下の2つが揃った時、となります。
①前半が速くない、或いは中盤が緩む
②上がりがそこまで速くなくても良い環境
中京は馬場次第。①と②が両立することもありますが、先週のような高速馬場だと、①が成立しても②がダメな場合も。
ちなみに…何故ディヴィーナは激走したのか?
ちなみに、何故ディヴィーナが前走4着に好走したか、ここで自分なりの仮説を書いておきたいと思います。
ポイントは4つ。
1つ目はまずラップです。
今年のヴィクトリアマイルと去年との大きな違いはこのラップで、
今年は前半が去年より速いのですが、中盤が去年より1秒も緩んでいます。
そうです、上記で挙げた①が成立するのです。この中盤の緩みは、先で述べた通り結果に大きな影響を与えます。
で、次のポイントは、位置を上げたタイミング。
スタートしてからだいぶしばらくは、後方にいたのですが、600m通過地点のちょっと前、つまりラップが最も緩んだ12.3秒のところで位置を上げているんですね。
GⅠマイルでこれだけ緩めば、多少位置を上げたとて負担はそこまでではありません。これによって前を射程圏に捉えることが出来ました。
詳細はレース映像を見てみてください。右下の時速表記も参考になるはずです。
3つ目に相手関係。そもそもヴィクトリアマイルで上がりが出せる馬はかなり少ない状況でした。
9着から下の馬はララクリスティーヌを除いては追い込んでも速い上がりが出せない馬ばかりですし、ナミュールも決して速い脚があるわけではない、ナムラクレアも1,600mはちょっと長い、ロータスランドは1,400適条件、となれば、、、もう数えるほどしか残っていないのです。
最後に、直前にザっと降ってきた雨。これによって、劇的ではないものの、さすがに32秒台の上がりが出せるような馬場ではなくなりました。まさに上で挙げた②の条件に近しい状況が生まれたのではないでしょうか。
というわけでこれはあくまでイチ意見ですが、ご参考までに。
⑤1,600m高追走上がり型
簡単に言うと、安田記念上位4頭です。高い追走力を持ちつつ、持続力勝負になっても速い上がりで差し追い込んでくるタイプの馬たちを指します。
こういったタイプの馬は東京や京都、阪神では無類の強さを発揮します。
⑥1,600m低追走上がり型
基本的にスローでの好走が目立っていて、追走力が低いタイプです。
なので、好走時のレース平均テン3Fは35秒台で、その中で上がりが使えているのでスローの上がり勝負で馬券内に来るタイプと言えます。逆に、ペースが速くなり追走力が問われたり、中盤が緩まないレースだと、すぐ沈没します。
また、この手の馬の場合、スローだと位置が取れるが、ペースが流れると位置が取れないというパターンがよく見られ、条件戦までは楽勝でも、オープンクラスに入って以降は位置取りが悪い、脚を使わされて上がりの脚が通用しない、といった形で負けが続きます。
条件戦ではあんなに勝ててたのに…という風に見えますが、単純に相手が弱かっただけです。
ウイングレイテストはイメージの割にスローレースの方が良いタイプですが、上がりが他の馬より遅い分、多少時計が掛かるレースにも対応できなくはありません。
ヴァリアメンテは差し追込タイプですが、ストークSの上がり勝負では32秒台を出して勝っているものの、米子Sで追走力が問われた途端に後ろで何も出来ずに沈んでいます。
アドマイヤビルゴはヴァリアメンテと違い、個別のテン3Fがレースの3Fと0.3秒差なので先行型。ただ、先行して平均上がり33.8秒ということは、相当なスローでしか来ていないのは明らか。
⑦適性外・持続力型
基本的にマイラーとしての能力に乏しく、追走力が低いタイプなのは⑥と同じですが、それに加えて上がりも使えないグループ。
持続力の馬なので、上がりが掛かる方が得意なのですが、いかんせん追走力がないので、後ろで脚を溜めようにも、自身がバテてしまうという負のスパイラルに陥る。
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