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バナナマンになりたい

今年も当たり前のようにバナナマンのライブのチケットは取れなかった。
一応、いちばん早い抽選に参加できるように、というかバナナマンのライブのチケットを取るためだけにローソンチケットの有料会員になっていて、毎年4500円払っているのだけれど、入会してからただの一度も当たったことがない。
最初のうちは何のためにお金を払っているのだろう、どうして当たらないんだ、とやきもきもしていたけれど、あるときからは「人は最初から期待しなければ傷つくことはないのよ」という人生をしぶとく生きてゆくための教えを学ぶ勉強代として毎年4500円をお支払いさせていただいている、というもはや悟りの境地である。

そんなわけで今年も観に行けなかったバナナマンライブ。
悟りの境地とは言ったものの、それでもやっぱり悔しかった。というのも今年はちょっと特別で、なんといってもバナナマンがもう何年も単独ライブを行い続けてきた六本木の俳優座劇場が来年春で閉館してしまうため、この場所で行われるバナナマンライブは今年で最後。あー俳優座に立つ設楽さんと日村さんを最後にこの目で見たかった。

そんな悔しい気持ちを飲み込んで、ここ数年はライブの生配信をしてくれるので、今年も家で観た。宅配ピザを頼んで家でお酒を飲みながらバナナマンライブを観てけらけら笑う、というのが毎年この時期の楽しみになっている。

今年のライブタイトルは『bananaman live "W"』。
設楽さんのイニシャル『S』、日村さんの『H』、作家オークラさんの『O』に続いての『W』。すべて繋げると『SHOW』になる。潔くってかっこいい。
SHOW4部作のラストとも言える今年のライブはどこまでもバカみたいでくだらない最高なコメディでありながら、それと同時に、喜びや自信、あるいは葛藤などお二人が長年舞台に立ち続け積み重ねてきた年月を感じずにはいられないとても美しい時間だった。ラスト俳優座ということも相まってか、さながらロックバンドの解散ライブを見ているようなちょっと切ない気持ちにもなった。赤えんぴつやばかった。お二人の汗と日村さんの透明なゲロが染み込む舞台の床。やっぱり生で観たかった。

「オサムちゃん、昔っからの仲間とこうして意見をぶつけ合っているのがヒーは嬉しい」「未来のことはわからないけど、そんなことより一曲やりますか」「こうしている間にも未来がどんどんどんどん迫ってくる」「忍者になりたい、って言ってそれを貫いたのがすげーんだよ」

細かい言い回しまでは覚えていないので、正確なものではないけれどコントの中の讃歌のような言葉たちがとてもグッときた。紛れもなくバナナマンがバナナマンを肯定している。そしてバナナマンを長年好きでいる自分のことも誇らしく思えた。

バナナマンライブと言えばオープニングVTRに毎回とても豪華なアーティストが楽曲を提供しているのだけど、今回担当したのは東京スカパラダイスオーケストラ。
こないだのバナナムーンで設楽さんが言っていたけど、スカパラにライブの曲を作ってもらうのが夢だったらしい。しかも、それを今みたいに毎日のようにテレビに出るようになるずっとずっと前、いわゆる下北時代(バナナマンファンならわかるけどもう20年くらい前)からそう言っていたらしい。なんていい話なのだろう。


音楽家として、そしてバナナマンファンとして、いつか、いつかバナナマンライブのオープニングの音楽を作るのが僕の夢だ。
今から10年ほど前、バンド活動をしていて初めてCDを作った頃、街で設楽さんに遭遇したことがあり握手をしてもらった。そのときに「いつか星野源さんみたいに、バナナマンライブの音楽やるのが夢なんです。」と言ってできたばかりのCDを渡した。今思うと大変に失礼でわけわかんない話であるけれど、これは今でも変わらず青臭くてちょっとイタい僕の夢のひとつだ。
今年のバナナマンライブを観て、勝手に励まされるような気持ちになったので、今後もこういうことは恥ずかしげもなく言っていこうと思う。




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