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右側の男

彼は特異な存在だった。生まれた時から、彼はある決断をしていた。自分の左側にあるすべてを、意図的に遮断するという決断だ。彼の世界は、右側だけが実在する鏡のようなものだった。

この生き方の理由は誰にも知られていなかった。彼の家族でさえ、彼が左側を無視する理由を知らない。彼はただ静かに、右側の世界のみを生きていた。

僕は偶然、彼に出会った。彼が右側にのみ注意を払っていることに気づいた僕は、好奇心に駆られて彼の左側に立つことを決めた。しかし、彼は僕の存在を感じていないようだった。

日々が過ぎるうちに、僕は彼の左側にい続けた。僕は彼の世界には入り込めなかったが、彼の行動や癖、彼がなぜ右側だけを向いて生きるのかを知りたいという願望が強くなった。

そして、ある日、彼は突然立ち止まり、静かに話し始めた。「私の左側にいる人、あなたは誰ですか?」彼は僕を直接見てはいないが、僕の存在を感じ取ったようだった。

その瞬間、僕は彼に対する興味を失った。彼はもはや、右側だけを知る謎めいた存在ではなくなっていた。僕の探求心は、もう彼に留まることができない。

僕は彼に別れを告げた。「あなたはもう私にとって謎ではありません。新たな探求のため、私は去ります。」彼は静かに頷き、僕は彼の元を去った。

僕は再び新たな旅を始めた。未知の存在、右側だけを生きる人々を探す旅だ。僕は彼らの左側に立ち、彼らが見ていない世界を観察し、その謎を解き明かそうとした。

僕の探求は終わりがない。右側だけを見る人々の世界を追い求め、僕は彼らの知らない左側の物語を探し続ける。それが僕の選んだ、永遠の旅路だった。



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