昼飯を食いながら『有言実行三姉妹シュシュトリアン』第7話を観た。
1993年に放送された特撮ドラマ『有言実行三姉妹シュシュトリアン』第7話「誰かがあなたを愛してる」を東映が公式でYouTubeに流してゐるので、昼飯を食ひながら見た。
『有言実行三姉妹シュシュトリアン』は、1993年の酉年、一年間限定で妖怪退治を請け負ふことになつた三姉妹の物語だ。第7話「誰かがあなたを愛してる」は長女・雪子にパラダイス星の美男子が恋をし、婚約を求めて執着する話だ。
この中で、高一の雪子が、学校の登校時間ギリギリに着いたのを、教師が校門で締め出さうとするシーンがある。
放送3年前の1990年には神戸高塚高校校門圧死事件が起こつてゐる。受験戦争の末期、遅刻を内申書に反映させるため、登校時間に合はせた校門の強制閉鎖が推進されてゐた。その中で、とある女子高生が閉まる校門に挟まれて頭蓋骨を砕かれて死んだのだ。裁判にもなり、校門の強制閉鎖はやがてなくなつた。
シュシュトリアンは、まさにさうした過渡的時代の作品なのだ。93年にはまだ校門を無理やり閉ざしてゐた。
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ところで話の大筋である、パラダイス星の美男子からの求婚騒動は、中々婚約にうなづかない長女に逆ギレした王子が、長女を殺さうとすることで、シュシュトリアンの出動となる。王子は妖怪ではないが、長女の危機に姉妹が立ち上がつたのである。
パラダイス星の王子のふるまひは、作中ではこの言葉は出てきてゐないが、今でいふストーカーのそれである。ストーカーといふ言葉が日本で決定的に定着するのには、1999年の桶川ストーカー事件を待たねばならないだらうが、王子のふるまひが悪事として描かれてゐるあたり、概念としては萌芽し、浸透してゐたのだらう。
遅刻者の校門締め出しとストーカー。90年代の最初と最後を飾る二つのトピックがぼんやりと現れてゐるこの話を面白いと思つた。時代とは過渡的なものだといふのがよく分かつた。
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ちなみに、シュシュトリアンで三女の花子を演じた広瀬仁美は翌1994年に『忍者戦隊カクレンジャー』でニンジャホワイト・鶴姫を演じた。これの第35話「おしおき三姉妹」では、シュシュトリアンの長女と次女だつた田中規子と石橋桂が鶴姫の旧友として登場し、「おしおきセーラーシスターズ」と名乗つた。
シュシュトリアンとカクレンジャーの放送期間は、『美少女戦士セーラームーン』と被つてゐた。だからこれは、カクレンジャーにシュシュトリアンとセーラームーンが紛れこんでゐるのだ。
かういふ背景が分からないと、カクレンジャーに突如1話だけ現れてカクレンジャーに加勢する三姉妹がいつたいなんなのか分かるまい。僕も小学校のころ、ビデオで見て分からなかつた。
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と、書いて思ひ出したけれど、さうだ、僕は2001年ごろ、近所のレンタルビデオ屋で、カクレンジャーのVHSを全巻借りて観たのだ。個人経営の店だつた。大手チェーン店がまだ田舎にはそんなになかつた頃のおとぎ話だ。
おかげで僕は、5歳も離れてゐる田中〇一郎と一緒にカラオケでカクレンジャーの主題歌を歌へるのである。
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