NHKマイルC(GⅠ)・各馬評価

過去の傾向

NHKマイルカップ過去のラップ等
NHKマイルカップ 3着内データ

マイル戦は特に馬場差が重要なので、今回から馬場差を追加しました。表を見れば分かる通り、年々高速化が進行中。

ただし、高速馬場と言っても、前半は33秒後半~34秒台とかなりキツイペースになりやすく追走力が問われる上に、近年は中盤で12秒台が2F続くようなことはなくタイトなペースになりがち。33秒前半の上がりは必要ありませんが、33秒後半~34秒台くらいで先行押し切るか差せる実力が欲しいところ。

昨年はかなりの高レベルのメンツと言われていましたが、2010年以来の前半3F33.7秒という超ハイペース。
その後出走馬の半分近い7頭が重賞を勝ち、最下位の馬でも楽々と条件戦を勝ち上がっているところからも、レベルの高さが窺えました。

で、今年は?

Twitterではしょっちゅう言っていましたが、3歳世代のマイル路線はかなり低レベルというのが私の見解です。

朝日杯FSを見れば分かりますが、
皐月賞3着でマイル適性自体微妙なドウデュースが1着
新潟2歳Sを勝ったセリフォスが2着(新潟2歳S以降の重賞に強い馬不在)
持続力よりも瞬発力・上がり勝負に強いダノンスコーピオンが3着
その後結果が出ていないアルナシームが4着
最後方からペースについていけずに差してきたジオグリフが5着

こんな状態ですからね…。

1,400以下の路線から距離延長してきた馬は、最後の1Fの粘りが効かずに沈没。年明け以降も、1,400以下を中心に使っていた馬で、マイルに果敢に挑戦したのはキングエルメスのみという状況で、朝日杯FSで露呈した構図が逆転するような新星の登場もタイセイディバインとマテンロウオリオンくらい。

朝日杯下位組からの逆転はかなり厳しいと見ます。

また、馬場については土曜日を見てですが、2週連続雨に祟られた開催もあるので、ここ数年程の速さになるかはどうかも、火曜以降一切雨が降らない中での開催となれば、それなりに速い馬場にはなりそう。

テン1F/3F比較

今年は逃げ馬がジャングロくらいで、他は果敢に前に行くような馬はあまりいない状態。ジャングロは、ベゴニア賞でスロー逃げをしてやられているので、NZTくらいかそれよりもう少し速いペースで後続の脚を使わせる形で逃げそうな気がします。

ただし、例年の傾向に記載した中盤もあまりペースが落ちないという点については、今年に限っては落ちそうな気がしています。

また、上の表に基づいて枠順に並べた予想隊列がこちら。


各馬評価

各馬のデータは上げるのですが、いちいち見比べるのも大変だと思うので、以下の指標は本文に書いてしまおうと思います。

■脚質:今回取ると思われる位置取り。
■末脚:スパートで使う脚のタイプ。
    低速は34.6~35秒台、高速は33秒台、中速は34.0~34.5程度。
    瞬発力型/トップスピードやギアチェンジレースに強い
    持続型/10秒台の脚はないものの、速い脚をジワジワ使う
    万能型/両方に対応
■適性ペース:勝ちパターンの前半3Fのペース。
    なお、マイルで馬場差-1.0の場合を想定しています。

アルーリングウェイ

脚質:先行 末脚:中速持続型 適性ペース:34.0秒前後

個人的に◎候補。10秒台の脚も33秒台の上がりも使えないのですが、先行して11秒前半~後半の脚を3F持続させる力があるだけに、ペースがきつくなればなるほど前残る可能性が高くなります。

桜花賞は馬場状態に比してややスロー気味になったため、この馬には不向きな展開だっただけ。適度に人気もないですし、馬場次第では積極的に狙っていきたいところ。

インダストリア

脚質:差し 末脚:中~高速瞬発力型 適性ペース:35~36秒

前半3F35秒台を切るような、本格的なマイルレースを1度も経験していないだけに、果たしてどれだけ強いのか何とも。。(と、言ってやや軽視気味だったシュネルマイスターに昨年はやられたのですが)

特に弥生賞、珍しいロンスパ戦になりましたが、後方から差しては来ているものの5着で差し損ねているように、速いスピードの持続力戦になった時に不安が残る結果かなと。

距離が長いのでは?という話もあるかもしれませんが、上がり3F推移が11.5-11.5-11.9とそこまでガクンと落ちていないんですよね。なので、あまり距離を言い訳には出来ない負け方。
もちろん、前が残りやすいAコースだったという話もあるので、全くの無視は危険ですが、凡走しても驚けません。

オタルエバー

脚質:先行~差し 末脚:高速瞬発力型 適性ペース:35~36秒

朝日杯下位組。元々マイルでゆったり瞬発力を問われるレースで好走しているだけに、キツイペースになると1,400mがギリで朝日杯は当然凡走。

ファルコンSはやや人気を落としていましたが、1,400mなら対応できる力はあるので、ここでの上位は不思議ではありません。ただ、朝日杯凡走馬が1,400mで上位になったということは、この路線の序列がほとんど変わっていないことを示唆しているのではないでしょうか。

カワキタレブリー

脚質:先行 末脚:中~高速瞬発力型 適性ペース:36秒以上

スローで好走、ペースが速くなると凡走しているように、基本的にスロー巧者。この路線に執着してないで早いとこ距離延長した方が良いかと。

キングエルメス

脚質:先行 末脚:中速持続型 適性ペース:34秒後半~35秒台

ラブリイユアアイズ、トウシンマカオと同じ京王杯2歳S組。
持続力の高さが売りで、過去の上がり3F推移を見ても、ラブリイユアアイズ・トウシンマカオと同じような推移なので実力的には3頭とも近しいかなと思われます。
テンが速い分、2頭の上位互換と思って良いのではないでしょうか。

アーリントンCは5ヶ月ぶりの出走で、上積みがあると陣営は言っていますが、果たして。。

アーリントンCは、かなりの高速馬場状態で、どれだけ前半が速くとも先行なら34秒前半、差し勢は33秒台使えないとダメな馬場。この条件にそぐわない馬全部消して簡単に的中するような状態でした。

最後の1Fが11.4-10.9-11.8とそこまで垂れていない割に差されていたということは、それだけ後続の上がり勝負に付き合ってしまったということ。もし高速上がり勝負にならなければ、今回はアーリントンC1、2着馬よりもキングエルメスの方に分があるかもしれません。

ジャングロ

脚質:逃げ 末脚:低速持続型 適性ペース:33秒後半~34秒前半

NZTでは最後垂れると思っただけに、やられたなというところ。
テン1F/3F比較でも書いた通り、今回は確実にスローにはしない(というか確実に負けるので出来ない)だろうと思われます。

ただ、NZTでは前半34.7秒で上がり34.7秒でまとめたものの、NHKマイルでは34秒後半なら34秒か33秒後半の上がりがないと厳しい状況。

東京競馬場ならもう少し速い上がりは使えると思いますし、ベゴニア賞の時よりも成長はしていると思われますが、これまでのレースを見る限り34秒前半で走って好走出来るレベルの上がりが使えるかは怪しいところ。

ステルナティーア

脚質:差し 末脚:高速瞬発力型 適性ペース:36秒以上

阪神JF、チューリップ賞と凡走続きの時点でマイルが合わないという判断が出来ない陣営に正直疑問しか感じません。

阪神の高速馬場で前半3Fを35秒台で走ってツッチーフェイス以下の上がりしか出せなくてどうしてNHKマイルで勝算があると思うのか…こういう誤ったローテが馬の活躍機会を奪うんですよ…。

セイクリッド

脚質:追込 末脚:不明 適性ペース:不明

ダートしか使ってないので分かりません。が、最後方になりそうなので、特に印を回すつもりはありません。厳しいと思います。

セリフォス

脚質:差し 末脚:中~高速万能型 適性ペース:34~35秒台

新潟2歳S、デイリー杯2歳S勝ち馬。朝日杯FSではこれまでに経験したことないペースだったことが堪えてか、ドウデュースに屈する形になるも、先行勢では唯一の上位馬だったことを考えれば世代上位の力があることは確かでしょう。

ダイワメジャー産駒にしては珍しくキレ脚を持っており、随所で10秒台の脚を使っている一方、新馬戦の時のような持続力勝負でも結果を出しており、ペースが遅ければ瞬発力勝負に、速ければ持続力勝負にも対応してくる器用さを持っています。

不安点を挙げれば、ペースが厳しい場合。朝日杯は前半3Fが速いものの、中盤は結構落ちていて、11.9-12.1-11.9で残り400mとなっての勝負になっています。
ご存知の通り33秒台の脚が使えるようレースにはなっていなかったものの、中間が400mどころか600mもペースが上がらない状態となると、後方の馬よりも先行勢の方がプラスであったと言え、今回中盤が緩まない場合に沈没する可能性もないとも言えません。

今回は朝日杯以来のぶっつけ。ラブリイユアアイズのように、あまりに間隔が空きすぎての出走は何とも不安がつきまといますが、年明け以降の重賞戦線を見ても序列の変化はなさそうで、ここでも軽視はできません。

ソネットフレーズ

脚質:先行 末脚:中~高速瞬発力型(?) 適性ペース:不明

年明けのクイーンCに出る予定だったようですが、足元に不安があって結局回避したように順調にここまで来たわけではありません。

デイリー杯でセリフォスとの一騎打ちになりましたが、このレースはかなりペースが緩かっただけに、タイトなペースを刻まれる可能性が高いNHKマイルCでどれだけ対応出来るかは未知数。そのため、適性ペースは不明としました。

上がり3F推移を見ても、特別何か強いと思えるものもないため、扱いが難しいところ。

タイセイディバイン

脚質:差し~追込 末脚:中速持続型 適性ペース:33~34秒台

中距離から一気に距離短縮して成功した馬。お兄さんたちを見ると、距離が短い方が成功はしているようなので、短距離の方が良いのでしょう。

中京の短距離は、中距離で先行していた馬が、後方に回って脚を使って差し込んでくる展開が多いだけに、アーリントンCの方がどうかなと思っていましたが、そこそこ位置も取って上がり勝負にも対応。フロック視は出来なくなりました。

1,400の厳しいペースを経験し、マイルの高速上がり勝負にもしっかりと対応してきており、GⅠ挑戦までに経験しておいて欲しいことをしっかり経験して挑んでいる点には好感が持てます。
低調なマイル路線の中では数少ない新星と言えるでしょう。

不安点はと言うと、前述の通り、アーリントンC自体は厳しいペースでも速い上がりが出るレースでしたので、今回のNHKマイルとどこまでつながるかが怪しいところ。(それでもペース経験の方が重要なので、あまり気にしなくても良いですが)

ダノンスコーピオン

脚質:差し 末脚:高速瞬発力型 適性ペース:35秒台

この馬はかねてから言っているように、スローからの高速上がり勝負が得意な馬で、マイル自体そこまで向いている馬ではないと考えています。
でないと、共同通信杯であんな負け方しないです普通。馬場が悪かったとかいう話もありますが、上がり33秒台出せた馬がいる以上、馬場を言い訳にするのはかなり苦しいかと。

朝日杯は能力で、アーリントンCは追走力が求められず、速い上がり勝負になったことで上位に入線した形で、NHKマイルでも上位には来るかもしれませんがあまり重い印は打てないなと思っています。

ダンテスヴュー

脚質:差し~追込 末脚:中速持続型 適性ペース:不明

まぁこのローテは悪手でしょうね。
そもそもスタートが非常に遅い馬なので、今回のメンツでは最後方候補筆頭みたいなテンの遅さですし、東スポ杯2歳Sの上がり3F推移を見る限り、後方からどうにかしようとして差し損ねて終わりそうだなという印象。

トウシンマカオ

脚質:先行 末脚:中速持続型 適性ペース:35秒台

1,400以下の路線組の中で朝日杯FSでは最先着なのですが、朝日杯から条件が好転するとは思えず。

ファルコンSでは包まれてしまったこともありますが、その割に最後伸びていません。蓋をあけてみると、11.8-12.3-12.6という上がり3F推移になっていて、明らかに最後はバテています。ファルコンSはかなりキツかった模様ですが、これではNHKマイルも掲示板が限界かなというところ。

フォラブリューテ

脚質:差し 末脚:中速持続型 適性ペース:35秒台

桜花賞は出遅れて追込になったことが災いしたこともありますが、アルテミスSを見ても、先行勢より速い脚が使えない時点でかなり致命的。

新馬戦や桜花賞で1F10秒台を出したこともありますが、真っ当にレースの流れに乗ってしまうと、マイルのペースではダラダラと脚を使う形になってしまい、先行勢を飲み込む程の上がりが使えません。これがアルテミスSで凡走した理由です。

これで先行して前でガンガン粘ろうとするならちょっと怖いのですが、テンがそこまで速くないだけに、今回も状況が好転するとはあまり思えず。

プルパレイ

脚質:差し 末脚:中速万能型 適性ペース:36秒以上

クロッカスSで出遅れたことで怪我の功名となり、ファルコンSで初重賞制覇。netkeibaのコラムでミルコが元々後ろから試してみようかと思っていたようですが、結果を出しているのは1,400mでの話。

確かに、ファルコンSでは11.7-11.9-12.3という上がり3F推移になっており、苦しい局面でも12秒台後半まで落ちていないのは良いですが、デイリー杯や朝日杯の上がり3F推移で最後の1Fがガクンと落ちているのを見るにつけ、劇的に変わるようなパフォーマンスだったとは思えません。

デイリー杯2歳S 上がり3F 34.1秒 11.4-10.6-12.1
朝日杯FS    上がり3F 35.9秒 11.2-12.1-12.6
ファルコンS       上がり3F 35.9秒 11.7-11.9-12.3

また、後方からというのもネックで、中山マイルで33秒7という上がりを出したことはあるものの、この時の馬場差は-1.7とかなり軽い馬場でしたし、何より前半3F37.6秒という驚異的な遅さ。

それで33.7秒しか出せていないとなると後方で何もできずに終わるようにしか思えません。

マテンロウオリオン

脚質:差し 末脚:中速万能型 適性ペース:34秒~35秒前半

新馬2着⇒万両賞で格上挑戦に成功し、シンザン記念制覇。NZTでも2着に好走しています。

タイセイディバイン同様、流れるペース経験もありますし、前~後ろと自在に位置が取れるのは魅力的です。ただ不安なのは、NZTでジャングロを交わせなかった点ですね。いくら武豊騎手のペースメイクがあるとは言え、ジャングロ自身も1,600mがそこまで良いとは思えない馬でした。

それだけに、意外とペースが上がり過ぎるとこの馬もマイルは厳しいのでは?と疑りたくなります。

実際、新馬戦ではそこまでペースが速いわけでも、馬場が重いわけでもないにも関わらず、最後の1Fでガクンと落ちるんですよね。
(上がり3F推移 11.4-11.4-12.2

以前からこの垂れ方が気にはなっていたんですが、シンザン記念を見るとそうでもないので、新馬は仕上がってなかったのかなと思っていたのですが、NZTの上がり3F推移を見ると11.7-10.8-11.6最後の1Fでジャングロと脚色が同じになっているんです。

これを見ると、実は1,600mがちょっと長い(対応は出来るがベストではない)のかもしれないなと思いますね。

なお、鞍上はNHKマイルCでの成績は結構良いです。

参考までに

過去5走とサンプルは少ないですが、上位馬の前半3Fと上がり3Fを元に、好走する馬の条件レンジを表にしてみました。

これを見る限り、先行勢は34秒台で粘り、後方勢は33秒台の脚を使えないと厳しいことがよく分かるかと思います。

折れ線になっていないのは馬場差などを鑑みてこの範囲、としたためです。

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