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フルーツに生まれ変わったら何になりたいか話せば二時間は経つ

私は人の知られざる真実や、人生観や、家庭環境や、トラウマなどにとても興味があり、昔は直接的にドンドコ聞きに行っていた。何人かは面白がって教えてくれるけど、普通に嫌な思いをさせてしまったり、距離感のバグったヤバい人だと思われてしまったりする。優しい友人が「初対面の人に『いつか死ぬとき、死因は何がいいと思う?』とか言わない方がいいと思うよ」と、真面目な顔で忠告してくれたこともあり、それは本当にそうだなと思った。距離感のバグったヤバい人だと思われたくないので(仮に実態としてそうであったとしても)、数年前から気をつけるようになった。

具体策としては、iPhoneのメモ帳に「初対面の人に聞いてもいいことリスト」を作った。自分も興味を持てて、相手を不快にさせないような質問が並んでおり、例えばファミレスで好きなメニューは何?とか、小さい頃にハマっていた遊びは?とか。中でも一番使い倒しているのは「フルーツに生まれ変わるとしたら、何がいい?」である。
これは友人が教えてくれたのだけど、誰と話してもかなり盛り上がる上に、不快にさせない範囲で相手の価値観や真実のようなものがわかるので、私もとても楽しい。楽しすぎて、先日転職の面接を受けていたとき、「最後に何か質問はありますか」と言われて「生まれ変わってフルーツになるとしたら何になりたいですか」と聞いた。面接官は少し困っていたけど、「パイナップル…」と答えてくれたりした(私は転職するならこういう話ができる会社がいいと思ったので、変人だと思われても構わないという人は面接テクニックとして参考にしてください)。

この質問を様々な人に聞きまくってきたので、いくつかの解答例を紹介する。

とある人は、「イチゴになりたい」と答えた。理由を尋ねると、「あたたかい室内で過ごせるし、友人(他のイチゴ)が適度な距離感にいるから。ブドウも考えたけど、あれは一粒一粒が密接しているから、他人との距離が近すぎると思った」とのこと。この答えから、この人は他の何よりも自分の住環境と、友人との適切な距離感を大切にする人なのだということがわかる。

一応言っておくと、学術的に言えば実はイチゴは表面のツブツブこそが果実で、その中に種子となる胚珠があるため、種=一個体だと考えるとブドウに匹敵するくらいまあまあな密度だ。ただこれは相手の価値観を知ることが目的の遊びなので、ここでは生物学的な正しさはどうでもいい。これ以降の文章も同様に、「それはフルーツじゃなくて野菜だよね」とか野暮なツッコミはやめていただきたい。

とある人は、「バナナになりたい」と答えた。理由は「栄養価が高くて、でも安くて手軽だから」。この人は、親しみやすく、他者に対して有益な存在でありたいと思っているのだと思う。
とある人は、「パイナップルになりたい」と答えた。理由は「派手に生きたいから」。
とある人は「サクランボになりたい」と答えた。理由は「一人じゃ寂しいから」。
このように、普段なかなか言わないような、だけど自分の中ではとても大事な価値観があらわれるすごい質問だ。

私のパートナーに聞いてみたら、私と同じフルーツを答えた。それはスイカだ。彼の理由は、「一人じゃなく大人数で食べるもので、スイカを食べるときって皆が笑顔だと思うから」とのこと。彼は自分を犠牲にしてでも周囲を笑顔にすることが、人生で最も重要だと考えているらしい。あまりの聖人ぶりに慄いた。だって、私がスイカを選んだ理由は「いざ戦うとなれば、物理的に他のフルーツを倒せそうだから」だったから。つまり私は他人に負けないことが人生で最も重要だと考えているらしかった。
このように、何のフルーツを選ぶかよりも、その理由に価値観があらわれる質問なのである。スイカには勝手にいろんなものを背負わせてしまって申し訳ないが。

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