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狂犬病予防法(昭和25年成立時)/ 附則

今のではなく、昭和25年に出来た時の狂犬病予防法を読み続けています。

法律の最後には「附則」というものがあります。
公布後いつ施行される、他の法律がこの法律の成立によってどう変わるかなどが書かれています。



(※條を条に直したり、当時の文字と違う書き方をしています)

附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 昭和二十五年における第四条に規定する犬の登録及び第五条に規定する予防注射は、同年九月三十日までにこれを行うように厚生省令をもつて定めなければならない。

3 家畜伝染病予防法の一部を次のように改正する。
  第一条第一項中「犬、」を削る。
  第四条第一項第一号中「牛疫、牛肺疫又ハ狂犬病」を「牛疫又ハ牛肺疫」に改め、同条第二項を削る。
  第五条第一項第一号中「豚ノパラチフス、」の次に「狂犬病、」を加える。
  第十七条を次のように改める。
 第十七条 削除
  第二十三条第三第五号を削り、第六号を第五号とする。
  第二十四条第一項第一号但書中「犬及」を削る。

4 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

国立公文書館デジタルアーカイブ 狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号


概要

1 は公布日と施行日の関係(公布の日から施行)当時はよくありましたね。
4 は経過措置、これもお決まりですね。
2と3を少し読んでみます

2 昭和二十五年における第四条に規定する犬の登録及び第五条に規定する予防注射は、同年九月三十日までにこれを行うように厚生省令をもつて定めなければならない。

さらっと書いてありますが、私は非現実的と感じたことが書かれています。
(前提)この法律は昭和25年8月26日に公布・施行
ここに書かれた厚生省令(狂犬病予防法施行規則)が公布・施行されたのは同年9月22日。
そこに、犬の登録と予防注射を九月三十日までにしなければならない、と書いてあります。

法律は8月26日公布・施行 ~ 厚生省令が公布・施行されたのは 9月22日
その附則の中で「昭和二十五年に限り」「九月一日現在の犬の所有者は」「九月末日までに(中略)登録の申請をしなければならない」「予防注射を、九月末日までに受けさせなければならない」と定められています。

9月22日に公布・施行された厚生省令で九月末日に、と言われても.…とおもうのですが、戦後の混乱の時期にはこのようなことも珍しくなかったのかもしれません。

この時の厚生省令(厚生省令第五十二号 狂犬病予防法施行規則 昭和二十五年九月二十二日)は以下で確認できます。
官報 1950年09月22日 第7111号 @ 国立国会図書館デジタルコレクション

3 家畜伝染病予防法の一部を次のように改正する。

家畜伝染病予防法は大正11年に成立した法律です。それ以前は獣疫予防法が同様の役割を果たしていました。
それらの中に狂犬病対策も含まれていましたが、昭和25年に狂犬病予防法が成立し、狂犬病の部分が独立します。
この家畜伝染病予防法は翌年に廃止され、同じ名前で廃止された同日付けで成立します。現在の家畜伝染病予防法の法律番号は、昭和二十六年法律第百六十六号となっています。
(現在の家畜伝染病予防法を見てみると「家畜伝染病」の中に狂犬病が含まれていることが分かります。)

昭和25年当時は前の法律なので、大正11年成立のものを探すと以下の資料が見つかりました。
家畜伝染病予防法・御署名原本・大正十一年・法律第二十九号
これを見てゆくと、附則の文章と噛み合わない。「豚ノパラチフス」が見つからない。
以下の資料を見つけ、昭和25年8月26日狂犬病予防法成立時の改正以前に5回の改正があることが分かった。
家畜伝染病予防法(大正11年4月10日法律第29号)
更に調べて以下の資料から、狂犬病予防法成立時の附則と繋がることが理解できる。
法律第百八十八号(昭二三・七・二六)◎家畜伝染病予防法の一部を改正する法律
しかし当時の法律の改正反映版が見つからず、附則の内容を詳細に理解することは出来ませんでした。とにかく「狂犬病予防法を成立させたから重複しないように、齟齬がないようにしているんだろうな」と想像するまでにしておきます(改正される家畜伝染病予防法は翌年廃止されているので深追いしない)。

ここまで。


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