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言語聴覚士として大切にしたいこと

昨日、聴覚障害のある大学生の修学を支援するお仕事をされている方々にお話を伺わせていただいた。

これは今、一緒にお仕事させていただいている方から声をかけていただいたもので、完全なる「棚から牡丹餅」。人との関係って本当に尊い。こうやって網の目になり、その網の目で子どもやご家族を包み込んでいきたい。

そんな日に考えたことを備忘録的に。

ご両親の不安に耳を傾ける「お助け窓口」言語聴覚士でいたい

聴覚障害児の療育や教育をしていく前には、障害を発見する検査や補聴器・人工内耳などの補聴支援機器の選択と装用開始という段階があるが、人工内耳をは頭部にインプラントとコイルを埋め込んで使う、手術を伴うものである。聴力検査上では「まったくきこえない」とされる子どもの親御さんの多くが人工内耳を選ぶ時代がやってきている。

人工内耳には小児・成人それぞれに適応基準があるが、小児適応基準いついては2014年に1歳半から1歳に引き下げられ、場合によってはそれ以前に行うこともある。

今後もアメリカなどの諸外国にならって、適応する聴力が90dBから70dBになったり、手術年齢が引き下げられたりしていくだろう。

当然、乳幼児段階の子どもが自分で「人工内耳をする」という選択をすることは無理である。では、だれがそれを決定するのか?

それは、親御さんの役割になる。

これはとても重い仕事なのではないかと私は思っている。だって、人工内耳をするということは、生まれてきたその子に「音の世界」を開くということだからだ。

聴覚障害児の9割は健聴者の両親のもとに生まれる。両親は音の世界で生きてきたのだから、自分の子どもにもその世界で生き生きと過ごしてほしいと願うのはとても自然なことだと思う。だからこそ、音の世界に接することのできる可能性の高い人工内耳を選択するのもある意味自然な選択だといえる。

ただ、大切なことは、自分の中に流れ込んでくるたくさんの情報を咀嚼して吸収して、整理できて、子どもに「お母さん・お父さんはこう思ったから、あなたに人工内耳を選んだんだよ」と伝えられるようにしておくことなのではないかと思う。

これは、補聴器を選ぶ時にもそうである。補聴器を装用し、調整し、子どもの持つ聴力を持ち上げ、音の世界に触れさせようとする。

機器は違えど、目指そうとするところは同じ。

育児には不安が尽きない。かつては自分も通ってきたはずの道なのに、私たちはすっかり忘れて大きくなり、いざ新たな命と向き合ったときに涙が出ることもある。それが、ハンディキャップをもった子どもなら、きっと「こうであろう」という育児が通用しないときもあり、さらに不安になることもあるだろう。

そんなとき、先輩ママの子育て話や難聴者自身の体験談をきくことは、とても有効な方法の一つだと思う。

しかし一方で、その人の経験はその人のものであり、そっくりそのまま自分や自分の子どもに適応されるわけではない、ということも理解しながら情報に触れる必要がある。

しかし、グルグルと渦巻く不安の中にある親御さんに冷静にそれをしろ、というのはあまりに負担が大きいのではないかとも私は思っている。

だから、両親の相談窓口となる言語聴覚士になりたい。

〇聴覚障害や補聴器機についての「正しい知識」を伝える
〇言語発達の知識と言語の本質的な役割について理解を促す
〇親御さんが得てきた情報を聞き取り整理する
〇10年後、20年後の長期的な視点でどう育ってほしいか一緒に考える

「この人のようになってほしい」ではなく、「~ちゃん、~くんらしく育ってほしい」という願いに資するものとして情報を昇華できるよう、ご両親と客観的でありながらも、密なかかわりをし、選択する一助となりたい。

これは、病院や教育機関などに所属するSTには難しいのではないかと推察している。フリーランスだからこそできることをして、難聴児者と家族とともに、長い人生を歩いたり走ったりしていきたいと思ったんだ、ということを改めて感じた日になった。

読んでいただきありがとうございます!頂いたご支援は、言語指導に使用する教材開発や勉強会への参加費用に充てさせていただきます!