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気に入らないコンテンツとの付き合い方=消費しない自由の行使

目次
▽ケース① リンク先に苦手なコンテンツがあったら
▽ケース② BTSのMステ出演中止騒動
▽ケース③ 母子手帳に推される 絵本作家のぶみ氏
▽まとめ

SNS では、気に入らないコンテンツに対する排斥運動が騒がしい。

しかし、すべての人が「消費しない自由」を持っていることを忘れてはいないだろうか?

唐突だが、筆者は、スプラッターやグロがさっぱり理解できない。

だからと言って、「これは生命に対する冒涜だ!規制しろ!」と叫ぶつもりはない。なぜなら、自分は見ないし、買わないし、手元に置かない創作物だからだ。

ハロウィンの季節には、Twitter上で「こんなメイクをしました」とグロメイクの自慢が流れてくることもあるが、ミュートをすれば済む。自分の知らないところであれば、口が裂けていようが、目玉が飛び出していようがどうでもいい話である。

そのコンテンツを見ない、消費しない自由が自分の手にある限りは、自分が気に入らないコンテンツをわざわざ排斥する必要性はない。

ケース① リンク先に苦手なコンテンツがあったら

Twitter で役者の春名風花さんをフォローしているため、次に春名さんがやる舞台版『眼球綺譚/再生』のマンガ(綾辻行人, 児嶋 都)を見させてもらったことがあった。

『再生』の方から読み始めたのだが、首をはねた体を前にして座る男を見た瞬間に「自分が苦手なやつだ」と後悔した。

しかし、だからと言って、春名さんに「こんなのを載せるな!」とキレるのは筋が違う。なぜなら、自分には途中で読むのを止める権利があるからだ。

『再生』に関しては、最後まで読んだ。実写ではなくマンガとしてデフォルメされていたし、狂気をはらんだ愛を表現する作品として読めていたため、結末に対する興味が勝ったのである。

だが、『眼球綺譚』の方は読まなかった。題名に「眼球」とある以上、苦手なジャンルであることは想像できたため、こちらには消費しない自由を行使したわけである。

苦手そうな物だと解っていれば手を出さなければ良い、それだけのことだ。

ケース② BTSのMステ出演中止騒動

いわゆる「原爆Tシャツ※」を着た SNS 上の写真が取沙汰された結果、BTSのミュージックステーション出演が中止になった。しかし、これは行き過ぎであるというのが筆者の考えだ。

※PATRIOTISM OURHISTORY LIBERATION KOREA という単語の横に、長崎へ投下された原爆のキノコ雲の画像が並ぶ Tシャツ

最初に断っておくが、筆者は K-POP を見ないし、買わないし、手元に置かない。個人的に好きなジャンルはバンドが演奏するロックやヘビーメタルであるため、そもそも歌って踊る K-POP は選択肢に入っていない。

筆者の中で歌って踊るアーティストの最高峰は Michael Jackson であり、MJ を超えない限り興味はわかないだろう。

もちろん、BTS が米国の週間アルバムチャート・ビルボード200で初登場1位になった情報は知っているし、国連でスピーチをしたことも知っている。しかし、K-POP は筆者にとって興味のないジャンルであるため、「これが、いまセネガルで一番はやっている曲」というぐらい縁遠く聞こえている。

さて、BTS が、原爆を落とされた日本をバカにしていたのであれば、それは許しがたいことだ。

しかしだからと言って、彼らの表現の自由は、制限を受けるべきではない。

なぜなら、すべての人には消費しない自由があるからだ。気に入らなければ見なくていいし、買わなくていいし、手元に置かなくていい。見えないところで BTS が何をしていようとも、わざわざ気にする必要はない。

そもそも表現とは、もう少し高度なことができる世界である。

もし日本をバカにするアーティストが表れたのであれば、日本のアーティストが「そっちも日本も、両方ともサイコー!」と返せば勝負がつく話だ。特定の国をバカにするアーティストと、どっちもサイコーと叫ぶアーティストとでは、明らかに表現者としてのレベルが違うだろう。

27年前、Michael Jackson が Black or White のMVをどうしてあのような作品にしたのか、いま一度、考えた方が良い。

https://www.youtube.com/watch?v=F2AitTPI5U0 
Black or White (The Official YouTube Channel of The King of Pop)

ケース③ 母子手帳に推される 絵本作家のぶみ氏

何かと騒動の絶えない絵本作家のぶみ氏だが、普段、のぶみ氏がどんな絵本を描こうとも自由だと筆者は考えている。

のぶみ氏の絵本に対する向き合い方はかなり独特であり、それがよく表れているのが次のインタビューだ。

(現代ビジネス「たった5分で泣く子続出の絵本『ママがおばけになっちゃった』」より)

―「感動した」という声をいただく反面、「子どものトラウマになるのが不安」というような感想もいただいています。

逆に、子どものトラウマになったほうがいいと思います。それに、トラウマになるかどうかは、子ども自身が決めることで、大人が決めることじゃないんです。

子どもは母親がいなくなるなんて、想像しないし、したくない。当たり前の存在だと思っているんです。そうすると、ワガママを言って暴れたり、ときには母親を蹴ったり叩いたりする子もいます。でも、それはいかんぞ、と。

この絵本は、下書きの段階で、出会った人や講演会に来た人になんども読み聞かせてから完成しました。1000人くらいの人に読んでいるんです。それで気づいたのですが、子どもは読んでいる途中で「嫌だ! やめろ!」といって泣いたり、「もう二度と読むな!」って逃げ出したりするんです。だけど、こう反応するのは母親が大好きだからなんですね。

そこで「お前、ママがいなくなったらどうするんだ?」と問いかけます。とても嫌なことだけど、想像させることが、すごく大事。そうすることで子どもが、母親のことを大切にしなくちゃいけない、と気づくことができると思います。それに、人はいつか必ず死んでしまう。つらい思いを絵本のなかで発散しておくのも僕は大事だと思います。

筆者は、「子どもにそんな絵本を読ませてどうするの?」と思うし、子どもが自分で手にしない限りは消費しない自由を行使するだろう。

しかし、表現の自由がある以上、のぶみ氏は自身の思う通りの絵本を描き続ける権利がある。また、「よそはよそ、うちはうち」であり、のぶみ氏の作品を気に入って購入する人たちを止める必要もない。

だが、そんな のぶみ氏のイラストを母子手帳で採用するとなると、話は変わってくる。

https://twitter.com/sukusuku_japan/status/937871118643347456

妊娠がわかった時に交付される母子手帳のイラストを描くということは、公共事業への応募に近い。

イラストは、のぶみ氏からの無償提供という形になっているようだが、税金を使って運用される母子手帳だ。母子手帳事業に起用する人選として、のぶみ氏が適切なのかどうか審査は必要だろう。

仮に母子手帳のデザインが、3種類、4種類あり、その内の1つがのぶみ氏デザインの物であったなら何の問題もない。のぶみ氏のイラストが良いという人の選択肢も、他のデザインが良いという人の選択肢も用意されているからだ。

しかし、選択肢が無いのであれば、作品内容に関して賛否が分かれてきた絵本作家のぶみ氏の起用については説明責任があるだろう。

まとめ

ここ最近、個人的に遭遇した「気に入らないコンテンツとの付き合い方」を考えさせられたケースを並べてみた。

実は、細々としたケースにはもっと多く遭遇している。

筆者は、作業の BGM としてニコニコ生放送や YouTube、AbemaTV を視聴することが多いのだが、しばしばコメント欄にうんざりすることがある。

というのも、出演者や番組内容に文句を言い続ける人々がやってくるからだ。文句を言い続けるだけならまだしも、それに反応した他の視聴者を煽ってケンカをし、周囲の不快度を上げるのが彼らの常套手段である。

「嫌ならブラウザバックすれば?」と思うのだが、中には番組の最後まで悪態をついていく者まで居る。その気に入らないコンテンツを叩く執念には、毎度、辟易させられる。

気に入らないなら、さっさとそのコンテンツから離れればいい。気に入らないコンテンツにダラダラと使う時間を、好きなコンテンツを楽しむ時間に変えた方が、ずっと人生は楽しいだろう。

つたない文章を読んでいただき、ありがとうございました。サポートいただけると喜びます。