すいかの話
2003年放送のドラマ『すいか』
人生に行き詰まっている30代半ばの信用金庫職員が、同僚の3億円横領事件をきっかけに家を出て、賄い付き下宿のハピネス三茶で暮らす話。
一話完結の全一〇話。
女性四人が下宿で暮らす日常のそれぞれの一日が一話ずつの内容になっている。
このドラマの魅力をメモする。
まず、『キャラクター』がひとりひとり粒立っていて全員愛おしい。全員。
主人公の信用金庫職員の基子:小林聡美
売れない漫画家の絆:ともさかりえ
大学教授の崎谷:浅丘ルリ子
大学生の大家ゆか:市川実日子
基子の同僚で横領事件をおこす馬場ちゃん:小泉今日子
犯人を追う刑事:片桐はいり
お気に入りの人物は浅丘ルリ子さん演じる教授。
他の人物よりも人生経験を積んでいるからこそ出てくる言葉が響く。
上品で芯があって、お茶目で可愛らしくて大好き。
そして最大の魅力は、『セリフ』にある。名言の宝庫。
みんな何かしら埋めて生きているのよ。安心して忘れなさい。
私が覚えていてあげるから。
20年先でも今でも同じじゃないかしら。自分で責任をとるような生き方をしないと納得のいく人生なんて送れないと思うのよ
人生何が起こるかわからないのよ。(突然停電)
ね?一寸先は闇っていうでしょ?何が起こるかわからないから面白いんじゃないの
人は正体がわかっているものには興味を持たない。
でもね、わからないものには目を凝らすでしょ
でも、終わるのも楽しいかも、と私は思います。やっとアイスのはずれが出てきたときの、あのホッとした感じ。やっと終わったあという開放感。
私はそんな風に一生を終えたいです。
小ネタを挟んだ脚本の構成も私は大好きだった。
一話目で二階の床が抜け、その穴が全話通してちょっとした演出のポイントになっていたりする。
教授が下宿のハピネス三茶と書かれたスリッパで大学に行ったり、
基子が箸入れに白米をぎゅうぎゅうに詰めて満足したり、
ケーキの病院、すいかのお墓、ペディキュア、梅干しの種、熊のぬいぐるみの目・・・
当たり前だがどれも意味があり、別の回で違う意味として登場することもある。
ネタバレになってしまうが
最終回でゆかが基子におつかいのメモを手渡すシーン。
そのシーンでは、急ぐ基子の邪魔になっているだけだが、
馬場ちゃんとの再会シーンで、外国に逃げる飛行機の切符か、買い物のメモを選ばせる。
基子はここでメモを選び、今までの生活を選ぶ「切符」としての役割を担う。
そして別れ際に馬場ちゃんにすき焼きの買い物メモを書いて渡す。
「無くさないでね」「うん。これは私が日本に帰ってくる切符だもんね」
と、三段活用している。素晴らしすぎてめちゃめちゃ感動した。
一話目を見た日から、「あ、これは丁寧に観たいドラマだ」と思って
一日一話ずつ見てきた。見終わって二日が経ったが、余韻がすごい。
大学の図書館の、電動書庫のあの棚の奥にある「すいか」シナリオ集。
目にはしていたけど気には留めていなかった。
だがいま喉から手が出るほど欲しい。あのシナリオを読みたい。
なんかすごいな、って感動する作品に出会うたびに
「・・・うわあああああ」って思うようになってきた。
「うわあああああ!!」じゃないんです。これは伝わらなくていいです。
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