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光に包まれた寂しい街で、もうあえないあの子の残骸をみる

青信号で一斉にどこかへ向かう人の大群。ぼくもきみも、この街の限りなく小さな一欠片にすぎない。欠片を合わせて運命を作りたがるくだらないぼくたちは、いつでも繋がりを求めては蠢いている。儚いなんて言葉が似合わないくらいにぎっしりと詰められた光の粒たち。いつでも少しうつむいて早く歩くのは、ぼくだけがこの街から見放されている気がするから。一夜限りの友人達と繰り返される一夜限りの遊戯。回る世界と希望に似た唄、ぼくたちは夜の底に引きずり込まれる。
気づいたら会えなくなっていく人ばかりだね。
ねえもう会えないのかな。
大量のネオンが敷き詰められた光で表層だけ照らされて。街灯に集まる虫のようになったぼくたちは一夜限りの快楽を求めてはこの街にしがみつく。誰かと手を繋いで歩いた気がするこの道も、記憶の中の隣の誰かは姿がぼやけていて何も分からなかった。ねえもう会えないのかな。
気づけばSNSがなくなっていたあの人。なんとなく連絡出来なくなってしまったあの子。気づけば誰もがいなくなっていて。きっときみはこの街の一部として今もどこかで息を吸っている。ただ、ぼくの世界からいなくなってしまっただけで。どの世界線を選んでも、きみとはこうなる運命だったと思う。行きつけだったBARであの子が何度も歌っていたあの曲の名前が、歌詞が、メロディーが、うまく思い出せない。あの子がいつも飲んでいたお酒を、あの子の口癖を、あの子のホクロの位置を、思い出せたなら。この街も少しは煌めいてみえるかな。見せかけだけじゃなくて深層に眠る微かなひかりを見るのかな。お手軽で、刹那的な快楽に縋る。ねえ、もう、会えないのかな。

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