番外編(幽霊船)

無性に書きたくなったので書きます。

今までのライナーノーツはライナーノーツと言いながら曲の話なぞせずに自分語りばかりしていたのですが、今回1度だけ曲の事を書きます。
あやしげふわりすとではなく、根岸しげやすの曲です。

僕はよくミュージシャンの歌を信じるな。と言ってますが、これは嘘つきだ!という意味ではなく、その裏側を探ったり、自分の経験や感情を反映させた方がすごく楽しいよ。ということなのです。
今回、僕の幽霊船という曲の歌詞にどんな意味があるのかを書いてみます。
全ての曲やミュージシャンがその通りではないし、各個人の解釈の方が絶対に正しいので、「あー、こいつはこんな考えなのか。」程度で見てください。


幽霊船

幽霊船から連れ出してよ
あいつらみんな嘘つきばっか
心配だったら星をひとつまみ
振り撒けばもう怖くないわ

新しい足と両手がどうやら仲良く出来ていない感じ
ついでに喉のマイクもイカれて思ってもないこと垂れ流し

半分溶けてるアスファルトの上ギリギリなんとか顔だけだして
幸せ感じる瞬間探して笑ってはしゃいで待っている

幽霊船から連れ出してよ
あいつらみんな嘘つきばっか
夜に怯えて世界を照らす火に
炙られ心は爛れてる

海の深くから注いだミルクが五体満足の染みになる
電気クラゲから触手が絡んで娼婦は夢から戻ってこない

真夜中ベッドの下から這い出る
妖精達とこどもを作った
あんまりあたしに顔が似てるから
気味が悪くてすぐに捨てた

幽霊船から連れ出してよ
お前らみんな嘘つきばっか
答えは風の中にあるのなら
芸術なんてくたばっちまえよ

中央線から踏み出してよ
お前らみんな米付きバッタ
答えは風の中にあるのなら
芸術なんてくたばっちまえよ


以上が幽霊船の歌詞です。
この曲の幽霊というのは二つの意味があるように思う。
まず1つ目は攻殻機動隊的なゴースト。
つまり魂のようなもの。自分が自分たり得る確証。
2つ目は、僕がカンボジアに行った時にスーパー勘繰りモード(周りの人間の全てに自分の考えが聞かれている妄想。サトラレ的なやつ。)が発動してしまった時に、ずっと一緒にいた現地のガイドの人が「それは現実じゃない。ゴーストだ。自分の中に作り上げてしまっている妄想だから大丈夫だ。」と言ってくれて何とか救われた思い出があります。
そこから、自意識の中で作り上げた他人像。被害妄想。
これをゴーストと呼んでいます。

幽霊船とは、自意識の中で作り上げた妄想の集合体に囲まれ、取り憑かれている状態なのです。
なのでそこから連れ出して欲しいのです。
自分が作り出した妄想の世界ではなく、現実の人間と魂を触れ合わせたいのです。
星をひとつまみ振りまくとは、現実的に隕石です。
いつかは地球も無くなるし、その前に自分は死ぬのだから心配なんてしなくていい。
頭の中で隕石を降らしてゴースト皆殺しにしてしまえば、あとは目の前の人間だけ見つめればいいのです。
そしてもう1つ、地球から見た星は微かな輝きだけど、実際は地球より何倍もでかい。
自分は無力だ。と何もしないのでは無く、なんでもいいから行動すれば、それは意外とすごいパワーを持ってるのだよ。と言いたいのです。

Aメロに入ります。
体が勝手に動く無意識の状態と、思考し意識的に動かす状態があると思います。
いつもは自然に切り替えが出来ていますが、この二つの状態がある。と意識してしまったときから、自分は今どういう状態なんだ?と心と体がギクシャクしてしまうようになった時のことが新しい手足のくだりです。
アスファルトというのは自然の対義語としてよく使います。
自然とはネイチャーとナチュラルどちらの意味も孕んでいます。
つまり、自然を壊しアスファルト舗装された現代と、その中に浸かり、身動きが取れない状態でただ生命を存続することしか出来ない生活。
自然に生きてく事が出来なくなった状態を表してます。
その中でもがく人、それに気づいてさえいない人、そして、その中からでも幸せがある。と思考停止して満足感を得ようとする人を表してます。
夜に怯えて世界を照らす火というのも、人間が本能に従って恐怖から逃げ続けた結果、世界から夜が消えて24時間心の休まる瞬間はなくなってしまった。という意味です。

2番の頭はヒンドゥー教の乳海攪拌のこと。
詳しくはWikipediaを読んでくれれば分かるので超ざっくりいうと神と悪鬼が協力して世界を作り直したよー。みたいなもの。
僕の解釈では、今の自分というのは1億年前から続けてきた生物達の流してきた命の凝縮体のような存在。
だからこそ、慈しむ心を無くしてはならない。
1億年かけて混ざりあっているのだから。
そして現在、新しい事を想像し創造する力を手に入れた。そんな考えです。
娼婦とは、初めは自分の心の満足の為だけにやっていた事でも、対価が発生したことで、今度は対価のために行動してしまう様を表してます。
電気クラゲは意思を持たず刺激だけを与える存在。
つまり、思想を忘れて刺激に対して反射のようにそれを求めてしまうだけになったらおしまい。
それは脳内物質が作り上げた幻の世界のようなモノで、本当の人生の幸福ではない。
ベッドの下から這い出でる妖精とは、集合的無意識を具現化している。
個人的な感覚だと、曲を作っているのは自分自身と集合的無意識なんだと感じている。
だから自分の力で書いた達成感等は感じたことがない。
何者かに作らされたような。初めからそこにあったモノを掘り出したような感覚なのだ。
子供とはそんな自分の作品達。
そんな感覚の中で生み出された自分の曲が醜くて汚くて美しくて可愛いのだ。
捨てるというのは自分の内面から吐き出すこと。
外の世界に楽曲として、ライブとして出すこと。
ここは倒置法のようになっていて、本来はこうして内から出るモノを作品に昇華するだけでよいのだから娼婦になるな。というくだりなのだ。

そして最後。
ここまでずっと思想の話をしてきたが、嘘つきばっかが三人称から二人称に変わる。
ここからは僕の中のゴーストではなく、現実の人間に対して戦う意思を示している。
聴いてくれている、これを今読んでくれている貴方に伝えている。
貴方の中の幽霊船から早く貴方の魂を出してあげて。と。
それは生きることでも死ぬことでもどちらでもいいから「決める」こと。
その1歩を踏み出すこと。
前でも後ろでも上でも下でも進む事が大事だと。
ただあるがままを見つめるのは僕は芸術だとは思わない。
自然は芸術的だけど、色んな感情とか思想とか理想こそが芸術だと思うのだ。
決してボブ・ディランをディスっている訳ではなく。
本気で尊敬しています。

まとめると、自分が心からやりたいことを蔑ろにするとどんどん心が荒んじゃう。
他人が皆敵に見えたり、モノのように扱ってしまったりする。
頭の中であれこれ考えるよりも、心が素直に満足することを実行して行こう。
そんな曲なのです。


という全て妄想です。きっと根岸しげやすはこんな風に作ったんじゃないかなー。と考察してみました。

とまぁこんなようにいろんな物事をこうかも知れないあーかも知れないって考えるのって楽しいじゃない。
こういう感覚で色んなものに触れると人生楽しいですよね。

そして何よりも解説なんてしなくても伝わるように楽曲を作っていきたいですね。わかりやすくではなく、感じやすく。

お疲れ様でした。420!

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