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小説【 Little Diamond 】

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ファンタジー小説です。科学と魔法が混在する世界。人生を自らの手で切り開いていく若者たちの、挑戦と成長を描きます。 頼りなくて繊細で、それでいて柔軟で軽率な登場人物たちにワクワクし…
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#ユウト

Little Diamond 第3話

第3話 初戦!3-1 今朝は早起きして、すでに準備を整えて朝食をいただいていた。 「あーい!みんな~おっはよ~う!」 ユウトの間延びしたようなのんきな声が、2階から降りてきた。 緊張感のなさが、彼の持ち味だ。 今日は武術大会の予選、初日。 近隣の小さな町や村から見物客が訪れ、ククルの町はいつにない賑わいを見せていた。きっと今日はお店も昼間から忙しくなるだろう。 マスターも仕込みに余念がない。 私とユウトはもちろん、大会に参戦予定だ。 おかみさんがお店のテーブルを拭

Little Diamond 第6話

第6話 背中を預ける6-1 ……どれくらい経っただろうか。 ユウトが芝生の上で昼寝を始めてから、たぶん1~2時間ほど? 依然として死んだように眠っている。 不安になって、耳を近づけて呼吸を確認する。 ……うん、大丈夫。 ちゃんと生きてる。 日も傾いた午後。 少し高台に陣取ったおかげで、3つの闘技場の様子が遠目にだがよく見える。 4回戦目に私が出場予定の第3闘技場では、3回戦目が始まっている。 そろそろユウトを起こさないと。 軽く肩をたたく。 「ユウトー、そろそろ起

Little Diamond 第7話

7 突破の導線7‐1 「だぁぁぁぁーー!!!マジかーー!!!」 絶叫してガックリと肩を落とし、うなだれるユウト。 心の底では分かってはいたものの……。 私だってこんな日が来ないことを願っていた。 今朝の抽選でユウトとの対戦が決まったのだ。 ただし、今日ではないけど。 武術大会予選、3日目。 勝ち上がった12人が、今日からは3ブロックに分かれてのトーナメント戦となる。 それぞれのブロックの優勝者、つまりこの予選大会から3人に、本戦への参加権が与えられる。 ジュリア

Little Diamond 第8話

8 天敵8‐1 2人で闘技場のそばまで行くと、周囲はずいぶんざわついていた。 人が多すぎて舞台の様子を見ることができない。 黒い魔法使いとイカツイ鎧の剣士との試合……。 遠目に見た感じでは、にらみ合いが続いていたのだが。 背の高いユウトも背伸びしている。 ……と思ったら、足は地面から離れて30センチほど浮いていた。 「ゴメン、ジュリちゃん。手つないでもいい?」 「……へ?」 そう言って有無を言わさず手を取られた。 「バランスとりづらいんだよね、これ」 上のほうから

Little Diamond 第9話

前回までのあらすじ 父に内緒で家出してきた王女ジュリア(15)は、魔法使いの青年ユウト(18)と一緒に、全国規模の武術大会に出場することとなった。 首都から近い、ククルの町で行われた予選大会。 かつてこの国最強と謳われた母親仕込みの格闘技を武器とするジュリアは、大柄な格闘家、魔法忍者、詠唱系魔法使いを知恵と工夫で撃破していった。 一方、酒場と道具屋でバイトを掛け持つフリーターのユウトは、人を傷つけることを嫌う優しい性格ゆえに、苦戦続き。 しかし剣士やお色気ダンサー、

Little Diamond 第11話

第11話 日常のカタストロフィ 11‐1 ユウト視点 今日は午後からみんなで武器屋に来ていた。 ジュリちゃんが注文した防具ができ上がったから受け取りに行く、って。 武器屋にあまり縁のないエミリは、好奇心から「私も行ってみたーい!」ってなって。 オレは特に用はなかったけど、1人で留守番もなんか寂しいから。 せっかくだからジュリちゃんに良さそうな魔法装備を考えてみようかなぁ……ってついてきたわけだった。 そう広くない武器屋の店内には、ありとあらゆる装備品が所狭しと山積