オタク(仮)遍歴


母「あんたってアニメオタクだよね」

違う。
断じて違う。
私はオタクではない。


オタクと呼ばれるのが心外だということではない。
私のような知識あさあさミーハークソ野郎なんぞは
オタクと呼ぶにはあまりに滑稽で未熟、
甚だ烏滸がましいと言っている。

1994年生まれ。
28歳。令和4年現在。

アニオタが市民権を得たのはつい最近のこと、と
歴戦の兵たちのツイートを度々見かけるが
平成の世を学生として生きた私の感覚で言うと
物心ついた時から
オタク、とりわけアニメオタクは
既に市民権を大獲得していた。

小さい頃からアニメはとても身近にあった。

こどもちゃれんじのしまじろうに始まり
日本まんが昔ばなしはいつも保育園で流れていたし、
美少女戦士セーラームーン、
忍たま乱太郎、おじゃる丸、
あずきちゃん、カードキャプターさくら
おジャ魔女どれみ、
ちびまる子ちゃんやドラえもんなどなど
あの頃誰もが見ていた王道アニメで
普通に幼少期を過ごした。

その後小学校に上がり
犬夜叉や結界師、名探偵コナン、
こち亀やボボボーボ・ボーボボ等
夕飯時に見るくらいになった。

誰しもが知るポケモンやデジモン、
ワンピースやNARUTOなどは
逆にこの頃ほぼ見てこなかった。
こういった午前中にやっているアニメは
寝坊助な私にとっては全く縁ないものだった。

その後小学校高学年のころなどは
特別子供としてもオタクとしても
ドハマりするアニメに出会うことなく
ごくせんやら花より男子やらの
流行りのドラマばかり見ていた気がする。

私がアニメにオタク(仮)的ハマり方をしたのは
2006年に放送を開始したジャンプアニメ、
銀魂 を見てからだった。

私と銀魂との歩みは同じクラスの友人から漫画銀魂第一巻を借り受けたことに始まる。
その友人には毎週ジャンプ欠かさずジャンプを購入する漫画好きの兄がいた。
ギャグの面白い漫画、と何の気なしに読んでいた。

2006年、私が小学6年生の頃だが、
アニメ放送が始まったからと言ってすぐに見始めた訳では無い。
実家にケーブルテレビが導入され、キッズステーションを見ることが出来るようになってから初めて見た。

中学一年生のころだ。
大転換。
私の人生は大きく変わった。

私と同世代かそれより上の女子達を
多く腐の道へと誘った銀魂であるが
私はというとこれまた別で、
キャラの相手は自分自身とする
いわゆる夢女子として
このアニメにハマっていくのである。

その戦犯の名は桂小太郎。
罪深い程美しい黒髪の狂乱の貴公子である。

軽快にボケとツッコミを重ねながらも
時にシリアスに場を締める坂田銀時とその仲間たち。

主人公である銀時が死んだ魚のような目をした日常パートと時折見せるいぶし銀の侍の姿とのギャップで私の心を揺さぶる素晴らしく魅力的なのは当然として、それが故に私の中では早々と大好き好き好きキャラクターランキングの殿堂入り的存在となってしまった。

一方その後大本命へと収まる桂小太郎は銀時とかつて攘夷戦争で背中を預けあった同志で、別れたあとも攘夷志士として信念を貫いており、再び共に剣を取らないかと銀時を攘夷の道に誘いに来ては騒動を巻き起こす黒髪美形男子だ。

声を当てるは天下の大美青年声優、石田彰。
この頃声優という概念すら無かった私にその存在を烈風のように吹き込ませたこの人もまた大戦犯である。

桂小太郎は万事屋3人に比べ登場回数こそ少ないが、銀時の過去を語るには欠かせないキーパーソンである。

主人公銀時と攘夷戦争という過酷な時代を共にした存在であるだけあり身のこなしは軽く剣術や爆弾の扱いにも長けており当然強い。にもかかわらずクソ真面目ボケをかまし銀時たちから容赦なくツッコまれぞんざいに扱われる。

更にエリザベスという謎の白いオバQ…オッサン…を共に連れており信頼し可愛がっている様子。攘夷活動の為なら、というか成り行きでスナック菓子さえ武器に変える。女装もする。黒猫にもなるしラップもするしドライバー(?)にもなる。

何がなんやら分からないうちに美しい顔で真っ黒に艷めく長髪を靡かせながらどちゃくそ色気のある石田彰ボイスでクソ真面目にボケ倒す桂小太郎の虜になっていた。

今となっては恥ずかしくて辛いのだが当時の私は桂小太郎が本当に好きでアニメを見ながらテレビ画面の中の桂小太郎に向かって「キャアアアーーー!!!!カツラサァン!!!!!」と大声を上げていた。死にたい。

顔が好き、声が好き、美しくて好き、髪長くて好き、髪ツヤツヤで好き、動きが好き、ボケ方が可愛くて好き、和服着てて好き、優しくて好き、銀時とマブで好き、強くて好き、真面目で好き、堅物で好き、トラウマあってエモくて好き、何しても好き
好き好き好き好き状態だった。きしょ。死ね。

その熱は高校生になっても続いた。

キッステで放送される回は欠かさず見て、夏休みにはDVDを第1話から最新話まで10本ずつTSUTAYAでまとめ借りして延々とそれを見て過ごした。
原作で追うのももちろん、学校の図書館や親の携帯で声優である石田彰のこと、史実の桂小五郎のことを調べた。
その頃元々日本史は好きで、中でも坂本龍馬のことが好きだったのでそれに絡めて明治維新周辺の事も
学生ながら改めて学び直した。

ランダムなグッズは桂小太郎が出るまで買ったし
フィギュアやポスターを部屋に飾った。

劇場版銀魂紅桜篇では桂小五郎の死を予感させるシーンで大号泣し、短髪で再登場したシーンでも生きていてくれて大号泣したしかっこよすぎて大号泣した。あれは泣いた。

石田彰への熱もかなり高まり、犬夜叉の甘利信長、忍たま乱太郎の綾部喜八郎、NANAのシン、セーラームーンのフィッシュアイなどこれまで見た事のあるアニメで石田彰が出ていた回のDVDや動画を漁っては「あぁ~これもなんだ~!」と1人感動していた。

オタクの必須科目新世紀エヴァンゲリオンもカヲルくんの声聞きたさにTV版、劇場版、新劇場版と履修した。

同時にキッステで見ることのできた聖闘士星矢ロストキャンバスの乙女座のアスミタ、ガンダムSEEDのアスラン・ザラなどもチェック。

浅瀬も浅瀬、ほぼ砂浜だが桂小太郎ひとりを好きになることでそこから派生して沢山のアニメに触れることとなった。

また銀魂は声優豪華アニメとしても有名で
石田彰だけでなく銀時役の杉田智和、
土方十四郎役の中井和哉、
沖田総悟役の鈴村健一、
坂本辰馬役の三木眞一郎、
高杉晋助役の子安武人などなど枚挙に暇がないが
大活躍声優たちが大集合していた。

上記の声優たちで石田彰と同じように
芋づる式で興味のある出演作のいくつかを見た。

涼宮ハルヒの憂鬱やらきすた、けいおん!、
ヒカルの碁、スラムダンク、桜蘭高校ホスト部、十二国記、コードギアス、るろうに剣心、ケロロ軍曹、などを見たのもこの頃だったか。

ほぼ国民的アニメしか見てこなかった私がこれまで触れることのなかったタイプのジャンプアニメ、特撮物、深夜アニメ、ラノベ物、BL物や乙女ゲーム原作物、吹き替えされた映画など様々なジャンルの作品を取り込むことになった。

楽しかった。
原作者が好きなキャラを生み出してくれたこと、
その原作者がこの世に誕生したことも
奇跡的で愛おしく感じた。
声優がその役を勝ち取ってくれたこと、
オファーを受けてくれたこと、
魅力的に演じてくれたこと、
声優を志してくれた事、
あるいは成り行きで声優の道へ進んでくれたこと
そしてやはりこの世に誕生してくれたことが嬉しかった。

舞台俳優を志していた道すがら
たまたま声優の仕事を受けたことに始まり
今や大ベテランとなった声優がいることを知り、
この結果をもたらしたあらゆる巡り合わせに感謝した。

その結果の恩恵を受けられる時代に生まれてこれたこと、
産んでくれて育ててくれて、
アニメを見ることのできる環境に置いてくれた両親にも感謝した。

銀魂が、桂小太郎が、空知英秋が、ジャンプが、
私にこの感動を与えてくれたのだ。

そんな私が社会人になってハマったのはこれも石田彰大明神が主人公を演じる「昭和元禄落語心中」。これは傑作だ。
石田彰、山寺宏一、関智一など演技派声優が落語を披露してくれるのだ。そしてヒロイン役には林原めぐみ。なんということだ。こんなのずるいよ。
落語、生、師弟、女、男への愛、執着、憎悪。
登場人物たちの簡単に言えば「とにかく好きすぎて辛い」が渦巻く中に、未来を切り開こうとする助六が現れる。主題歌も椎名林檎嬢手がける曲を林原めぐみが歌う。沼。落語も1部だけでなく一席まるっと演じてくれる。声優がやるだけあって聞きやすく、声色の変化も分かりやすい。昭和ロマン溢れる時代背景の中その落語シーンが贅沢に流れる。素敵な作品だ。

これがきっかけで落語も聞くようになった。
作品に出てくる死神は幾人もの名人がかけていて、そのどれもが違っていて面白かった。近代落語も面白いが、わたしはやっぱり古典の方が好き。実演を見たことは残念だがまだ無い。

その石田彰の後は津田健次郎だ。ツダケン。
最愛に始まりドラマにもひっぱりだこ、お忙しそうな津田健次郎様。

私が存在を認知したのはお恥ずかしながらあのサイバード手がける乙女ゲーム「イケメンヴァンパイア」だ。恥ずかしい、頼むから知り合い読まないでくれ。
職場の先輩がどハマりして重課金勢だった。オススメされてというか半ば強引にインストールさせられたのがきっかけではあるが、無課金なりにしっかり楽しんだ。
イケヴァンは異世界で繰り広げられるヴァンパイアたちとの共同生活が舞台。そのヴァンパイアたちはなんかよくわからんが名のある偉人たち。ナポレオンやモーツァルト、ゴッホやアーサー・コナン・ドイル。津田健次郎が演じるのは私が思うに超万能無敵偉人である「レオナルド・ダ・ヴィンチ」だ。ずるくないか?

史実上のレオナルド・ダ・ヴィンチのことは「ダ・ヴィンチ」って呼ぶくせしてゲーム内のレオナルド・ダ・ヴィンチのことは「レオナルド」って呼んだ。なんなんだ私。

彼らはヴァンパイアなのでむちゃくちゃ長生きしている。たぶん数百年。その数百年の中で自分だけは死ねずに大事な人達を看取り続けるヴァンパイアたち。血液を摂取しないと喉が乾いて仕方ない彼ら。偉人であるが故に背負う豪。人の温もりと血に飢えたヴァンパイアたちと暮らすのだから、危ないしアブない。

その中でも津田健次郎演じるレオナルドは一際危なくて一際大人で色気まみれだった。キャラデザもとても良いですありがとう。なによりも津田健次郎の声がキャラに合いすぎていてもうこれは実質津田健次郎なのでは???大人の余裕って言うんですか?そういうのにくるくるくる~~っとされたかと思えばなんかヒロインがいいことしたらしくその余裕が崩れて可愛いとこ見えちゃう的な?ギャップ的な?そういうのでした

津田健次郎さんの何があれって、失礼で俗なことを言いますがご本人さんのお顔もいいじゃないですか。すごく好きで。写真集がほしい。

その津田健次郎熱を元手にまた芋づる式に作品を掘って行くわけです。有名社長に始まりおじゃるまるの館長さん、超有名元祖沼の風間千景、東京喰種、ワンパンマン、タイバニ、IWGPのホスト役してる所も見ました。その頃91daysとかIDとか炎炎とかも見たな。大昔のVシネ的なのも買えたので見ました。

そして出会ってしまう。

ゴールデンカムイに。

尾形百之助に。

この記事執筆現在まだゴールデンカムイ(アニメ)は完結していないので多くは語りませんが、この尾形百之助、とんでもないヤツです。愛したくて愛したくて仕方の無い、本当に可哀いやつなんです。それを津田健次郎の声と演技がさらにさらに穴を深くして、一生抜けられない沼となって鎮座している。この尾形百之助というのは、気をつけなければ、彼に生き様を知ったものの人生をドラスティックに変えてしまうでしょう。尾形百之助だけでおそらく数え切れないほどのNOTEがあると思うけど、そのどれもが愛に満ちている。愛されてしまっていることがまた、、うん、、


とにかく、今書ける私の
「オタク(仮)遍歴」は以上である。

オタクでは無い。
稼ぎも大してないので大金をつぎ込んだりはしてないし絵も書けないし小説も書けないしフィギュアも小道具も作れないし衣装も作れないのでなんの二次創作もしてない。ただの消費者だ。

分かったか母さん。
わたしごときではオタクとは呼べないから。

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