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オーヘンリー『アラカルトの春』

 オーヘンリーは短編小説の名手で、その昔、ちょっとした家にはオーヘンリの短編は置いておけ、みたいな風潮が流れていたこともあるくらい有名な作家さんです。

 日本で言う『星新一』みたいな立ち位置ですが、歴史はオーヘンリの方がはるかに古いですね。

 オーヘンリーを好きな人には申し訳ないのですが、短編の全体的には『ふ~ん』って思えるような作品が多いですw先が読めてしまうというか、ありきたりというか。

 まぁそれはしょうがないですね。19世紀の作家さんですから。当時は新しくて刺激的だったのでしょう。

 とはいえ、数ある短編の中でも『これだけは読んで欲しい!』というものがあるのでそれを今回ご紹介したいと思います。

 タイトルにもありましたが『アラカルトの春』です。

 『オーヘンリー短編集Ⅰ』の最初の方にありますので、図書館とか本屋に寄ったときにでも読んでみてください。短くて読みやすいですから。

 この『アラカルトの春』は、読んだら絶対に誰かに話したくなりますよ。短いお話ですから、たとえばマンネリ気味のカップルとか、最近会話がすくなくなってきたと感じている夫婦の方、あるいは何か面白いことねーかなー、と思っているあなたには最適といえるでしょう!

 簡単なあらすじをご紹介しますね。

 むかしむかし、『ウォルター』と『サラ』という、2人の結婚を約束したカップルがいました。彼らのデートといえばもっぱら『原っぱを散歩する』ことでした。ウォルター青年はよくタンポポの髪飾りを作ってサラにプレゼントしていました。ウォルターの優しさに、サラはいつも癒されていました。

 しかしそんな二人に悲劇が訪れます。なんとウォルターは兵隊として徴収され、サラと離れ離れになってしまうのです。

 かならず戻ってくるとウォルターは言いました。サラはそれを信じてウォルターを待つことにしました。

 サラは都会でタイプライターの仕事を見つけ、来る日も来る日も料理屋のメニューをタイプする日々。ウォルターが帰ってきたという知らせも来ないまま、毎日、毎日、メニューをタイプする日々。戦争が終わって、あれから何ヶ月も経つというのにウォルターは帰ってきません。彼女は寂しくて寂しくて、毎日泣いて過ごしました。

 と、ここまではけっこうありきたりな話ですよね?オーヘンリー自体が以降の娯楽作品のちょっとした基盤になっているので、どちらかといえば普遍的といえるでしょう。

 ウォルターを離れ離れになってしまったサラですが、このあと奇跡の再会をするのです。この再会までに至った経緯がとても美しいのです。

 さて、ここからはネタバレになりますよ~!

 

 ウォルターを待ち続けて、来る日も来る日もタイプライターを打つ日々を送るサラ(店の主人は文字が書けないので)。その日のメニューは日替わりメニューの『卵付きのハンバーグと、タンポポのサラダ』でした。その日の仕事を終え、間借りしているお店の2階でぼんやりしているところに、なんとウォルターがやってきたのです!

 思わぬ再会に目を丸くするサラ。そして嬉しさにふたりは抱き合います。

 聞けばウォルターは戦争から無事帰ってきて、都会へ行ってしまったサラを探していたというのです。

 サラはウォルターに尋ねます。

『どうしてわたしがここにいるのがわかったの?』

 ウォルターは答えます。

『このお店の前を通りがかったら、美味しそうな匂いがしてきて。中に入ってメニューをみたら、すぐに君がここにいるって確信したんだ』

 ウォルターが見たメニューにはこう書いてありました。

『本日のおすすめ!日替わりメニュー。卵付きハンバーグと、いとしのウォルター』

 はい、こんな感じでふたりは無事再会することができたのでした。

 もっとつっこんで知りたい方は、ぜひ原作を読んでみてください!なにせわたしもずいぶんまえに読んでので記憶が曖昧だったりしますw大筋は間違っていないと思いますが。

 オーヘンリーは、このアラカルトの春が絶品だといえるでしょう。






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