神戸市長田区はっぴーの家ろっけん見学レポート
概要
はっぴーの家ろっけんとは
神戸市長田区にあるサービス付き高齢者住宅
社長の首藤さんは、介護施設を作ろうと思って初めたわけではなく、介護と子育てのダブルケアを成立するためにやりたかった。
内容
介護の必要が無い元気な方から余命幾何の方までを対象にしている。
居住のサポートだけでなく、看取り・葬儀まで行う。
訪問介護サービスを受けている。
日程:2024年8月23日(金)〜(土)
メンバー
長野県上伊那郡箕輪町で福祉関係のお仕事をしている方々+私
結果的に多様な立場から施設を分析できたので、皆さまにお声がけして良かった。道中に沢山の雑談ができたのだが、情報共有だったり、気付きだったり、日ごろの疑問点のシェアなど、沢山ディスカッションが出来たのも良かった。
施設参照リンク先
外出自由。ときどき脱出ゲーム
施設に行くと、ゆるいムードが漂っている。聞けば、食事の時間以外予定が決まっていないらしい。高齢者施設で勤務した事がある同行メンバーの話を聞くところによると、普通だとこけないように支える行動をする場面が何会があったが、何もしていなかった事が気になったらしい。
そのことについて、質問したところ。わざと支えたりしていないらしい。
自由に動いてもらう事を重視していて、実際に施設内でこけたことがあっただけでなく、縫う事もあったらしい。しかし家族からはクレームが来た事はない。家族には事前に了承いただいていている事もあるが、「ここまでスタッフがやってくれているから、しょうがいない」と思うらしい。スタッフ数名と家族のLINEグループを作成して、まめに写真付きの連絡をとって家族との関係性を作っているからクレームにならない。
外出も自由にしてもらっている。認知症の方も自由に外出できるようにしている。たまに迷子になった時も「はっぴー」は言えるので、連絡をもらい、迎に行く事で対応できる。警察に捜索頂く事もあるが、スタッフが使うコミュニケーションツール内にある「脱出ゲーム」チャンネルが動きだし、全スタッフ総出で「警察より先に探し出すぞ」と捜索活動が始まる。心当たりがあった休みのスタッフも動くこともあり、実際休みのスタッフが見つける事もあったらしい。
ランテック神戸長田支店・お祭り・Mr.パーキンソンDJ誕生
入居者にとっての「はっぴー」とは何か?を常に探求し続けている事例として2つ挙げてみる。
今まで、私は看取りの施設で勤務される方の話をお伺いする機会が何会かあった。最期を迎える方に対応される際に「その人らしく」見送りたいと願われていた。しかし、「どうしたいですか?」との質問に対して、明確な答えを教えてくれる人はなかなかいない。414カード (最期まで自分らしく、大切なものを諦めない対話カード)を使い対話を行う事で見つける方法も聞いた事がある。
はっぴーの家ろっけんの方に話を聞いていると、自分にとっての「はっぴー」とは?なんて、誰もわからないとの事だ。
確かに、今まだ高齢者ではないが、今の段階で、何が「はっぴー」なのか?明確に答えられる人はどれぐらいいるだろうか?明確に答えられるとしても、どこまで自分の価値観に基づいているのか?世間一般で言う「正しい事」を言おうとしているとは違うのか?とまで問い詰めると、かなり怪しくなってくるものである。
はっぴーのろっけんでは、入居者にとっての「はっぴー」は観察をしながら見つけるらしい。また「はっぴー」を見つけるために「きっかけ」を定常的に作る事にしている。
「きっかけ」を機に、入居者の「はっぴー」が見つかる。それをスタッフは目ざとく見つけている。
ランテック神戸長田支店
Aさんは、入居される時から、昔働いていた「ランテック」と言う企業についてずっと説明していたらしい。
「ランテック」がまだ現存する企業である事や、Aさんが勤務されていた時期に勤務されていた方がまだ在籍されている事を調べたスタッフは、Aさんを「ランテック」に連れて行く。
「ランテック」に行ったAさんは笑顔で運転席に座り、トラックや従業員の方とステキな記念写真を撮影した。
今でも、Aさんの部屋の近くには、Aさん用の「ランテック」のポスターがや、「ランテック」のロゴに手書きで「神戸長田支店」と書かれたポスターが貼られている。
「ランテック」に出てこられたAさんは、お祭りも好きだ。それを知ったスタッフが、Aさんが好きなお祭りの踊りを練習し、習得して、1階の1つの柱に紅白幕を貼ってお祭り会場に仕上げ、Aさんの前で披露したらしい。
Aさんが好きなだんじりが今年の秋に開催される。Aさんをだんじりに連れていってあげたいが、既に余命宣告時期は超えているので、そこまで命が持つことを願われていた。
入居者が長年好きだったことを入居後も続けられると良いが、たとえ手芸が好きであっても、身体能力の低下に伴い、継続が不可能である事は少なくない。
入居者のBさんはもともとカメラマンだったが、パーキンソン病が進行するにあたって、カメラマンの継続が難しくなってきた。若いスタッフの提案により、BさんにDJ才能に目覚め、はっぴーの家の施設でDJを披露する。
話には続きがあり、Bさんは、尾道の芸術祭に呼ばれ。スタッフもサポートメンバーとして同行したとのこと。しかも、サポートの旅費は社長におねだりするわけでもなく、サーターアンダギーを販売する事でねん出したらしい。
代表の首藤さんに「そこまで許される社長もすごいですね」とお伝えすると、皆さん社長が反対しないと分かっていて勝手に進める事もあるらしい。
はっぴーの家ろっけんは、看取りもされる。湯灌もして、葬式まで上げられる。どんなお葬式にするかは、入居者さん次第。家族にヒアリングをしたりして、一人一人プロデュースし、施設の2階で行われる。通夜や葬式は家族だけで行われるが、お見送りの会は、施設や関係者になるべくたくさん来てもらう。ウェディングプランナーさながら、入居者に寄り添ったオーダーメイドの葬式を企画してくれる。
マニュアル化された組織で、ここまで出来るか?と言えば否だと言える。はっぴーの家ろっけんでは、マニュアル通りに動く指示待ちの人には辛い職場と言えるらしい。逆に、一般的に指示通りに動く事を求められる会社組織に合わない人に向く職場だそうだ。
自分は「はっぴー」なのか?
はっぴーの家と同じものを作るためには、まず自分が「はっぴー」かどうか?が前提となる。社長の首藤さんは、自分の「はっぴー」のためにこの施設を始めた。「はっぴー」なスタッフでないと入居者さんを「はっぴー」にはできない。
また、自分が高齢者になり介護をされる時に備えて、自分にとっての「はっぴー」とは何か?を理解する事も大事だ。
自分を観察する事。
はっぴーの家ろっけんの職員さんが居住者さんを観察されているように、自分が何を好きかどうか?観察をする事。何をしている時に「はっぴー」や「はっぴーじゃない」と思うか?理解する事。
自分のはっぴーを見つけるためにいろんな経験をする事。
何が自分にとっての「はっぴー」なのか?は自分では気づきにくい。
人や物との接点を持つことで、「はっぴー」の引き出しが開かれる。
自分の「はっぴー」の引き出しを引き出すために、多様な人や物と出会う事で、自分の「はっぴー」を理解する。
また、自分の「はっぴー」変わっていく。今日の「はっぴー」は明日の「はっぴー」とは限らない。日々多様な物に触れながら、自分の「はっぴー」を追求し続けるのだ。
人に何が「はっぴー」か質問する事とは?
数年前に話は遡る。私がある家に長期的にお世話になる時があったのだが、その家の方Cさんに「野田あゆみはどんな食べ物が好きか?」と聞かれた事がある。
そんな問いを受けた私は遠慮していたし、本当に何でも良いと思っていたので「なんでも良い」と答えていた。しかし、Cさんはどうしても私の口から、食べたいものを聞き出したいらしく、何度も繰り返し好きな食べ物を聞いていた。
ある日、Cさんと一緒に食事をしていて気づいたのだが、Cさんは私が今食べている食べ物に対してどう思っているか?聞いてこない。スーパーで買ってきたにぎり寿司のパックを食べている時に、私が「Cさんはお寿司の具で何が好きか?」と聞く事があっても、Cさんが私に質問を返す事が無かった。
Cさんはおそらく「野田あゆみが食べたいもの」を正しく「提供する」事でCさんが私に高く評価される事がCさんにとって重要であり、私自身がどう感じるかは、そんなに興味は無かったのだ。
Cさんと話をする時にCさんの目には私は映っていたが、Cさんは私を見ているのではなかった。私がCさんを見る目の色を見てた。
もちろん、Cさんに悪気はない。それがCさんなりの最大の私へのおもてなしだったのだが、私はそれ以来怖くなってCさんと距離をとるようになってしまった。
私がもし誰かのお世話をする時に「あなたが好きな事は何ですか」と聞く事があったら、介護者としての自分の仕事を簡単に終わらせる事になっていないか?客観的に評価する必要があると思った。
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