Marillion - クラウドファンディングというやり方はこのバンドから始まった

クラウドファンディングというやり方はこのバンドから始まったとよく書かれている.


このバンドは1980年代にニュー・プログレッシブとしてイギリスでデビューしたが、最近の作品とは違って、最初の頃の作品に僕はあまり興味がわかなかった。当時のシンガーがあまりにもピーター・ハミルの歌い方とフレージングを取り入れていて、ステージではジェネシス時代のピーター・ゲイブリエルのマスクの使い方の影響が強く出ていた。1980年代では、僕は本物のピーター・ハミルといくつもレコーディングをしていた。彼はプログレッシブというイメージから脱皮したかった。当時のMarillionの2枚目を聴いて、他の人がピーター・ハミルらしい歌い方をするのを別に聴きたいと思わなかった。しかし、彼らも1960年前後に生まれている世代で、僕と同世代なので、なぜ影響を受けているかは理解できた。通じる部分はあった。


このバンドが独自の音を強く出すようになったのはシンガーが変わってサウンドもおちついてからの1995年のCD「Afraid of the Sunlight」からだと思った。このアルバムは本当に素晴らしい上に、自分の世代に強く伝わる内容になっていた。しかし、このアルバムは売れなく、EMIというメジャー・レーベルから捨てられた。アメリカ・ツアーも売れていなかったのでキャンセルになっていた。その時からファン達が自主的に彼らのために必要な予算を集めてあげるようになった。20分のプログレッシブの組曲や1時間以上で一つの物語を語るコンセプト・アルバムはポップスのチャートに入るわけがないとファンたちも分かっていた。このような音楽が存在するためには、全く別のやり方が必要だ。EMIの後に、マイナー・レーベルから3枚も90年代に出してみたが、そこでもうまく行かず、その後は前金で制作費をファンディングでファンからもらってからアルバムを作るようになった。前金を出した人たちの名前は全てアルバムに記載されていた。消費社会のレコード会社では作れない作品を直接にファンに次々と作れるようになった。スタジオも自分たちだけが使う場所を借りて、いつでもレコーディングが出来るようになった。このバンドにとっては理想的な方法だった。ファンたちの中心は僕と同世代の人たちが多いと思う。オランダなどでファンのためのコンヴェンションを開くと、世界中から集まってくる。


いつか近い内に、名盤だと思っているCD「Afraid of Sunlight」について書きます。


ここでは2018年のロンドンのRoyal Albert Hallでのライブから短い映像のリンクをつけます。20分以上の組曲のパート5。曲が始まった1分半位から小さな紙切れがホール中の空気に飛び交う。後でかたづけるのが大変だったかもしれない。曲調は一つのモチーフがキーボードで最後まで繰り返され、その下に低音ゆっくりと動いていく。ワグナーの楽劇「ラインゴールド」の前曲の作曲法と似ている。「メランコリア」や「ドッグズヴィル」を撮った映画監督Lars Von Trier もほぼ同世代だが、このワグナー風の盛り上げ方に彼の映画と共通に感じさせるものがある。それについてもまた、今度書きます。


https://www.youtube.com/watch?v=aw7AJkS-x5g


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