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世界一きれいな地獄

きみとならどんな地獄でも良かった。
きみはいつもどこか冷めた目で何もかもを見ていた、わたしのことさえも。それが悲しくて、愛おしかった。きみは新宿の街が似合うね。電磁波のたくさん通った人混みで溢れたあの街が。なんて言ったらきみは怒るかな。わたしの大嫌いな街。きみは刹那的な快楽を求めてこの街に繰り出す。まるで地獄に近づいているみたい。心地のいい地獄、きみの隣。気持ちのいい絶望、きみと堕ちていく快感。君の隣に天国なんてどこにもなかった。ただ暗闇の隙間から差し込む微かなひかりを手探りで掴もうとする日々、時々現れては消える期待のひかりは絶望よりもっとずっと地獄でわたしを失望させた。コンビニで買うまずい缶チューハイを流し込んでは、友達のようでひとつだってそうじゃない他人と中身のない会話をする。きみはすぐに知らない人と話したがるからわたしは少し困っちゃうな。アルコールによって生成された気力で行為に及ぶ、終わりのような楽園。それでもきみさえいれば、きっとここは世界一きれいな地獄だよ。

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