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テート美術館展 光 に行ったらデザイン史への理解も深まった話

テート美術館展に行ってきました!最初に言いますがとてもとてもおすすめです。美術・デザイン史の流れが「光」という視覚に欠かせないテーマでとてもわかりやすくまとめられています。

アートを見に行ったつもりでしたが、思いの外デザインへの言及も多く学びが多かったので感想をまとめておきます。
また、引用した画像は全て展示公式ホームページで公開されているものです。

⚠️ネタバレされたくない人は展示見てから読んでね!

人の探究心すごい

本展はテート美術館の作品の中から、光というテーマで作品を集めたものになります。おおまかに光をどう捉えたか、なんとなく時系列的に追うことができます。

まずは光というイメージを抽象的、精神的に捉えていた時代。
キリスト教とも深く結びつき、喜怒や比喩を光を用いて表しています。

そして大自然の中にある光や、室内の光を人々の心と共に捉えようとした時代に移ります。
暖色と寒色、光と闇の対比による大気の揺れ、美しすぎる

次に、写真技術の進化により光の効果を「扱う」ことができるようになります。展示には感光紙を使ったフォトグラムがおかれているのですが、物を素材として扱い全体の構図、表現を作る試みが見事です。

バウハウス教師陣をはじめとしたアーティストたちによって光と色の関係の考察と論理化が進みます。

そして最後に、インスタレーションのような形で光そのものを扱った表現が生まれていきます。技術の発展も助けて、光自体の操作がどのような視覚表現が生まれるのか、今も実験を続けているような印象です。

色彩理論も、写真も何もなかった頃、人類がただ感じていた「光」という存在をここまで長い時間をかけて表現、構造化、再構成を進めてきた途方もない足跡を見ることができ、人の表現面での進化を感じることができました…

バウハウスの功績の再確認ができた

一連の足跡の中で私が一番感動したのは、やはりバウハウスの進めた色彩論の確立です。キャプションを読むと、教師の一人、ヨーゼフアルバースは「色彩は見る人の知覚に関わる物なので、陰影をつけずに純粋な線を使った構成を指導した」とあります。

それまで「表現力」という言葉で括られていた視覚表現を、多くの人に広く見やすいようにと理論化したバウハウスの功績は、まさにデザインですよね。視覚領域におけるデザインの誕生を目の当たりにした気持ちです。

展示にはほかにも、教師陣により光や映り込み、影の図解化などがあり圧巻でした。このエリアのためだけでも行く価値があります。

モホリ=ナジ (大学ではモホリと習った気がしますが本展ではモホイでした) のK Vllの実物が見られたのも感動でした。紙面上でしか見たことがなかったので嬉しいです。

そのほか雑多に感想

ターナーアクリル絵の具の由来を知った

私は大学をデザイン史で出たくせに本当に美術に疎く、本展を見るまでウィリアム・ターナーという有名らしい画家を知りませんでした。が、「ターナー」という響きには聞き覚えがあります。

そう、美大受験に使われる絵の具の中で最もメジャーなターナーアクリルガッシュです。(入学後に構想した色をターナーアクリルガッシュの色名で意思疎通する、なんてこともよくありました。)

調べてみると創業者がファンだったことでつけられたらしく、点と点が繋がった気持ちです。

ウィリアム・ターナーの実物の絵は本当に素晴らしく、対比表現に吸い込まれそうな印象で、このような深みのある色彩表現が生まれることを望んだのかな…など思いを馳せました。

技術的革新と表現の密接さ

本展の流れの中で、2点ほど技術的革新とともに生まれた表現がありました。
一つは写真表現。

もう一つは光自体を用いた表現です。

それぞれどの作品も面白い試みで、新しい技術をどう活かしてやろう、という前のめりな姿勢を感じます。
技術的な革新によって生まれる、実験的な表現はどれも見応えがあり、今後どのような技術が生まれて生かされていくのかな…と思うなどしました。

ジュリアンオピーの描く「光」

最後に個人的な好みになりますが、ジュリアンオピーの作品はやはり素敵でした…本展ではイメージされやすい人物の抽象的な絵ではなく、色面的表現を生かした風景画を展示されました。

この絵画、会場で実物をよくみると、グラデーション表現ではなく色面にしっかりと分かれています。浮世絵からも着想を得て制作されたそうです。

デジタルガイドの解説の中で、「オピーは『例えば1日の中行ったことを思い出す時は、写真の連続であり高解像度の写真ではない。』と言った」とありました。
低解像度の平面から奥行きを見出す、人の脳の構造さえとらえているような表現、素敵でした…


以上感想でした!素晴らしい展示だったので、実物を見に行ってみてはいかがでしょうか!


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