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「通訳」というしごと

息子が虫歯になった。
食べる時に歯が痛いといい始めて、
食事がすすまないほど痛がる。

見た感じは虫歯ではない気がするけど…
念のため小児歯科へ。


日本でも歯医者で検診を受けたことはあったけれど、バンコクでは初めて、しかも、もし虫歯なら治療するんだよな…

海外での初めての虫歯治療に
私は迷いながらも、
できるだけ早く痛みを和らげるには
治療が必要なのだ、と覚悟を決めた。

小児歯科へ行くと案の定、
レントゲンにはしっかり虫歯が写り、
しかも神経まで到達しているので削って銀歯を被せることに。

先生から治療手順や費用などの細かい話が始まった。

最初は電話を使って
先生の話すことを電話の向こうにいる通訳さんが通訳してくれていた。

ただ、治療が始まれば電話通訳はできないため英語で言われることを私が息子に日本語で伝えることになった。

不安…

ただでさえ不安なのに。
だんだん、本当にこれでいいのか?
今ならまだ後戻りできる…
痛み止めだけもらって、
治療は後日でもいいのでは?
という選択が頭をぐるぐる

すると、後ろから誰かが治療の部屋に入ってきた。

振り返ると、よろしくおねがいします。
と、日本語で挨拶をするタイ人の日本語通訳さん。

電話通訳さんからこの通訳さんに引き継がれ、治療手順など再度説明してくれた。

とても落ち着いたトーンで
わかりやすい日本語で。

そしていよいよ治療が始まった。
通訳さんが子供に対して

大丈夫だよ
心配しないで
痛くないからね
上手だね

など、とにかく優しく落ち着いて話しかけてくれていた。

息子はパニックで暴れることなく、
泣いたり不安な表情をしたりすることはなく、
とても安心した様子で最後までやりきった。

私は横で
息子が虫歯になってしまった
自分の不甲斐なさを感じながら
大人しく治療を受ける息子への申し訳なさと
安心させてくれた通訳さんへの感謝で
胸がいっぱいになった。

無事に治療を終えて帰る道中、
通訳という仕事の素晴らしさに触れたこの感動を忘れたくない、
そして、私もいつか人に安心を与えられるような仕事をしたいと思っていた。

タイに来て、通訳さんのありがたみは事あるごとに感じていたが、
あそこまでの感動は初めてだった。

もちろん、
それだけの語学力、コミュニケーション力、経験があるからこそだと思うけれど
すごいなぁ、ありがたいなぁ、という感情だけで終わらず、自分もいつか、と思えたのは大きな発見だった。

それにしても虫歯、気をつけなくちゃ…

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