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Little Diamond 第8.5話 ②

前回までのあらすじ


医療課長として現場従事中の妻カーラに弁当を届けるべく、首都からほど近いククルの町で開催中の、武術大会予選会場にやってきた騎士団長サチ。

急に振られたサプライズスピーチもそつなくこなすが、その観客の中に信じられない姿を見つけてしまった。
王都内で護衛しているはずの王女だった。

私服に着替え彼女を探すも、広い会場の人混みの中での捜索は不可能に近い。

途方に暮れそうになったところへ、通信が入った。

8.5 騎士団長の宝物 ②

8.5‐7

通信をつなぐ。
押し殺したようなハスキーな低い声が聞こえる。
「なにを探してるんだ」

……正影だった。
キョロキョロしているのをきっちり見られていたようだ。

「正影か。 白いパーカーに明るいオレンジ色のショートヘアの少女を探しているんだが……見えるか?」

いつも思うが、一体どこから見ているんだあいつは……。

数秒の沈黙ののち、彼は答えた。

「……第2闘技場の前に見つけた。ひょろ長い体格で青いローブの、金髪の若い男と一緒だ」
「それだ。早い。さすがだな……ありがとう」

どこか高い所から見ているに違いない。
だが悔しいことに、辺りを見回してみてもきっと見つけられないだろう。

気配を消して身をひそめるのはあいつの一番の特技だ。

少しだけ間があいて、正影がポツリとつぶやいた。
「む……サチ、あの子はまさか……」
「何も言うな、わかってる。だからこれから確かめに行くんだ」

「……大丈夫か?」
1人で危険はないか、という意味だ。

危険がないとは言い切れないが、あいつも任務中だから無駄に手を煩わせるわけにはいかない。

「大丈夫。必要があったら呼ぶし、あとで報告する」
「了解」

8.5‐8

無事、ターゲットの少女とコンタクトをとることに成功した。
やはり王女本人だった。

どうやら計画的に家出したらしい。
手引きしたのはおそらく彼女の母である王妃・結莉(ユリ)さまだろう。

警備のための公式なスケジュールでは、王女は今、孤児養護施設への住み込み研修ということになっている。

こんな特殊な環境設定、さらには3ヶ月にも及ぶ予定の情報操作。
にもかかわらず国王の納得した様子。

……娘を溺愛する国王に対してそんな大胆な偽装工作ができる人は、他に考えられない。

彼女……ジュリア王女は小さなころから見守ってはきたが、一対一でまともに話したことはなかった。

今回話した印象は。
芯がしっかりしていて、自分で考えて判断することができる。
幼さは残るものの、もう守られるだけの子供ではなく、立派な大人の女性だった。

勇気があるし、自力で困難を乗り越える根性もありそうだ。

だからもうそろそろ彼女は「いつまでも子離れできない父親」から開放されても良いのでは、と考える。


思えば俺が国王の相談役のような存在になって、だいぶ経つ。

彼がひとり娘を溺愛し、ひたすら大事に大事にするのを長いこと見てきた。

正直、色んな意味で心配だった。
国王も、王女も、彼らの親子関係も。

父に過保護にされた反動なのか。
王女は母から格闘技を習い、負けん気の強いおてんばへと成長していった。

彼女が王宮の塀を深夜に突破したり、護衛をまいたり、道場破りのごとく騎士団の訓練所に出没したりする情報はすべて俺のところに入ってくる。

それらを報告するたびに国王は心を痛め、さらに警備を厳しくするが、王女のおてんばは意に反してエスカレートしていく。

あまりに頻繁な時は、国王にはあえて報告せずに情報を規制した。
毎度毎度、彼女が父親に叱られると思うと可哀想で。

……それに国王の心労を無駄に増やさないためにも。

親友の正影からも話を聞いていた。
意外だがあいつは王女が小さい頃、彼女の教育係をやっていた。

理由は話せば長い。
ただ正影には若くして子育ての経験があり「育てる」ことに間違いなく適性があった。

あいつの見立てによれば、論理思考を好む部分や責任感は父親から受け継いでいた。
だが価値観はどちらかと言えば母親似だろう、と。

母親である結莉さまは今でこそ優雅で穏やかだが、結婚前には武闘家として修行のため、世界中の猛者との死闘を求めて旅をしていたと聞く。

国王によるとその様子は、
「未知なるものに貪欲で、心のままに行動する人であった」と……。

王女は間違いなく、その血を引いている。

つまり、俺は今回の行動で確信した。
彼女は王宮に閉じ込めておくべきではない、と。

国王には悪いが、ここは自然にバレるまではとぼけさせてもらうことにした。無限の可能性を秘めた、彼女のキラキラした眼差しをなくしたくない。

彼にもそろそろ分かる頃だろう。
娘と言えど、他人の人生を操作することなどできないということが。

その代わり、責任をもって見守ることを自分に誓った。

俺は——。
結婚4年目だが、子供がいない。

ミュータントであるカーラを妻として迎えた時、子供は望めないと覚悟は決めていた。しかし「育む」ということへの興味は、捨てることはできない。

現に訓練所を出たばかりの、当時まだ16歳だったレイを補佐官として起用したのも、彼に可能性を感じたからだ。

一国の王女に対して失礼なことかもしれないが、俺は彼女に対して兄のような父親のような、そんな気持ちを抱いているのかもしれない。

彼女の成長を見守り、応援し、支えたい。
これもまた、勝手なワガママでしかないが。

未来を担う若者たちの輝きは。
俺にとっての希望なんだと思う――。


8.5‐9

王女とのやりとりでワクワクした気持ちに満たされ、俺は本部テントで待つカーラの元へ帰ってきた。

が、彼女は留守だった。
一般人を装ってスタッフに尋ねると「緊急処置で第2闘技場へ行った」と。

またすれ違いか……。

そこへちょうどレイがやってきた。
テント裏で小声で話す。

「団長、このあとのご予定は? 奥様とランチですか」
「うん」
「了解です。では私は会場の観察をしてますので、ごゆっくりどうぞ。帰りはお供します。連絡くださいね」
「わかった」

レイとの会話は不備やムダが一切なく、こちらが話す必要がほぼない。

正影やカーラもそうだが、気心知れている相手というのはリラックスできるものだ。

俺は特に大した人間ではないけれど、騎士団長である限り、部下の命やこの国の行く末に関わる責任が常に両肩にかかってくる。
好きでやっているのだから不満はないのだが、ずっと緊張状態では息切れもする。

だからこそ、こうして安心して寄りかかれる相手がいてくれることに、本当に感謝している。

カーラを迎えに第2闘技場へと向かっていると、途中で彼女を見つけることができた。
白衣を羽織り、長い銀色の髪は後ろでまとめている。

「カーラ!お疲れさま」
手を振ると、すぐに気付いてにっこりと笑ってくれた。

この笑顔は本当に、何にも代えがたい。
宝物としか言いようがない。

「ごめんね。お待たせ」
「大丈夫だよ。どこか静かなところでご飯食べよう」

カーラは一旦テントに戻り、白衣を私服のコートに着替えて出てきた。

会場の人混みの中を、手をつないで歩く。

120センチ程の背丈の彼女と並ぶと見た感じ親子のようになってしまうが、そこはもう付き合って10年も経つ。
二人とももはや気にしていない。

「サチ?」
「ん、どした?」

「いつもありがと」
「なんだ急に……なんかあったのか?」

カーラは勿体つけるようにうふふ、と笑う。
何かのフラグを警戒したが……、そうでもないみたいだ。

「さっき緊急で治療したコね、パートナーさんにすごく想われてて、羨ましくなったんだけど」

「うん」

「でも、私にはサチがいるんだなーって思ったら嬉しくて」

「へ……?」

な……なんだ、これは!?
何かの罠か……?

幸せ過ぎて鼻血が出そう。

彼女は普段クールなくせに、たまにこういう爆弾を投げてよこす。

ニヤける口元を隠しながら頬をつねって、夢でないことを確認する。
一度立ち止まり、しゃがんで目線を合わせる。

「俺も、そう思ってくれて嬉しい。愛してるよ」

彼女の瞳は切なそうに揺らめいて、今にも泣き出しそうな気配があった。
たまらず抱き寄せる。

「……なかなか会えなくてゴメンな」
「ううん、大丈夫。ちゃんとこうして会いに来てくれるもの」

しばらく、ぎゅ、っとしていた。
――満たされる。

彼女のぬくもりと、匂いと。
小さくてもちゃんと実体感があって。
変な言い方だが、すごくしっくりくるというのか……落ち着く。

彼女の小さな手が、俺の頭をぽんぽんと撫でた。

身体を離し、顔を覗き込む。
彼女は目をこすりながら「えへへ」と笑った。

泣いてた、のか……?

「どうした……?」
「どうもしないよ。嬉しくて」

彼女にいつもの笑顔が戻った。
よかった。俺も嬉しい。

ホッとして、再び手を取って歩き出す。

「それにしても俺、いつも会いに行ってるけどうっとおしくないか? なんか仕事、忙しそうだし……」

「え、全然、嬉しいよ。私の方こそ、せっかく来てくれても会えないこと多くて申し訳ないなって思ってた。ゴメンね」

安心した。迷惑になってはいないようだ。

仕事中の彼女はとてもドライで合理的で、無駄を嫌う。
面倒くさがられているのでは、とたまに心配になるのだ。


会場の広場を見下ろす丘の上、陽の当たるベンチに落ち着いた。

カーラ

毎朝作る弁当は、カーラに届けるためだ。
何の変哲もないごく普通の弁当だが、昼を抜くことの多い彼女を心配して栄養バランスは考えてある。

タイミングが悪く会えない時は、一人で寂しく食べることなるのだが。

でもこうやって一緒に過ごせる時間がたまにでも取れるなら、弁当はその口実となってしまっても構わないと思っている。

ちょうど食べ終わったころに、通信機から呼び出し音が鳴った。

クソ、なんだよこんな時に……。

「ごめん、連絡がきた。ちょっとまってて」
カーラはコクリとうなづく。

立ち上がって、後ろを向いてから通信をつなぐ。
「……なんだ?」

「緊急事態です。モンスターの大群を率いた盗賊たちが首都の北西から街道に向かって南下中との連絡が。巡回中の諜報工作部隊のメンバ―が発見し、砦と西門には連絡済みです」
レイからだった。

「分かった、すぐに本部テントに戻る」

嫌な予感がした。
何故このタイミングなのか。
いや、カーラとの時間を邪魔されたとかそういうことではなくて。

武術大会予選2日目の、警備体制の強化後に。
本来なら俺は定期討伐の視察で留守にしていたであろう時に。

首都の警備が手薄になり、中央の人間がバラバラになるのをまるで見計らったようなタイミングだ。

それに「モンスターの大群を率いた盗賊」?
……これは初めてのケースだ。詳細を聞かなければ。

気付くと、カーラが心配そうな眼差しでこちらを見上げていた。
「……仕事ね?」
「うん、ゴメン」

「ううん、今日は一緒に過ごせて嬉しかったよ」
カーラはいつも気丈に笑顔で送り出してくれる。

「……行ってきます」
「気をつけて、行ってらっしゃい。私もテントに戻るね」

……俺も気合入れて仕事しないと。

彼女と別れて、駆け出した。

「緊急事態」と言っていた。
あのレイが、第一声から。

正影と違って彼はいつも、連絡の時は律儀にちゃんと名乗る。
なのに今回はそれを省いた。

つまり、相当な緊急事態であるのは間違いない。


8.5‐10

出た時と同じように、テント裏からそっと入る。

また鎧に着替えなければならない。
さっきも急いでいたから脱ぎ散らかしたままだったはずだが、いつの間にかきちんと整えられていた。

素早く装備を終えてから、髪をオールバックに整える。
また一度裏から出て、深呼吸してから改めて正面入り口から入りなおす。

がらんとしていた先ほどとは違い、十数人がテント内にいるので窮屈に感じられる。

すぐにレイが気付き、駆け寄って報告する。
「会場にいる騎士団の、出撃可能な実動部隊所属の者はこの10名です。念のためこの町の自衛メンバーは招集し、ククルの東門にて警戒するよう伝えました」

「うむ」

いま会場警備を外すことはできない。
狙われているのはこの町ではなく首都である。

民間人の安全が確保できるなら、できるだけ大会に影響を与えずに事を処理したい。

使える人数が少ないのは仕方のないことだ。
元々戦闘を想定して編成を組んできたわけではないから。

それに、諜報工作部隊も動いているはずだ。
有事のときこそヤツらの出番だろう。

ひとまず、誰かが用意してくれたであろう椅子に座る。
「聞こう。詳細を頼む」

レイはうなずいて、即興で描いた地図を示しながら説明を始めた。

首都周辺地形図

「モンスターの群れは、盗賊団員の2人によって誘導されているようで……」

モンスターを……誘導?そんなことができるのか……?
さっそく疑問に思ったが、とにかく最後まで話を聞くことにしよう。

「現在、街道の中間地点より数キロ北のあたりをゆっくりと南下中です」

高い壁に囲まれた首都の西門から、ほぼ真西に伸びる街道。
真っ直ぐ進むと、このククルの町の東門へと続いている。

敵の一団は、その街道の中間地点と交差するコースで北西から南東へ向かっているらしい。

「そろそろ街道に出ると予想されます。街道通行中の市民の避難誘導は、首都周辺警備隊の街道保安班がすでにやっています」

「うむ」

「進路からみておそらく首都西門を狙ってくるでしょう。人数は2人と少ないですが大型モンスターを多数率いていて、西門で交戦となると現状では苦戦を強いられるかと」

「うむ……そうだろうな」
というのも、西門は普段から大した戦力を配備していない。

首都周辺、特に西側の地形は荒れ地と砂漠が多く、見通しが良いためだ。

北西には深く大きな森、北には険しい山があり。
西門と北門からは街道が伸び、南と東は荒れ地と林の先に、海が広がる。


大規模な盗賊の襲撃はほぼ夜間で、北西の森に身を隠しながら来ることが常である。そのため首都の北西方向には迎撃設備として砦があり、常に人員を厚めに配置している。

「砦の方は、異常の報告は特に入っていません」

諜報工作部隊も1人、そちら方面についているはずだ。彼らは目が非常に良く気配に敏感なので、異常の第一報は彼らからもたらされることが多い。


一方、モンスターの襲撃があるとすれば、北門だ。
なぜなら首都の遥か北には、世界大戦によって汚染された「不可侵領域」が広がっているから。

そこは、戦時の化学兵器や生物兵器の残骸、有害な魔法の残留などが渦巻いている……まるで地球規模のゴミ捨て場のような状態といっても過言ではない。

動物が変異して巨大・凶暴化したもの、アンデッドや負の魔法力から生まれる魔物が、日々増殖を続けている。

首都周辺に出没するモンスターはそこから生まれている可能性が高い。
そのため、首都の保安を目的として定期的に行われるモンスター討伐は、この北門から出撃する。

「北門の警備はどうなってる?」
通常警備は抜かりないだろうか。

「討伐隊が出払ってますので、北門へは代わりに首都警備の第5小隊が詰めています」
「そうか、なら良い」

定期討伐のおかげで、モンスターが首都に攻めてくることは最近ではほとんどない。
もう十数年も長いこと牽制し続けている。

ヤツらにも敵の本拠地へむやみに飛び込まない程度の知能はあるのかもしれない。

ちなみに南門は小さな通用門であって、オートロックで常時施錠されている。
生体固有波動の登録された者しか開けることができないうえ、常に監視と記録がされている。
センサー類も厚い。

物資の輸送などで海を利用する場合などは、事前連絡により係員立ち合いの元、通行することとなる。

ここからの侵入を試みることは、自殺行為と言える。
見通しが良すぎて回り込む間に発見されることは間違いないからだ。
見張り塔にももちろん、常に誰かが詰めている。

そして当該の西門の警備はというと。

首都の西側は見通しがよく、街道は真っ直ぐに伸びている。
昼間は人通りも多く、盗賊やモンスターが出てくることはほとんどない。

そのため西門には戦力ではなく、少数精鋭の行動観察のスペシャリストを配置している。出入りする人の行動を注視し、怪しい人物をチェックするためだ。

検問、とまではいかないが、ここで首都に入り込むたいていの危険因子を排除できる。しかし彼らは戦闘要員ではない。

トラブル対応の用心棒的な人員は他に2~3人配置してあるのみ。

つまり普段は、平和そのものだ。

街道警備隊もまた然り。
主な業務は、行きかう人の案内や困りごとの相談にのったりするのが日常である。配置人員もそれほど多くはない。

つまり西門および街道に配置された戦力は、複数の大型モンスターを迎撃できる規模ではない。
早急に応援を出す必要がある。

能力的に最適なのは対モンスター戦に長けた「モンスター討伐隊」だが、彼らは首都を挟んでほぼ反対側の北の山中で、定期討伐の作戦行動中だ。

副団長グレッグが同行しているが、すぐには呼び戻すことができない。

なぜなら、首都からでは険しい山々に阻まれて通信が届かないから。
呼び戻すのなら直接、北門から人を行かせる必要がある。

俺も本来の予定通りだったらそっちに出ていて帰ってこられないところだった。
……敵はきっとそのタイミングを狙ったのだろう。

それ以外にこんな真っ昼間に来る理由がない。

それに気になるのは……。

今回は「盗賊団がモンスターを率いている」という珍しいケースということ。だいたいモンスターが人に従うことなど非常に稀だ。

手なずけようとするならば、たとえ知能が高く気性が穏やかな種でも、時間をかけて信頼を構築する必要があるだろう。
猛獣を調教するのと同じだ。

もしかしたら強制的に動かしているのかもしれない。
追い立てているのか、おびき寄せているのか。

今回の報告での「率いて」という表現なら、「おびき寄せている」可能性が高い。


だが……人員が出払っているとはいえ、西門へモンスターの群れをぶつけてどうするつもりだ……?

「これはおそらく陽動ですね。盗賊ごときが首都に攻め入ったところで城を落とせるわけでもないですから。派手なパフォーマンスで目を引いて、その隙に悪事を働くつもりでしょう」
レイが言った。

まったくその通りだ。
では我々の目を西門に向けさせて、真の目的は一体何なのか。

外部から侵入するなら、砦か北門……。
どちらから入るつもりだ……?

こんがらがってきた。
敵の立場に立って考えてみよう。

—————————————————

敵は俺の不在、つまり北の山中に入ってしまって軍の指揮ができない状況にあることを、当初の計画として狙った。

これはおそらく数少ない「ほぼ確実なこと」だ。

そこから順を追って考えてみる。

首都への侵入を考えた時、一番手薄になるのは俺のいるはずの北の山中からは最も遠い「西門」だ。
つまり西門から入るのが自然な流れだ。

その場合、陽動としてモンスターをぶつけるなら必然、北西の砦となる。

北門という選択肢はない。
なぜなら盗賊たちの潜む森と北門との間には、険しい山が横たわっている。首都内部を通らずに北門に出るには、この山を越えるルート以外にない。

人間2、3人ならともかく、大勢のモンスターを連れて山を越えるとなるとさすがに大変だ。

結論、砦にモンスターをぶつけて人を集め、その隙に西門の門番を倒して侵入するのがベストと言えるだろう。

北へ出た俺たちが呼び戻されたとしても途中で砦が騒がしければ、西門にたどり着く前に砦にひきつけて少しでも時間を稼ぐことができる。

もし陽動に気付かれたとしても、西門への到着はそのあとになる。

目的をはたして逃げおおせる時間は十分ありそうだ。

……と、当初の計画はこんな感じだろう。


けれど実行直前の今日の午前。
ヤツらの計画は狂った。

俺がククルにいることが判明したのだ。

派手にスピーチをかまして存在をアピールしてしまったから、当然、盗賊の耳にも情報が届いたはずだ。

俺がいるならば、戦力もある程度率いているに違いない……と考えるのは自然だ。実際は一人だが。

そしてここククルから首都へ向かう道中は見通しが良く、西門は丸見えだ。

つまり……。
もし西門から入る時に、砦の騒ぎを聞きつけて首都に戻る俺(の率いる軍勢)とバッタリ出くわしたらマズイとでも思ったのだろう。

だから西門からは入りたくない、と。

それで計画を変更した。

—————————————————

だが直前の計画変更というのは、どんなものでもずさんになりがちだ。

おそらく。
どうしようか悩んだ結果、盗賊はモンスターを苦し紛れに西門にぶつけることにした。どうせ見つかってしまうなら一番目立つ場所に派手にぶつけようと。

その意図は……。
陽動であることをあえてこちらに「読ませた」?

つまり……?
陽動を見抜いて我々が砦に集まることは、読まれている可能性が高い、ということだ。

となると答えは1つしかない。


◆◆第8.5話 「騎士団長の宝物」② 終わり

あとがき


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まだ続くんかーーい!!って感じですかね(汗)。

すみません。
予想に反して長くなっています。

なんかバトルを入れたい!
騎士団長がまともに仕事しているところを見たい!

と思ってしまったので、もう少しお付き合いいただけたら嬉しいです。

正影とカーラも活躍する予定です。

実を言うと私、正影が大好きです。

次回もお楽しみに!

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