2024年版ヴィクトリアマイル(GⅠ)考え方

※5/10 9時18分枠順を踏まえたテン1Fの位置取り更新

NHKマイルCの好走レンジ検証

先週のNHKマイルCは、8点(ロジリオン、ジャンタルマンタル)と9点(アスコリピチェーノ)をつけた3頭がそのまま1・2・3フィニッシュ。

記事としてはベストな当て方をしたかなと思いますが、個人的には前残りが怖くて買い目を広げてしまったことを後悔しております。。

ジャンタルマンタルはスタート速いので何も思いませんでしたが、まさかアスコリピチェーノやロジリオンが先行するとは…想定以上の馬場の軽さだったこともあり、アスコリピチェーノは後ろからだとちょっとヤバいかもなと思っていたので、ルメール騎手さすがとしか思いませんでした。

ちなみに、昨日の緑のチャンネルの番組「先週の結果分析」で、東京マイルの馬場差は-1.8だったことがわかりましたので、それと今回の結果を付け合わせてみました。

※想定では馬場差-2.3/中盤23.0としておりましたが、馬場差-1.8/中盤24.0と実質変わらないため、好走レンジ自体はイジっておりません。

1着ジャンタルマンタルがこの好走レンジ内にしっかり入っています。

2着アスコリピチェーノについては、好走レンジ外ですが、勝負所で強烈な不利を食らっていますので、さすがに度外視したいところ。

3着のロジリオンは微妙に外れていますが、0.1秒の誤差なので、好走レンジにかなり近い。

そして、4着、5着の馬(赤丸)は完全に外れています。
本当は上位3頭全部この中に入ってくれれば言うことなしですが、2着馬も3着馬も4・5着馬に比べれば好走レンジに近しいのではないでしょうか?(と無理矢理結論付けてみる)


ヴィクトリアマイルの考え方

去年、ヴィクトリアマイルの考え方を書いてるんで、そんなに書くことはないんですが、表などを見やすくしたりしているので、改めて。


ヴィクトリアマイルの好走レンジと求められる適性

馬場差はNHKマイルC当日と変わらない-1.8、中盤は過去15年分の平均で23.4秒と設定しての好走レンジが上記の通りです。

以下、昨年の「ヴィクトリアマイルの考え方」より抜粋+加筆してみました。


ヴィクトリアマイルの特徴は、この時期特有の「“超”高速馬場」が挙げられます。この時期になると、コース替わりと相まって、馬場のクッションがとてつもないことになり、追走力が問われなくなります。

つまり、マイラーじゃなくても追走で脚が削がれにくくなるわけです。

通常、中距離馬が前半3F35秒なんてペースで走っていたら、脚を削がれて最後のスパートタイミングで余力をなくして失速…なんてことになるのですが、そうしたことがなくなるわけです。

実際、上の好走レンジを見ると、前半を34秒後半で走っても上がり3Fが34.0秒よりも速い状態になっていますよね。こんな状況は、1年の中でもそうそうありません。

なので、先行して上がりが使える馬が好走しやすいですし、差し~追込馬が好走するには32秒台の上がりが必要になってくるわけです。

なお、福島の1,800~2,000m、大阪の内回りコース、中山のマイル、といった舞台で好走するような持続力勝負に強い馬にとっては、適性が真逆の条件になります
持続力のレースで勝っている馬はヴィクトリアマイルで好走することはほぼない、と言って良いでしょう。

ここまでのポイントをまとめますと、

  1. ヴィクトリアマイルは「“超”高速馬場」で追走で脚が削がれにくい

  2. 先行馬で上がりが使える馬が好走しやすい

  3. 差し追込馬は32秒台の上がりが必要

  4. 持続力勝負で勝っている馬は×

となります。


なお、これは補足ですが、
・阪神JF1着、桜花賞2着のラッキーライラックが中距離の逃げ先行馬クロコスミアに負ける
・安田記念で連対するアエロリットが馬券外になる

これが、ヴィクトリアマイルというレースの本質を表しています。

持ち時計だけで勝負が決まるなら、ラッキーライラックが中距離馬のクロコスミアに負けるでしょうか?
1頭の強い馬相手だけならいざ知らず、アエロリットが4着、5着に負けるでしょうか?(というか、アエロリットはクロコスミアにも負けています)

ラッキーライラックもアエロリットも、上がりが速いタイプではなく、高い持続力を生かすタイプのマイラーです。どれだけ実績のある馬であろうとも、適性がズレると、このようにあっさり負けるわけです。


で、今年は?

5歳世代のクラシック路線を引っ張っていた馬が軒並み不在。
現4歳世代はクラシック戦線で前潰れの持続力レースを勝ってきた馬が賞金を積んでおり、ドゥアイズ、ウンブライル、モリアーナなどいかにも前潰れ競馬、重たい馬場でのマイル戦などが合いそうな馬ばかりが出走してきています。

逃げそうなのは、サウンドビバーチェかフィールシンパシー、或いはコンクシェル、この辺りでしょうか。

一方、ナミュール、マスクトディーヴァ、ウンブライル、モリアーナ…と、有力馬のほとんどが中団か後ろになりそうなのもポイントになります。

故に、今年のヴィクトリアマイルのポイントは以下の2つです。
これらについて、1つずつ見ていきましょう。

① 後方待機馬のスピード能力
② 逃げ先行馬が使える脚


今年のヴィクトリアマイルのポイント

ポイント① 後方待機馬のスピード能力

先程、有力馬のほとんどが中団か後ろになりそう、と書きましたが、こう思う方がいらっしゃるでしょう。

「いや、ウンブライルとかモリアーナって32秒台の上がりを前走使ってるじゃん。トップスピードが低いとは言えないのでは?」

確かに、阪神牝馬Sでは、ウンブライルやモリアーナが32秒台の脚を使えることに驚いたのですが、この時の前半3Fを見てみましょう。

ウンブライル    前半3F 36.3秒/上がり3F32.9秒
モリアーナ     前半3F 36.6秒/上がり3F32.9秒
マスクトディーヴァ 前半3F 35.9秒/上がり3F33.0秒

阪神牝馬Sの各馬の前半3F/上がり3F

マスクトディーヴァは36秒を切ってはいますが、36秒前後であることに変わりはありません。つまり、前半3Fがだいぶ遅いんですよね。正直なところ、オープン馬であればこのくらいの脚は使えて当然、というレベルです。。

では、これを好走レンジに当てはめるとどうか?(馬場差と中盤を補正しています)
※なお、コース自体が違うので、そのまま好走レンジに当てはめる場合、鵜吞みにせず、あくまで「参考」です

好走レンジから大外れですよね。例えば同じレースで、前にいる馬が35秒で走って上がり33秒前半出せたとしたら…32秒台後半の上がりでは遅く、32秒台前半の上がりが必要です。
(もちろん、前で上がりが使える馬が何頭いるか?という検証も必要ですが)

じゃあこの馬たちが32秒台前半の上がりを使えるか?と言えば…どうでしょうか?各馬の過去のレースから想像できるでしょうか?
個人的にはどの馬も持続力の馬と考えているので、32秒台前半まで使えるとは思えず。。

ウンブライルについては、NHKマイルCの考え方で書きましたが、後方追込馬は大体持続力の馬です。なので、トップスピード勝負が合うとはあまり思えません。

モリアーナについては、そもそもマイル自体が合っていないと思っています。クイーンC3着、NHKマイル4着などの成績はありますが、ご存知の通り、そもそも現4歳世代でマイル路線で活躍出来ている馬っていますっけ?

洛陽Sのドゥアイズとか、ダービー卿のエエヤンとか、明らかに展開や馬場が向いた時だけだという認識です。改めて4歳世代のレベルも考えておくべきでしょう。

ちなみに、マスクトディーヴァやウンブライルの東京新聞杯の前半3F/上がり3Fを当てはめても、好走レンジ外になっています。

だから、こんなことをポストしたわけです。

補足ですが、ソダシも速い上がりは使えません。
ですが、彼女がヴィクトリアマイルで出した、前半3Fと上がり3Fは以下のようになっています。

2022年 前半3F 35.1秒/上がり3F 33.4秒
2023年 前半3F 34.4秒/上がり3F 33.6秒

32秒9という数値は一見すごいと思うかもしれませんが、前半3Fを36秒で走って溜めに溜めても、ヴィクトリアマイルで好走する馬との上がりの差は僅か。ソダシと比較してみると、全く足りないことが分かるのではないでしょうか。


ポイント①' ナミュールのスピード能力

ちなみに、ナミュールはどうでしょうか。

ナミュールは東京マイルを何度も走っているので、それを当てはめていますが、好走レンジにはハマっているものの、ちょっとギリギリですよね。

これは、好位を取れれば良いが、出遅れるとヤバいということを表しています。その理由はナミュールも上がりの脚に限界があるから、です。

ナミュールの過去のレースをすべて見ても、上がり33.0秒がキャリアハイ。去年のVMや安田記念では不利を食らっていますが、それ以外のレースを見ても上がり32秒台前半を出せるとはあまり思えません。出せても、やはりウンブライルやモリアーナと同程度か、もう少し速い程度ではないでしょうか。

ここでこう思う人もいるでしょう。
「いやいや、ナミュールは秋以降、富士S、マイルCS、香港マイル、ドバイまで好調だし、夏を挟んで成長したんだよ」と。

ただですね…成長がないとは言いませんが、ラップが不明なドバイ以外、全部適性が向いているんですよね。

富士Sは前半3F34.0秒で中盤も全く緩まなかった、とてつもない持続力レース。32秒台の上がりは必要ない、というかどんな怪物でも出ません。
ここでの持ち時計は確かに優秀なのですが、このレースはほぼ一息もつくことなく、ひたすら走り続けて出た時計であって、ヴィクトリアマイルとは全く異なる性質のレース。再現性は皆無です。

マイルCSは京都開催終盤で馬場はボロボロ。馬場差-0.1で時計が掛かり気味で、これまた上がり32秒台は必要ありません。同様に持続力レースが得意なソウルラッシュが2着に来たのもその証左です。

香港マイルは洋芝ですし、説明不要でしょう。

というわけで、秋以降、連続して重賞で馬券内に入り続けていますが、あくまで馬場やペースが、ナミュールの適性と合致しているからに過ぎません。(これはソウルラッシュも同じで、安田記念では凡走すると見ています)

もちろん、好位を取れれば馬券内確率はかなり高いですが、仮にこれで出遅れたとしたら…馬券外になっても全く不思議ありません。

それに、今回の鞍上はあまり位置取りに対して神経質ではありません。先日の京都新聞杯でも、大外だからと好スタートにも関わらず、好位につけることをしませんでした。なので、個人的には好位取りが絶対のナミュールとの相性が良いとは思えません。(ルメールならしっかり先行させると思うのですが)

今回、大外枠になろうものなら、なおさら京都新聞杯と同様の運び方になることもあり得ます。


ポイント② 逃げ先行馬が使える脚

次に、逃げ先行候補の馬で面白そうな馬がいないか、ここで検証していきます。

検証対象は、以下の5頭。
・コンクシェル
・サウンドビバーチェ
・スタニングローズ
・ハーパー
・フィールシンパシー

ポイント②【1】コンクシェル

馬場が重たい中山牝馬Sを逃げ切ったり、中山マイルのアネモネSを追い込んで好走したりと、基本的に上がりが速いレースで好走するタイプではありません。

ベストパフォーマンスは鞍ヶ池特別ですが、この時の前半3Fは34.9秒で、上がりが34.0秒。中京コースですが、稀に見る馬場差-1.7という高速馬場でのものなので、馬場差と中盤の補正をしたとしてもせいぜい上がり33.9秒。
好走レンジでは、前半34.9秒で運んだ場合、33秒半ばから前半の上がりが必要なので、これでは足りません。

もちろん、コースが違うのと中京は上がりが掛かりやすいので、もう少し上がりが速くなる可能性はあるのですが、過去33秒台の上がりを出している時は、全部前半3Fが36秒より遅いので、、、

逃げるつもりのようですが、かなり後ろを引き離すような大逃げを打たないと厳しいでしょう。

ポイント②【2】サウンドビバーチェ

昨年のターコイズS以降、成績が冴えません。
元々前半3Fを35秒台で運んでも上がりが掛かっているように、そもそもマイル適性に疑問符のある馬です。

時計が掛かった菜の花賞で勝ったこともありますが、基本的には、緩いペースでの好走が多いイメージで、紫苑Sや昨年の阪神牝馬S、ヴィクトリアマイルで好走しているのも、前半が緩い点が大きいのではないでしょうか。

昨年のヴィクトリアマイルでは、前半3F34.5秒、上がり33.8秒ですが、これ、もう少しゆったり行ければ、好走レンジに入ってくる可能性があります。故に、ここ2走は度外視して押さえるのも手かなと思います。

ポイント②【3】スタニングローズ

当初はマイル路線を走っていましたが、フラワーC→オークスと路線変更したように、陣営も元々マイルでは足りないと思っていた節が見られます。
つまり、絶対的なスピード能力が足りない。

これまでのキャリアを見ても、上がり33秒以内が出せているのは、
・マイルなのに前半1,000mが60秒オーバー(新潟2歳S、サウジRC、こぶし賞)
・後方からになったヴィクトリアマイル
の4回のみ。

昨年のヴィクトリアマイルでは前半3F35.5秒、上がり33.4秒では足りず、もっと速い上がりが必要です。
もう少し前で運べば馬券内も見えてきますが、流れるレースでの実績がないため、その分だけ脚も削がれるのではないか?と考えるのが普通で、どれだけ脚を残せるかは未知数です。

ポイント②【4】ハーパー

東京のマイル、クイーンCを勝ってはいますが、持続力が必要だったレース。前半3F35.0秒で運んで、上がりは34.0秒。
桜花賞では4着ですが、ペリファーニアやコナコーストを捕まえられなかったという事実は結構重いと思います。(この2頭が後に大活躍していれば話は別でしたが…)

この馬も前に行けるものの、しぶとさを生かしたいタイプで、上がり33秒台を出したことが一度もありません。
※有馬記念の時にも垂れにくいタイプと言及していました

高速マイル戦が初めてなので、33秒台が全く出せないとは言い切れませんが、血統的にも兄姉が速い上がりが使えるタイプでもなさそう。押さえるにしても過度な期待はしづらいでしょう。

ポイント②【5】フィールシンパシー

紅葉Sが秀逸。
馬場差は-1.7でほぼ想定に近しい軽さ。前半3F35.2秒で入って、上がり33.4秒でまとめており、好走レンジ内…ではないですが、かなり近しいところにありますし、今回の想定馬場差/中盤に補正をすると、好走レンジに乗ってきます。

斤量が+1kgとなるため、あくまで「紅葉Sと同じパフォーマンスが出せれば」という条件が付きますが、先行勢の中では最も可能性がある馬だと思います。

上記5頭をまとめると以下のようになります。
(ハーパーは3歳春の戦績しかないため、除きます)

なお、サウンドビバーチェも見た感じでは好走レンジからハズレているのですが、前述の通り、好走レンジのライン上には乗っているんですよね。

基本的に前半3Fと上がり3Fは反比例しています。前半速く走れば、その分上がりが遅くなりますし、逆もまた然り。

そのため、サウンドビバーチェがもう少し遅く前半を入れば、上がり33秒前半でまとめられる可能性があり、そうすれば好走レンジ内に入ってくる、という理屈なわけです。


おわりに

以上、ヴィクトリアマイルのポイントを見ていきました。
ここまで見て頂ければ、先日の以下のポストの意味が分かるかと思います。

好走レンジにハマっているのは、ナミュールとフィールシンパシー、サウンドビバーチェ(昨年のVM)というわけです。それ以外はハズレています。

ただ、好走レンジはあくまで、このくらいの前半で走ればこのくらいの上がりが使えるのではないか?という想定のものでしかなく、そこに騎手の乗り方、枠、馬場バイアスなどの変数が加わればまた変化します。

なので、絶対視は出来ませんが、取捨選択をしていく上での参考として見て頂くのが良いかなと思います。冒頭の注意書きも、こういった意図から書いています。

結局、今回のように適性外の馬がほとんどといっても、その中で先にゴールする3頭は確実に存在しますので、好走レンジのように適性が近しい馬を絞りつつ、適性外の馬の中でもどの馬が良さそうか、を検討していく必要があると思っています。

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