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駆け抜ける喜び? ペガサス飛馳人生①

どうも、うえなかです。2019年の春節に中国で公開された映画『飛馳人生』の日本版DVD発売を記念して、あれやこれや調べて、わかったことを書いておこうと思います。

ぜひお買い上げください(回し者ではありませんが)
まずは買うことが重要です

YouTubegoogle playでの配信もあるようです(有料)。

映画『飛馳人生』とは

カーレースの世界を舞台に、ぶっちぎりのカーアクションと、男たちのプライドをかけた復活のドラマ!
(映画『ペガサス/飛馳人生』公式(@PegasusMovieJP)さん/Twitterより)

ということです。確かにカーアクションは絶品、男たちのプライドも友情もよいのですが、笑えるシーンも多く、とりわけ前半は小ネタの宝庫。いくつか取り上げて激しくネタバレしていきます。その前に。

監督は韓寒(ハン ハン)

1982年上海生まれ。2000年に『三重門(日本版タイトル『上海ビート』)』で小説家デビュー。中国版ブログ「微博」ではフォロワー4500万人以上。2003年にプロレーサーとなり、サーキットとラリーで何度も年間チャンピオンを獲得。映画監督としては2014年に『後会無期(日本版タイトル『いつか、また』)』でデビュー、2017年の『乗風破浪』(日本未公開)、そしてこの『飛馳人生』が3本目となります。その他、歌手として『十八禁』というアルバムを出したりと、まあ、そんな人です。

主役は沈騰(シェン トン)

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ちょっとムロツヨシっぽいです。1979年黒龍江省チチハル生まれ。舞台俳優、映画俳優のほかバラエティーでも活躍。


彼を初めて知ったのは映画『滾蛋吧!腫瘤君』(2015年)

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日本未公開だと思うけど、これ、おすすめ。沈騰はこの中で主人公熊頓元カレ役で友情出演しています。(ダメ男です)
本人も語っている通り、これまでは「小人物」を演じていましたが、本作の主人公張馳(チャン チー)は違います。

さあ、映画の始まりです

少年の頃、買ったばかりのカラーテレビで香港・北京ラリーを見て「車はこんな風に走らせることもできるのか」と衝撃を受け、大きくなったらラリードライバーになると心に誓います。

1999年、北京で開催された世界選手権に家族に内緒で出かけ、ラリーの迫力を肌で感じ、一生情熱を捧げるべきものだと確信し、そこから努力を重ね、念願のラリードライバーとなり、5年連続国内チャンピオンに輝きます。

小人物」どころか「すごい人」だったわけです。32歳になった年に息子が生まれますが、ある事件により大会出場資格を失います。息子にすごかった自分の姿を見せたことはなく、息子からすれば父はただの屋台のチャーハン売りのオジサンで、彼が見せるレーシングスーツも「送外売的」にしか見えません。(字幕では「配達の人」、吹き替え版では「出前の人」ですが、「外売(ワイマイ)」はどちらもイメージがちょっと違います。Uber Eatsの専業版という感じでしょうか。中国人の観客は大爆笑するシーンです)

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ある事件とは

5年前、張馳は違法レースの誘いを受け、旧型のワーゲンサンタナをあてがわれて勝負をします。そのせいでラリーのライセンス運転免許も剥奪されてしまうのです。

勝負の相手を演じているのは馮紹峰(ウィリアム フォン)、韓寒監督の第1作目『後会無期』の主演男優です。特別出演です。

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資料では日本のドリフトキング役ということになってますが、映画からはそんな様子は伝わりません。(もしかして裸足で表現?)

錚々たるスポーツカーの中に「AE86トレノ」があるのはもちろん『頭文字D』へのリスペクトです。中国の街中ではいまでも「藤原とうふ店」のステッカーを貼ったいろんな車を見かけます。

プロレーサー、しかも国内総合チャンピオンであった張馳がなぜそんな勝負を受けたのか。公聴会の場で問われた張馳は、息子の戸籍(戸口)と入学の問題を解決してもらうためだと語ります。

戸籍の問題

中国では、その都市の戸籍(戸口)を持っていないと、そこでの医療や福祉などの社会保障がうけられません。就職にも進学にも、結婚やマンションの購入などにも影響があります。

入学の問題

ある学校に入るためには、その学校の所属する学区に住んでいること(そこの戸籍(戸口)があること)が必要です。そんなの当たり前だと思うかもしれませんが、中国では公立小学校から「格差」があり、「いい学校」に入れたい保護者のために、その学区内に建てられている住宅「学区房」が高値で取引されたりしています。最近日本でも公開された映画『象は静かに座っている』の中でも描かれていました。

「滅了林臻東」

現在5年連続チャンピオンである林臻東(リン ジェントン)がレース雑誌の表紙を飾っています。それを見た息子は「リン ジェントンの新しい車だ」と嬉しそうです。彼の中のヒーローなんです。(イケメンだし)
父である張馳はそれを故事成語の本(あ、よく見ると中国古典に学ぶ啓発本でした)で隠します。

父「俺が復帰してリンジェントンをぶっ潰す(滅了林臻東)」
父「そうだ、新しい成語を覚えたか?言ってみろ」
子「滅了林臻東(ミエ ラ リン ジェン トン)」
父「教えただろ、成語は全部4文字だ…まあ、たまには5文字でもいいか」
 「あっちへ行って覚えた成語を20回書け」
子「滅了林臻東…

中国では小学校(いや、それより前)から四字熟語や漢詩、文章などをたくさん覚えさせられます。

「なぜ僕の名前を“張飛”にしたの?」

クラスのみんなに笑われるという息子に父張馳は「おかしくないぞ」と答えます。

父「パパのパパは張揚というんだ」
 「とても張揚(言ってはいけないことまで言いふらす)だったからずっとひどい目にあってきた」
 「だからパパには張弛有度(締めるところは締める)人間になってほしくて張馳と名付けたんだ」
(「」は緩める、「」は速く走る。発音は一緒です。)
 「だから速く駆け続けてレーサーになり、チャンピオンになった」
 「俺はお前に同じように人生を駆け抜けて(飛馳人生)二人で”チーム飛馳”になりたくて張飛と名付けたんだ」
 「劉備が反対したのか?それとも関羽がケチつけたのか?」

このセリフ大好きです。日本語吹き替え版では、劉備関羽のネタはばっさりカット。中国語の時間当たりの意味の量の多さに改めてしびれます。(翻訳って本当に大変ですね(他人事))

仲間との再会①

長年、共に戦ってきたナビゲーターの孫宇強に会うため遊園地に出かける張馳。BGM『我是真的愛你(本当にお前を愛している)』の流れる中、緑色の恐竜に駆け寄り抱きしめます。孫宇強は5年の間、彼からの連絡を待っていたのです。

車も免許もないと聞かされた孫宇強は「5年間何してたんだ!」と絶叫マシンで叫びます。そのあとに続く回想シーンで、息子が実の子ではないことが明かされます。それでも息子として育てるために戸籍(戸口)と入学の問題は是非とも解決すべき問題だったとここでわかるわけです。

自動車学校にて

さて、運転免許を取り直すために自動車学校に孫宇強と出かけるわけですが、孫宇強役の尹正(イン ジョン)は以前張馳役の沈騰と映画『夏洛特煩悩』(日本未公開、英語題『Goodbye Mr. Loser』)で共演していました。

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二人は同級生で、恋のライバルです。ダメ男小人物)役の沈騰優等生役の尹正

ここで自動車学校の教官役として登場するのがこの映画の高校時代の担任役の田雨です。

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「俺は昔…」
「"山を越え 海を渡った”とでもいうつもりだろう」
「手の中の全てが 煙のように消え失せたんです」
「歌 歌ってんのか お前…」

そうなんです。これ、歌の歌詞なんです。もう一度教習車に乗るときにかかる挿入歌『平凡之路』です。映画『後会無期』の主題歌でした。

ライバル林臻東との出逢い

ついに運転免許とライセンスが発効して喜ぶ二人のもとに今を時めくチャンピオン林臻東が現れます。が、このシーン。

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そう、『聖闘士星矢』です。中国で大人気。映画『夏洛特煩悩』でも1992年当時の高校生が部屋で観ているシーンが映ります。今でも熱狂的なファンがいます。張馳が「ペガサスの星矢」、林臻東が「獅子座のアイオリア」。
映画のタイトルが『ペガサス』なのはここからなのか。


なぜかBGMは『スラムダンク』の主題歌。これも中国で大人気。上海のプロバスケットボールチームがこんなビデオ作ったりもしています。

それはともかく、このシーン、息子張飛くんの妄想なのです。(これ大事)
彼にとってヒーローの林臻東と、大好きなパパの対決は彼にはこう見えるってことです。


おっと、映画スタートからまだ30分しかたっていないのに、もうこんな量になってしまった。小ネタ解説いつ終わるんだろう。

すみません続きます。合言葉は…

「滅了林臻東!」



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