日本ダービーを考える①~皐月賞の異常性
いよいよ3歳戦線の大きな区切りとなる日本ダービーが近づいてまいりました。早速各馬評価を…といきたいところですが、今年の3歳戦はあまりに色々と異常なことが多すぎました。
皐月賞の際には、①層の薄さ、②スローペースしか経験のない馬が多い、ということを挙げておりましたが、皐月賞では、結果的に厳しいペースで前が壊滅するレースとなりました。
ということで、今回はダービーを考えるにあたり、大きなポイントとなる皐月賞について、過去の事例も交えながら考えてみたいと思います。
皐月賞を検証する
§1:明らかな異常決着
まずは、今回の皐月賞の着順について見てみましょう。
1頭だけ先行して馬券内に入った馬もいましたが、18頭出走して上位半分、つまり9着まで大半が差し追込勢(3角時点で2桁番手)で占めています。
過去振り返ってみたところ、9頭中7頭以上が差し追込勢で占めるのは、実に14年ぶりです。
なお、何故上位9頭としているかと言うと、上位3頭や掲示板内という区切り方では、たまたま強い差し追込馬が複数頭いたという可能性を排除できないためです。しかし半分もの頭数まで範囲を広げてもなお、差し追込勢が上位に多いということになると、決着に偏りがあるのではと、疑問を持ちますよね?
通常、ペースや展開によるバイアスが生じなければ、差し追込勢が上位を占めることはありません。バイアスが生じていない決着の仕方としては、逃げ先行勢が多い(競馬は前が有利と言われるため)か、或いはおおよそ半分(4~5頭)差し追込勢と先行勢とが拮抗するくらいと考えます。
しかし、上の表を見て頂ければ分かる通り、今年は9着までに入線した馬の内、8割に当たる7頭もの馬が差し追込勢(道中2桁番手)。さすがに異常と言える範疇です。皐月賞の結果がそのままダービーでもアテになるとは思えません。
実際、9着まで大半が差し追込勢で占めた2009年は、皐月賞で3着内だった馬が皆ダービーで2桁負けを喫しており、逆に皐月賞で下位だった馬が巻き返しを図る構図となっております。
<2009年>
皐月賞
1着 アンライバルド ⇒ダービー12着
2着 トライアンフマーチ ⇒ダービー14着
3着 セイウンワンダー ⇒ダービー13着
日本ダービー
1着 ロジユニヴァース (皐月賞14着)
2着 リーチザクラウン (皐月賞13着)
3着 アントニオバローズ (皐月賞9着)
なお、先に言っておきますと、この年のダービーは不良馬場でした。
なので、本当にこれが参考事例として機能するかと言うと、微妙なところであることは認識してはおります。
ただ、これだけの偏りが次も同じように続くことはそうそうあり得ません。競馬は適性がものをいう競技ですから、皐月賞での決着がそのままこの世代の序列を表しているわけではないということは心得ておくべきと考えます。
§2:発生していたトラックバイアス
さて、前述の通り、皐月賞は前にいた馬の多くが潰れたわけですが、何故こういう決着になったのか、改めて書きたいと思います。
中山競馬場というのは、雨が降って重くなると、前と後ろがほぼ同じ上がりになる現象が起こります。
3/18の中山を例にとってみましょう。この日、中山は朝から雨が降っており、4Rの時点で稍重。
逃げた馬は1,000m1分0秒5と決して遅くはない、むしろ稍重だと速めともいえるペースで逃げ、上がりは37.5秒でした。
このレースの上がり最速は、最後方にいた馬の37.0秒とわずか0.5秒差ですから、後ろの馬が届くはずがありません。
これが、前と後ろの上がりの差がほぼ同じになる現象です。
しかし、雨が降り続け不良馬場までいくと、この現象からもう一段階変化が起こります。それが、ペースが速いと前が潰れる現象です。
古馬2勝クラスのレースですが、1,000m1分2秒2というペースで逃げた馬が上がり38.4秒。午前のレースで1分程度で逃げた馬の上がりより遅くなっていることからも、かなり馬場が重たくなっていることが読み取れます。
で、ここまで進むと、前と後ろの上がりの差は再び広がるわけです。
実際、この後に行われたフラワーCも、前が粘り切れず、後方優位のレースになりました。そして3着に入った先行馬との上がり差は1.4秒ほど。
4Rではわずか0.5秒だった上がりの差が、1.4秒まで広がったわけです。
で、この現象は皐月賞当日も起こっていました。
前日から雨が降り続け、この日は朝から晴れたりもして重馬場でしたが、何を思ったのか、逃げ馬が1,000m59.3秒のペースを刻み、大失速。
前と後ろの上がり差が少ない馬場ではなかったため、先行勢が全滅し、中団にいたモカフラワーが勝利。先行勢最先着のグランスラムアスクとの上がり差は1.5秒にもなっていました。
なので、飛ばすペースになれば前が沈没することは馬場状態から予期できたわけです。(何故この時点で後ろからの馬に印を回すことを考えなかったかというツッコミは無しで・・・)
§3:中山の4コーナー
そしてもう1つ、皐月賞が異常決着になったポイントがあります。
それは、3~4角の馬群です。中山で待機勢が上位になる際は、大体4角辺りで馬群が団子になってます。
これからスパートをかける!というところで、前と後ろがほぼ同じような位置になってしまったら、そりゃ後ろが有利に決まっているんですけど、何故かこの辺分かってないまま逃げる騎手がいるのが関東なんですよね…。
あ、ちなみのこれは良馬場だろうが不良馬場だろうが関係ありません。
確か馬群団子だったな~と、パッと思いつくだけでも、、、、
1着 スルーセブンシーズ 9-9-8-5
2着 ストーリア 6-7-3-3
3着 サトノセシル 8-7-5-5
1着 エミュー 15-16-14-11
2着 ヒップホップソウル 13-11-8-6
3着 パルクリチュード 3-2-3-4
1着 モカフラワー 7-8-8-3
2着 シンティレーション 10-10-10-10
3着 エープラス 15-15-15-15
1着 ソールオリエンス 15-15-15-17
2着 タスティエーラ 5-6-6-4
3着 ファントムシーフ 11-10-10-10
このくらい出てきます。
見て頂ければ分かりますが、馬場状態関係なく全部後ろが台頭してきてますよね。
では皐月賞について、この4角前後がどのようなラップだったのか、レースラップとダービーに出てくる各馬の個別ラップを一覧化してみました。
なお、JRAよろしく手動計測なので、悪しからず。。上がり3Fを実測するとJRA発表よりおおよそ0.2~0.3秒ズレていますが、大きな傾向は分かると思うので、細かな部分は一旦無視してください。
それよりも、ポイントは3~4角のところ。
上位馬のラップを見ると、後続が3角で加速を始めて馬群が凝縮するのですが、4角では抑え気味に進み、最後の直線で加速する形になっています。で、逆に4角でも加速し続けていた5、6着馬は垂れています。(ショウナンバシットの場合、内を立ち回ったことでショートカット出来たものの、馬場の悪いところを走ってスタミナが削られたと思われます)
で、この4角(8F区間)を境に、先行勢と後方勢の脚色に大きな差が生じていることが分かります。
つまり、
①4角手前で馬群の密集が進む
②4角で緩み、後方に余裕が生じる
③前半が流れた分、先行勢はスタミナが残っていなかった
これによって、ただでさえペースが上がって前に厳しかった状況に拍車がかかり、上位のほとんどが後方勢で占められるという極端な決着になったと言えます。
こう考えると、この展開の中で、前で残ったタスティエーラのタフさはかなり際立つのではないでしょうか。
皐月賞組の評価
ここまで読んでいただければ、皐月賞の差し追込組がいかに展開に恵まれたかが分かると思います。
では、これをどう評価すべきか?
過去の傾向と当日の馬場
過去のダービーの決着の仕方を見ますと、以下のようになっております。
先行勢と差し勢が多いですが、追込はさすがに少なく、
と数えるほどで、頭まではわずかに3頭となっています。
上の表を見れば分かりますが、近年はとてつもなく速く、かなり軽い馬場になっているので、どんどん追込が利きづらくなっています。
しかも、Cコース替わりで究極の高速馬場となっており、800mロングスパートになっても先行勢~差し勢で33秒台の上がりが余裕で出るようなレースが頻発します。
昼前くらいから気温がぐんぐん上昇
↓
馬場が軽すぎて、全員前掛かりになり、ペースが速くなったり早仕掛け頻発
↓
上がりが掛からないので結局高速決着
という具合ですね。
出走馬の想定位置取り
テン1Fだけで見ると、青葉賞組2頭(スキルヴィング、ハーツコンチェルト)とソールオリエンス。想定1番人気と2番人気が揃ってこの位置というのがなかなか…苦笑
逃げ候補としてはホウオウかパクスオトマニカ、ドゥラエレーデのいずれか、になってくるでしょう。
どれが逃げても前半は恐らく速くはないと思われますが、馬場を意識して早仕掛け、ロングスパートになる可能性はかなり高いと見ます。
各馬の評価についてはまた別記事にて書きます。
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