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短い詩

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短い詩(自作)
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『風が吹く』【短い詩】2023121601

落ち葉をすべて落としたあとに それらを運ぶ風が吹く

七月の静かな朝

七月の静かな朝 音よもどるな 静かなだけで 爽やかなのだから 晴れた空も わたしの思いも

その水溜まりの水が淀む前に

その水溜まりの水が淀む前に 蒼く高い空を深く深く写しているうちに 伝えたいことは伝えないと あっという間に 言葉は汚れてしまうんですよ。

重ねて

何かと何かが重なるときに人は特別を感じる 天体で起こることにも 人と人が出逢うことにも その時に遭遇することにも すべての偶然をくぐり抜けて わたしは生きているのかもしれない 誰かと手と手を重ねて

嘘つき

空や雲って正直だけど ときどき嘘つきだと思わない?

向いて咲く

その花はうつむいて咲くから好き あの花は天を向いて咲くから好き この花はそっぽ向いて咲くけど好き あなたがどこを向いていても わたしはあなたが好き

詩『ゆれるもの』 2011年6月

柱時計と向き合っていた こつこつ刻む時を数えていた 数は足りるだろうか やがて時は歌い始めた 水が滴る 風が吹く 雷がなる やがて静かな海ができたと 星の鼓動が海を揺らす 揺れる潮(うしお)から心臓が生まれた 心臓は潮のなかで鼓動することを覚えたと 時は歌い終わると 大きく揺れて歪んだ 歪んだ波と波の狭間に闇ができた 闇が呼ぶ 口を大きく開けたり小さくすぼめたりして 泳がねば 泳ぎ着かねば 闇の向こうを覗かねば 闇の向こうに落ちた時 私は鼓動する心臓を抱えて 海の

花って時々露骨に見える 近づきすぎて見てはいけない 何かもそう 誰かもそう でも あでやかなものに心奪われても それを否定できない

わたしはわたしを生きてゆく【短い詩】

わたしはわたしを生きている 生きてきた 生きてゆく 貫いてきたわけではなく 貫いてゆくわけでもなく わたしはわたしを生きてゆくようだ

夜が終わるとき この風は収まるのだろうか わたしは本当に眠らなければいけないのだろうか 目を閉じて風のなかに何を聴こうとしているのか そしてどれほどの人が眠れ得ずいるのか たくさんの問いを不穏な南風が連れてくる

忘れた夢

何か夢を見ていました。 明け方、夢の途中で目が覚める。 夢の内容が思い出せません。思い出せなくなってしまうのです。 確かに何かが起り、感情もともなっていたのに。 残念に思いながら起きて動き出します。 そして、忘れてしまうのです。 夢を見たことも、思い出せないことを残念に思ったことも。

土の香り

トラクターが田を掻いて起こす土の香り。 田んぼを埋め立てるために、ダンプが運んできたどこかの土の香り。 よき香が充ちる帰り道。

同じ速さで

船団の ボスのような雲 いつか見た 飛行船と同じ速さで わたしのひらけた視界をゆく

この道

わたしの好きなこの道が かつて海だったり陸だったりしていたことが なんとなく誇らしい。