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短い詩

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短い詩(自作)
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#詩

詩『ゆれるもの』 2011年6月

柱時計と向き合っていた こつこつ刻む時を数えていた 数は足りるだろうか やがて時は歌い始めた 水が滴る 風が吹く 雷がなる やがて静かな海ができたと 星の鼓動が海を揺らす 揺れる潮(うしお)から心臓が生まれた 心臓は潮のなかで鼓動することを覚えたと 時は歌い終わると 大きく揺れて歪んだ 歪んだ波と波の狭間に闇ができた 闇が呼ぶ 口を大きく開けたり小さくすぼめたりして 泳がねば 泳ぎ着かねば 闇の向こうを覗かねば 闇の向こうに落ちた時 私は鼓動する心臓を抱えて 海の

同じ速さで

船団の ボスのような雲 いつか見た 飛行船と同じ速さで わたしのひらけた視界をゆく

短い詩2021080901

その窓を閉めると この風が収まるのでした 風は音を持たなくなりました すべては静かですか

短い詩2021070701七夕

風がめぐる 箱のようなこの街の隅々を 朴の花の 甘い香りが漂う今宵 さぁ お逢いなさい 天上の方々 私の街の上で

短い詩2021050102 入り口

入り口が いつも整っているとは限らないよ どうする? 入る? やめとく? どっちでもいいよ わたしは行くよ

短い詩2021050101 さやがはじけた

さやに触れたらはじけたよ 種が飛び散るの 見えなかった 行方はわからないけど 来年またここでね

短い詩2021042801 がらんどう

今日はがらんどう 深く息を吸うとわかる その空洞の大きさが 長いため息をつくとわかる その空洞がしぼむのが でも そのなにもない空間が わたしの中心なんだよね

短い詩2021042201 毛虫

風が止んだらチャンスかもね それまでは 風陰でじっとしているんだ ずっと眠っていたっていいんだ 今はまだ毛虫なんだから

短い詩2021042101 ごはんを食べよう

さぁ…ごはんを食べよう 卵をおいしく焼いて 温かいうちに食べよう 新鮮なお水を添えて 窓を開けて風を入れて ごはん食べよう

短い詩2021041902 白いひなた

影もできない 不思議なひなただった わたしはいつも ひとりぼっちだ

短い詩2021041801 白い花びら

白い花びらは 錯覚させるね わたしがまるで 心がきれいかのよう 白い花の下で 深呼吸してみて

短い詩2021041601 舞台

この冷たい板の上で 叫んだ 嘘泣きをした 勇気あるふりをした 言ってはいけないことを言った そしてわたしは老いてしまった

短い詩2021030501 種まき

明日は種まきをしよう 雨の日はよく芽生える気がするから わたしのちいさな畑が 恵みの雨で青く香りますように

短い詩2021020201 星

くわい星ゆりいも星伊達巻き星 そんな形の星希望