マガジンのカバー画像

はやく人間になりたい(仮)

7
出版が決まっている本の執筆が全く進まないので、締め切りを作るためにnoteで勝手に連載にすることにしました。がんばります
運営しているクリエイター

記事一覧

太腿におおきな竜と虎がいて、かっこいいね、と言ったら笑った

中学三年生の冬、親が離婚して、名字が上坂に変わった。高校入学と同時に、同じ沼津市内にある年季の入った団地に移り住んだ。 リビングを兼ねた狭いキッチンとつながっている母の部屋があり、半分をカーテンで区切る形で姉の部屋があった。玄関に入ってすぐの独立した個室は私にあてがわれた。それは母によって、家族の中で私が一番繊細で、一人の居場所が必要なタイプと判断されたらしかった。 私は当時ロリータファッションを好んでいた。ロリータとはフリルやリボンが散りばめられた、絵本の中の人形やお姫様の

有料
300

ノーパンなんでもバスケット事件

昔から肌が弱い。アトピー体質とかではなく、ただただ普通に弱い。敏感肌っていうやつかもしれない。 現在も、サウナに入りすぎると肌が痛くなったり、山でブヨに刺されただけでものすごい腫れ上がってしまい病院で点滴を打たれたりしたが、これでも大人になってだいぶマシになった方だ。 幼少期は今よりもさらに敏感で、肌の弱さによって日常生活に支障が出ることがままあった。 小学四年生のときのある日、大きくて緑色の柑橘類がたくさん我が家にやってきた。母が知人からもらったのだというそれは「スウィー

有料
300

フルーツに生まれ変わったら何になりたいか話せば二時間は経つ

私は人の知られざる真実や、人生観や、家庭環境や、トラウマなどにとても興味があり、昔は直接的にドンドコ聞きに行っていた。何人かは面白がって教えてくれるけど、普通に嫌な思いをさせてしまったり、距離感のバグったヤバい人だと思われてしまったりする。優しい友人が「初対面の人に『いつか死ぬとき、死因は何がいいと思う?』とか言わない方がいいと思うよ」と、真面目な顔で忠告してくれたこともあり、それは本当にそうだなと思った。距離感のバグったヤバい人だと思われたくないので(仮に実態としてそうであ

有料
300

クズも死後神になれると知ってから餃子のタレが輝いている

前回に続き祖父の葬儀の話。 我が家は神道なので、仏教の葬式とは異なる「神葬祭」を執り行った。仏教の葬式は"死者の魂を極楽浄土へ送り出すための儀式"であるのに対し、神式の葬儀は"亡くなった家族を先祖と共に神として奉る"ことを目的として行われるらしい。つまり、亡くなった祖父は神さまとなったわけだ。このまま行くと未婚の私も死後、神になる確率が高いということに気づき、ちょっと怖くなる。 神葬祭の一日目、まず通夜祭と呼ばれる儀式がある。斎主となる神官の方が祝詞を読み上げ、参列者は玉串

有料
300

貶されるときより褒められてるときのほうが私は試されている

人から何かを褒められたとき、「いえいえ、全然そんなことなくて」などと否定にかかるのは悪手で、サラッと「ありがとうございます」と答えるのがベストだというのは、コミュニケーションにおける真実のひとつであり、世間にも浸透してきている考えだと思う。相手の褒めを否定することはつまり、相手の感想を否定したことになるから。 例えば容姿やビジュアルを例に挙げると、可愛いとか格好いいとかいうのは主観だから、言われた側がどう思っているかに関係なく、相手の心の中だけでその真実は成立する。それに気づ

有料
300

真実はいつも一つかもしれないが口にするかはまた別である

幼少期に「自分がされて嫌なことは人にしちゃいけません」という教育を受けることがあるけれど、あれ本当にやめた方がいいと思う。この説を信じたばっかりに、私は二十数年に渡って大事故をたくさん起こしてきた。 どうやら私には、真実至上主義みたいなところがある。核心をついた事実(のようなもの)を探すのが大好きで、自分のことでも他人のことでもそれ以外のことでも、もし見つかればその場の空気にかかわらず嬉々として話してしまう。 学生の頃は、そういう『正しいかもしれないけど言わんでいいこと』を

有料
300

はじめに(全文無料)

この地球で、自分だけが宇宙人なのではないかと思っていた。 私が発言した直後だけ、急に場の空気がひんやりし、周りの重力がなんだかおかしくなる。周囲の笑顔が引き攣ったり、みんなが無言になったりして、後日、陰口を言われたり、無言で距離を置かれたりする。 中学でも高校でもそのようなことが頻発して、クラスで除け者にされていたことがあった。しかし私は除け者にされていることに気づいていなくて、さらなる反感を買っていた。高校生時代に通っていた美術予備校では、とある女の子にめちゃくちゃ嫌われ