パランパルミルをどうしてもやりたい理由
さて、ここまでパランパルミルをウィーズの事業にするまでのあゆみを書いてきていますが、まだ途中です。
こうして、パランパルミルを事業化にチャレンジをすることになるわけですが、この間に、大きな出来事がありました。
それは2023年の7月のこと。
ICC登壇準備のための面談やワークショップ、社会起業塾の予科プログラムがはじまるという時期でした。
ウィーズで関わっていた若者が
自殺で亡くなったのです。
亡くなっているのが見つかる直前の夜中に私は彼女とLINEでやりとりをしています。
はじめは「最近いろんな人と話す機会が増えて楽しい」というポジティブなやりとりだったのですが、その日の夜中(0時半ごろ)には「友達のお父さんが自殺未遂をしてしまったから、今日はその子に寄り添います」という話があり、午前2時ごろに「解決しました」という連絡が来て、それが最後になってしまいました。
ポジティブな気持ちからネガティブな気持ちへの移行が早かったことが引き金になったのかもしれないし、お友達との間で何かあったのかもしれない。もしかしたら、お友達の話ではなくて本人の話をしていたのかもしれない。
もう、本当のところはわかりませんが、なにせ私は、本人に「死」の選択肢が浮かんだその時に、一緒にいてやれなかったのです。
このことは、当然ウィーズの中でも大きな衝撃でした。
コアメンバーにはすぐに電話をし、その事実をひとりひとりに伝えました。
関わっていたスタッフにはできるだけ対面で伝えました。
私はとにかく今近くにいるメンバーの心が守られるように祈ることしかできず、ショックや悲しみをどうにか抑えるようにして、メンバーのケアについて心理士に相談したり、対話をしたりしていました。
実際のところ、あのとき
「今すぐ来て」と言われても、行けなかったと思います。
彼女も「ずっと一緒にいてほしい」と思っても、私に言えなかったと思います。
LINEをしてきてくれたのが精いっぱいだったのかもしれません。
そんな状況を振り返れば振り返るたびに、何が支援者だ、と自分のことをとにかく責めました。
ウィーズに繋がった命でさえ、守ることができなかった。
大事な仲間たちに、辛い思いをさせてしまった。
私がこの活動をはじめなければ、こんなことにはならなかったのに・・・・と。
それでも、ICCや社会起業塾という未来を考える場所があったのは、私にとっては救いでした。
そして、ここから前を向けたのは、
ウィーズの仲間のおかげでした。
辛い思いをしたコアメンバーの一人が
「どうやったら、防げたんだろうねえ」とつぶやきました。
私は、ハッとしました。
そうか、私たちはどうしたらこういったことを2度と起こさないようにできるのか、そのことをしっかり考えて「ひずみの犠牲」をゼロにすることに繋げないといけない・・・・と。
他のメンバーも同様に、辛い気持ちを抱えながらも前を向こうとしていました。
極論、彼女の自死を防ぐには、毎日24時間、横にいるしかなかったように思います。
突然ふっと孤独感にさいなまれる「その時」は一瞬です。
芸能人の自殺の報道を見ていてもそうですよね。
応援してくれる人もいるし、幸せそうに見えることもあるし、公私ともに順調に進んでいるように見えることもあります。
それでも、突然選択される「死」の道。
だから、パランパルミルだけをもって、すべての対処ができるようになるとは思いません。
ですが、やっぱりどう考えても「もっと前から」、ひずみの犠牲が起こらないようにしていくしかないと思うのです。
パランパルミルは、子どもたちが自分でアクセスできる複数の人との1:1の関わりやありのままの対話の場をもてることによって、いろんな価値観や愛のかたち、人生のかたちに触れていきます。
その過程では、子どもたちにたくさんの心の栄養が与えられていきます。
もちろん、種まかれたものが良いもので、良い栄養を与え続けられたのであれば、強くたくましく美しい花が咲くでしょう。
種まかれたものにひずみがあれば、ちょっと良い栄養が与えられたところで、そのひずみは簡単には消えないでしょう。
もしかしたら芽すらも出さずに、しばらく心に眠ったまま、ある時突然、ひずみを抱えたまま出芽するかもしれません。
心の奥底に種まかれたものの表出を、待っているだけではダメなのだと思います。
さまざまな歴史や人間関係を経て、この時代に生まれ、今を生きる私たちは、ひずみがないことの方が珍しいかもしれません。
しかしそれは目に見えず、数字でも図ることもできないでしょう。実際にある負の連鎖や、気づかないうちに受ける傷は、子ども本人ですらわからないことが多いからです。
私たちは良い種を蒔く人を増やしていかなければいけないし、良い栄養を与え続ける場所でなければなりません。
それは、ウィーズの意味が「雑草」であることにもつながります。
たとえ誰かの目に重要視されなかったとしても、良い種は根を張り、自然に受けられる恵みを自分のものとして、ちょっと踏まれたくらいではへこたれない、強い力を持ち続けます。
パランパルミルは「予防」の可能性を秘めている事業です。
だからこそ、今、どうしてもやりたい気持ちを強めています。
彼女はウィーズのことが大好きだと言ってくれていました。
きっと私に連絡をしてくれたあの日も、何かがあって、ウィーズのことを、私たちのことを思い出してくれた瞬間があったのは間違いないでしょう。
力不足だったけれども、それでもまだ、私たちにできることをやりたいです。
もう2度と、ひずみの犠牲を起こさないために。
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