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2023年良かった本


公正を乗りこなす

2023年みんなに読んでほしい本大賞!!

公正、正義といった、重要なんだけどうまく使うことが難しい言葉について、使い方を考える本。
かなりわかりやすく「公正や正義ってつまりどういうことなの?」ということを説明してくれます。

企業や政治家の不正、性的差別、納得のいかないニュースに裁判に事件に人間関係。
そういった納得のいかないもの、正しくないと思うようなものを、”どう正しくないのか”を語るための方法があり、反対に「そもそも正しさっていうのは何なのか?」という質問に答えるための土台があります。

こういう”正しさ”というものに、唯一正解があるわけではありません。
それでも、指針があるかどうかはすごく大事。どっちに進めばいいか、なんとなくでもわかってたら、大迷子にはならないですからね。

SNSとか見ていてモヤッとするようなニュース、論争っていっぱいあるじゃないですか。
そういうモヤ…に触れたときに、「言葉が正しく使われていない」「この理屈には賛同できない」というふうに切り分けられると、いちいちモヤ…としなくてよくなります。
そのためのケーススタディとしても、よい本です。。

ちょっと固い部分に触れてみると、ロールズ、ローティといった哲学者を参照しつつ、
善(人それぞれが何をよいと思うか)
正義(みんなの善を調整共存させるような仕組みや制度)
公正(みんなで正義を達成するための場)
のように概念を整理していきます。
そうすると、議論されているのが善なのか公正なのか、どうやって公正を目指せばいいのか…ということが考えられるようになる。やったぜ。

出てくる文字が固そうなんですが、結構フレンドリーに書かれていて、学校の授業(大学の講義くらいかな…)くらいの温度感で読めます。

あと「日本の道徳教育は人のお気持ちをどうにかしようとするからダメ」という趣旨の部分があって、めっちゃわかる~~~~!!!!となりました。わかる。気持ちの話されてもな。

これが面白かったら”バザールとクラブ”もよいです。

謝罪論

”謝罪”とは何か?を考察する本。

この本では、

  • 謝罪にはどういう種類がある?

  • 謝罪の目的は何?

  • 謝罪にはどういう特徴がある?

  • で、結局謝罪とは何?

という流れで謝罪について考える(プロセスを追体験することが)できる。

この本は冒頭で「謝ることを、子どもにどう教える?」と入るんですよね。
実際、「ごめんなさい」を教えるために困っている親御さんってたくさんいると思いますし、何なら大人であっても、しっかり身についているわけではないってことがよくあると思います。
「ごめんなさい」が言えたらそれでいいわけでもないし、かといって反省って強要するものではないですよね。
なので、こういう本で、理論武装というか、思想武装というか、説明をするための準備をしておきたいんですよね。

あと、哲学って”検討しようとする対象をひととおり言語化する”というプロセスがよくある(と個人的に思っている)んですが、この本だとそれがわかりやすいので、哲学に興味があるとか、哲学の入門書を読み終えたのでもうちょっと具体的なものが読みたい、というときにも良いです。

ナチスは「良いこと」もしたのか?

してない。

「ナチの非道は許せないとしても、アウトバーン開発や源泉徴収の発明といった政策は良い点として評価すべき」といった言説に対して、ナチ研究の専門家が丁寧に反論する本。

Webで見かける「ナチの先進的だったところ!」というのは、前政権がすでにやっていたり、効果がなかったり、全然良くはなかったんだなということがわかります。
ナチ、良いことしてないね…。

ナチの話をするだけではなく、歴史から何を学ぶか、歴史に基づいてどう考えるか、といった枠組みの話もしてくれていて、教養書としてもよい。

Xで誤解に基づくナチ擁護をしている人がいると、この本の著者が「してません」と指摘をしている。
草の根活動、大事。

政策立案の技法

タイトルの通り、政策を作るための技法をまとめたもの。

”政策立案”とあることで読者を絞ってしまっている印象があるけど、中身はいろいろ応用がきくものなので広く読まれてほしい本。普通に仕事にも役に立つというか、ここに書かれたこと全部できたらほぼ最強です。

あと地方議員とか政治家とか、実際に政策作る人には教養として読んでほしい。教科書的な内容。

1階革命+集まる場所が必要だ

社会のなかに空間を作るコンセプトの本たち。

建物の1階のデザインに特化した会社、株式会社グランドレベルの代表による、これまでの実績や考え方をまとめた本。

ビルの1階が街に向けて開かれることで、ビルと街が繋がって、パブリックスペースが広がって、住民同士のコミュニケーションが強くなって…と、それだけ聞くと机上の空論ぽいコンセプトなんだけど、実例込みで語られているのですごい。

喫茶ランドリーの話とか、読むと街に希望が持てるようになります。建築家や自治体職員に配りたい本。

こっちはもう少し広い範囲、かつ研究寄りの内容。

広域災害について調べてみると、街によって災害への耐性が異なっていたので、何が原因なんだろう…と調べていくと、街にみんなが集まる公共スペースがあることが大事だった!という話。

図書館、公演、公民館など、”集まる場所”があることで、街が実際に強く、安全になるらしい。これもコンセプトだけ聞くとエ~~??という感じだけど、ちゃんと実例を示してくれる。

こういう”公共の場所が大事”という意識があると、なんとなく街のことを好きになりやすくなれるのでGood。

政治家や自治体職員に配りたい本。

批評の教室

”批評”ってつまり何?ということをわかりやすくまとめた本。

noteというプラットフォームや、生成AIといったツールが増えたことで、コンテンツの供給が増えています。それを受けて、これからは消費者による批評の価値がますます高まると思うんですよね。

この作品のどういうところが良くて、他の作品とどう関わっていて、独自性がどこにあって.…ということをしっかり語れる人、貴重ですよね。
そしてそれは他の読者の助けにもなるし、著者にとっても嬉しいことです。

そういう意味で、この本は非常にわかりやすく、批評ってなんぞや、どういうことをしたらいいんや、ということを教えてくれるのでグッド。
ぜひクリエイティブなコンシューマーを目指していきましょう。

以下小説

プロジェクト・ヘイル・メアリー

何も書けることがないけど絶対に面白いので頼むから読んで...

『火星の人』(映画:オデッセイの原作)のアンディ・ウィアーによる最新作。
突然謎の閉鎖空間で目覚めた主人公は、周囲の状況を調べるうちにとんでもない事態の渦中にいることに気付き―――!!
本当にもうこれくらいしか書きたくない。何もネタバレせずに本編を読んで驚いてください。
上下巻あるけど、ある程度文章慣れしてたら意外とさっくり読めてしまう。それくらい展開にパワーがある。

徐々に明かされる謎と、次々に来る危機と、それを支える知性とユーモア。もう~~~~火星の人の面白さを完全にブラッシュアップして一回り良くなったなと感じます~~~~。困るよそんなことされたら~~~~。

夏への扉

泣くほど爽やかなド名作SF。

ハインライン読みたい!という時期があって、月は無慈悲な夜の女王と夏への扉を読んでました。こっちのほうが好き。

いやもうイントロの爽やかさだけでもう100点。100点つけてから読み始めるので読中も読後も最高の気分。SFなんだけど、サイエンスな部分に引っ張られて頭でっかちになることなく、キャラクターと物語の魅力でしっかり読ませてくる。

猫好きな人は絶対に読んでほしい。

ここから漫画

ダイヤモンドの功罪

才能がありすぎる子どもを中心にめちゃくちゃになる野球漫画。

主人公の眩しすぎる才能によって振り回される人。敵対する人。静かに狂う人。
圧倒的な才能の前では誰も冷静ではいられないんじゃ…
主人公が天才ってタイプの漫画ってよくあるけど、行き過ぎた才能によって周りのバランスが崩れてゆくのが絶妙に苦しくて面白い。

とはいいつつも主人公が見せる圧倒的なパフォーマンスによる爽快感もある。
いやでもこの爽快感が周りをダメにしているんでしょ~~~~!?!?!?と読者も一緒にめちゃくちゃになれて最高!!!!
情緒めちゃくちゃにな~~~~れ♪♪

最新4巻ですぐ追いつけるので読みましょう。

違国日記

終わってしまった......…違国日記が.........…

違国日記は、まとめるとすれば、”言葉を通じて人と関わること”という漫画であったと思います。
人との関わりのもどかしさ、ままならなさ、美しさ、気高さみたいなものが高密度に詰まっている。

これから人生を通じて繰り返し読み返す漫画のひとつです。
ハァ~~~~~~~~~~無限に続いてほしい漫画が終わってしまった。
いや他にも好きな作品が終わってはいるんですけど、それらは終着点がわかりやすく見えているので良いんですよ。違国日記は物語がまだ続いていくじゃないですか。あの世界は明らかに連続していて、物語が持続していますよね。
それが終わってしまうのは、『まだ物語が続くことがわかっているのにそれを見られない』という感じがして、ここにない未来に思いを馳せたくなります。

ダンジョン飯

アニメ先行上映も大変良かった。

最後まで”食”を真ん中に置きながら、しっかり満足できるエンディングを描いてくれて非常に嬉しい。後日談が手厚いストーリー、いいよね.…。

ファリンがかわいいのでもっと動いているところを見たかった気持ちがあります。

篠崎くんのメンテ事情

こちらはまだ完結まで読めていないけど好きな作品。あれ?完結したっけ?したよね?

ちょうどいい日常感と非日常感が好き。
ハザクラさんかわいい。ハザクラさんいいっすよね~~~…背伸びする子どもであり、かつ有力な魔法使いでもある。能力の高さと脆さのある人間性と、それを支える倉木との関係と。アンバランスなようでまとまりがあり、その不安定さをずっと見ていたいですね。
キャラクターは歪んでいるほうが魅力があるんじゃ…

隣のお姉さんが好き

終わってしまった..........…心愛さん......…ッ!!

同じ著者では『好きな子が眼鏡を忘れた』のほうが有名なのかな?

ミステリアスでめんどくさい隣のお姉さんに恋する少年の話。
ラブコメではあるんだけど、心理描写の引き算具合がいいですね。わからなくてモヤモヤするのが読者を物語に惹きつけるんじゃ…。

心愛さんかわいいよね.......…
これも後日談があって嬉しいんだけどもっとこう.......…ベタ甘なところも見たい.........…売れたらすごい数の同人誌出そう。いや無理か.…本編に勝てないか...........…。

ご覧いただきありがとうございます! 知りたい内容などあればご連絡くださいね。