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へなちょこクリエイターAyumiの雑記④

もう今回はあらすじごっこはしない。
画像はミニチョコバナナパフェです。
愛する夫が食いたい食いたいってぐるぐる回るから作った。
どうも。妻の鑑ですこんばんは。
嘘です。お掃除嫌いなダメ主婦です。こんにちは。
面倒くさいので今日はもう本筋行きますね。
前話が気になる人は【へなちょこクリエイターAyumiの雑記③】をご参照くださいませ。

今回は長いよ!
覚悟してお付き合いください。
では。いきますね。


それから、というもの。
ほぼ毎週、わたしは「仕事のついで」にお見舞いに通いました。
ちょうどその頃出たRHYMESTERのアルバムを持ってったり、たこ焼き食べたいって言うから買ってったり、おすすめの本を持ってったりね。
だいたいそれまでも毎月会っては真夜中まで語り明かすような関係だったので、話が尽きることはなかったと思います。
彼はいつだって常に元気で、お見舞いに来る誰とでも快く、そして楽しそうに接していました。
いっそ、それが痛ましく見えてしまうほどに。

でも、何度目のお見舞いの時だったかな。そろそろ帰ろうかなって時間になった頃、ぽつりと彼が珍しく弱音めいたことを零したことがありました

「いやー、でもさー、今までだって婚活厳しかったのに、こんな体になったら誰にも相手にしてもらえないなー」

30歳もそれなりに過ぎた農家の跡取り息子となると、率直な不安だったのでしょう。
しかし。
5年も必死で想いを伝え続けながらも袖にされまくり、それでも側にいた身としてはですね。さすがにちょっとドス黒いものが胸に込み上げてですね。本当は上手に優しく慰めたかったのに、口からは
「はぁー!?普通の体でも誰にも相手にしてもらえない女はどうしたらいいですかぁー!?」
というヤバい自虐が飛び出て来て、彼をドン引きさせる事態になりました。
今思えばケガして傷ついた彼を前に本当に酷い反応をしてしまったと思うのですが、あの時は「誰にも相手にしてもらえない」の「誰にも」という全人類的比喩の中にすら自分の存在が入ることができない、という衝撃に、思わず動揺してフルスロットル自虐に走ってしまったんだと思います。
帰りは普通に泣きながら帰りました。アホですね。
今にして思えばよくこんな女を嫁にしてくれたなあ、と感謝しかないわけですが、その話はまだだいぶ先。

現代医学の力によって、彼はそれから2ヶ月も経たずに退院の運びとなりました。
しかも翌日から仕事に出たと言うからもう、何かにつけて仕事サボれる言い訳を探し始める自分になど言える言葉はありません。
ただ、お節介かも知れないという恐怖心を抱きつつも、もし彼が新たな困難にぶち当たって、少しでもわたしにそれを示してくれることがあれば、何だって手伝おうと心に決めていました。

傷口を塞ぐ使いやすいガーゼがないと聞けば思い当たる店という店を回り、見つからなければ一晩中ネットを漁る。
片手ではバッグや財布を使うのが難しくなったと聞けば、使えそうなものをひたすら探す。それでもいいものが見つからなければ、手作りできないか幾つも試作品を作ったりする。

そういう感じで頑張っていると、必ず言われるのが『弱ってる今がチャンスだもんねー!頑張れー!』ってやつです。

あれはなあ。ちょっと傷つくんだけど。
でも、自分の中にそういう打算めいたものが1%すらもなかったか?と問われれば、絶対ない!と即答できる自信はないのです。
わたしは本当にそれまでの人生、あんなにも誰かのためになりたくて、何の見返りも期待せずに必死になったことなんか、多分一度もありませんでした。
とにかく、彼に少しでも楽になって欲しくて、絶望して欲しくなくて、何を失ったところであなたの価値には少しも変わりはないんだよ、って伝えたくて、それだけで。
でも『そう思って欲しい』っていうのはわたしの願望なんだよね。だからそれはつまり、彼に笑っていて欲しい自分のための行為なんです。

そこまで突き詰めた時、もういいや、って思いました。
誰にどう思われてもいいし。自分はもう自分のためにすることが彼のためになったらこんなに最高なことはないし。
だいたいにして、面倒でうざかったら、5年もわたしの好き好きビームを涼しい顔で避け続けてきた男が黙ってるわけないのです。
本当に本当にダメだったら、きっといつもと同じ涼しげな語り口で『いやーほんとごめんねー。ほんと申し訳ないんだけど無理だわーばいばい』って言ってくれるに違いないのです。

そんな風に開き直ってからは、かなり気楽に居られるようになりました。
何か欲しいものがあると聞けば一緒に買い物に行き、前と同じように真夜中まで話し込んだり、公共機関に出さなきゃいけない書類や手続きを手伝ったり。

そして退院から4ヶ月目でしたかね。
いつものようにわたしたちは行きつけのお店に行きました。
ご飯食べながら、次々変わる話題も一緒に食べるみたいにして楽しんだあと、ホットチャイを飲んでました。窓の外は雪でした。

『しかしマジでほんと最近、彼女作らんといかんな、って思うわ』

どんな流れだったか忘れたけれど、彼がそんな感じのことを言い出したのです。

まぁ。
まぁな。
そうだろうよ。
生活の励みになるような可愛い彼女な。
わたしみたいな声も態度もデカい歳上じゃなくて。
おのれ好みの小さくて可愛い若い子な。
そうだろう。そうだろうとも。

『探せばあなたなら、すぐ見つかるよきっと』

多分そんな風なことを言ったんだと思います。
彼は間髪入れずに『絶対無理だって』と自嘲めいた口調で言いました。

何だかもう、バカみたいだなあ、と。
心からそう思ったことをハッキリ覚えています。
だって、だいぶいい歳のおじさんおばさんがさ。2人で頭寄せ合ってお互いの家庭的恋愛的需要のなさを嘆き合ってるわけですよ。
しかもわたしに至っては誰よりもあなたが好きなんだよ、ってずーっと前から言ってんです。バカじゃん。

そう思ったらもう何もかもどうでもよくなっちゃって、まぁほぼ無意識に『もうさあ、諦めて、わたしにしとけばいいじゃん』って口から出てました。
出たあと、自分でびっくりして『はぁ!?』ってなるくらい無意識でした。

チャイを飲みかけていた彼は、漫画みたいにドゥフッ!! ってむせたあと、小さい声で『そう来たか』と言いました。

どんくらい沈黙がありましたかね。
わたしはもう絶対口にすることはあるまいとおもってたことをつるっと口から出してしまったので、内心大慌てです。
やべーどうしよまじこれじゃ完全に打算でいっしょけんめ頑張ってたってことになるじゃん絶対そう思われるじゃんてかまだそれ言っちゃうのかわたしさすがにもうここまで来たら気持ち悪すぎん?ヤバすぎん?怖すぎん?

『よし。じゃあ付き合っちゃうかー』

って、彼が言った時には、逆にまた『はぁ!?』ってなるというカオスでした。

半べそかきましたね。
あのあのあのあ、え、あ、本気で言ってるの?わ  わたし、もしかしたら、つまらない自分の日常をあなたで埋めようとしてるだけかも知れない、いや違うよ、そうじゃないつもりだけど、そうじゃない自信がないっていうか解んないから何かほんとわたしなんかでいいのか不安って言うかあのあのあの

あの時の自分を今俯瞰して見ると『うぜえ!!』って横っ面グーパンしたくなるような体たらくですが、まあ5年も追いかけてた男がいきなり軽やかにオッケー出してきたので脳がバグっても仕方ないと思って頂きたい。

そんなの、おれだって一緒じゃん?って申し訳なさそうに言う彼の顔を見た時、やっと実感がこみ上げました。

『30も過ぎた大人同士がさ、1個の打算もない付き合いなんて、あると思う?てか、あってもよくね?』

言われたと同時に、それまでずっと自分の心に薄く積もり続けていた不安とか、罪悪感みたいな変な感情とか、そういうのがぜーんぶ飛んでいきました。

そうなんだよね。
わたしたちは、生活も、社会とのしがらみも、自分にかかる全ての責任として1人でギチギチに背負った大人なのです。何の打算もなく感情に任せて誰かと付き合うなんてこと、そういえば何時からかしていないし、できなかったのです。

『…おれの方が、どう考えても酷いんじゃん?』

言われたけど、もう打算オッケー!2人が良ければ別によーし!ってなってたので、全然嫌な気はしませんでした。
むしろ、打算的に考えた結果として彼がわたしを選んでくれたのであれば、それほどHAPPYなことはあるまい、と思えた。

やっと想いが実ったなーって言ったら、彼には『あなたの告白は本気か冗談か常に解らなかった!』と怒られました。
まぁ相手にしてもらえなかったらすぐ諦めて遊び歩いたりしてたしな。
そういう不誠実さは、多分本当に色んな人を傷つけ、そして自分をも傷つけてたのだと思います。
振り向いてもらえない5年間は、だから自業自得だったんだろうな。
これからはもう、そういう生き方はしたくないです。

まぁ、そんなこんなで、とにかく。
手を繋いで歩いた雪の駐車場の景色を、多分わたしは一生忘れることはないでしょう。

そこから10か月。
本当にもうここでは書けないくらい自分的には嘘みたいに純粋な、中学生みたいな恋愛をしたなーと思います。もったいないから教えてあげないけどね。ふふ。
彼は『なにゆえそれほどの大ケガを負ってまで何も変わらず元気で居られるのか、研究して論文を書きたいから取材させてくれ』と看護師さんに言われるほど、ほぼずーっと変わりませんでした。
本当に強くて優しい人なんだろうと思います。
今でもまだ彼のケガのことを知らない旧知の知人と再会する時、彼が気にするのは『自分がどう見られるか』よりも『どうすれば相手がなるべくショックを受けないか』なのです。

まあ、とにかく色んなことがあったけど、結婚しました。
わたしはそれまでの人生、20年近くもずーーーーっとデスクワークの人でしたが、彼と一緒に農家をやる覚悟を決めて、持ち家も仕事も何もかも捨てて嫁ぎました。
もちろん楽しいことばっかじゃなくて、嫌なこともあったけど、そんなことは覚えてても仕方ないので割愛しますね。
基本的にはデスクワークながらも若い頃は空手のチャンピオンだったりバドミントンやったり卓球やったりの体育会系だったので、農家の仕事にも比較的早く順応したんじゃないかと思います。
彼と一緒にいられることの方が何物にも変えがたい幸せなので、キツイ仕事は『よし!これを筋トレメニューに仕立ててみよう!』つってやりました。
その後、環境もちょっと色々変わったけど、わたしたちの関係性はびっくりするほど殆んど何も変わらず、楽しくアホなことばかり言って、笑いながら過ごす日々です。

こんな風にして伴侶になった彼が、どうも仮想通貨?とやらをやっているらしい、と薄々感づいたのは、確か結婚して一年後くらいのことでした。

次回からは、今度こそ少しNFTの話に触れられるような内容でお届けしたいと思います。
ここまで、わたしたち夫婦の日常の始まりにお付き合いくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました。
長かったでしょう。お疲れ様でした。

ラストに、彼に頼まれて描いたアイコン用画像を貼っときますね。愛のカタマリです。

◇ゴキゲンで踊る旦那氏近影◇

それでは、また次回。今度こそNFTの話ができますように。










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