混ざり合ったピンクとグレーは、愛に似ていた

好きだった頃の気持ちに恋をしていた。愛に恋をしていたんです、きっと。ピンクとほんの少しのグレーが渦を巻いて、マーブルのような歪んだ模様を形成している。愛の残り香を拾い集めては無機質な情として放出している。あの頃食べ残した愛を必死に掻き集めて、引き伸ばしている。違和感を飲み込み、なんとか消化しようとする。飲み込み続けた毒はやがて体内を侵食し、ゆるやかに濁っていく。ゆるやかに、堕ちていく。始発を待っている時のホームにながれるぬるい空気のような、小さな絶望がどこからともなく襲いかかる。
純白なものをいつでも自分の手で歪めている。自ら汚した体と思考を誰かの音楽に落とし込んで薄っぺらい共感を憶えている。腐らせた孤独を、息苦しさを、どうしようもないくらい静かな路地で煙草の煙と共に吐き出している。神様はもう居ないのに。深夜2時、カップ麺をすすりながら、ただ過去を美化させるだけの機械と化した脳味噌をアルコールで腐らせた。なんだか今まで愛していた筈の日常が、潰しても沸いてくる小さな虫の大群のように見えたから。戻らない時間を幻と呼んだら、朝の日差しに殺されそうになった。きっと幻なんかじゃなかった、確かにそこにあった微かな光だった。だから嫌いになれなかった。限りなく情に近い愛を噛み砕いて粉々にした。これで全部終わりだね。
好きなアニメの最終話とか、幼い頃読んでいた小説の台詞とか、はじめてギターで引いた曲とかが次々と脳内に流れ込んできた時に、少しずつ体が犯されていくのを感じた。きみの頭に僕の言葉が流れ込んできた時に、また君のことを愛せるかな。今度はもっとちゃんと。混ざり合ったピンクとほんの少しのグレーに想いを馳せて。

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