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2022年5月24日 ニコライ・ホジャイノフピアノ・リサイタル@渋谷区大和田さくらホール 雑感

昨秋のショパンコンクールでは完全なる独自路線による演奏で観客を驚愕させ、それをまた聴くことができる期待のオール ショパン プログラム、かつコロナ禍による2度の延期を経ての開演だったこともあり、それはそれは楽しみにホジャイノフ氏のリサイタルに行きました。

会場は700名程度収容の渋谷の中型ホールで、客席は8割方埋まっていました。
1階席を眺めると、スポ少帰りと思しき、大きなスポーツバックを肩掛けした小学生の男の子がお母さんと来ていたり、バイオリンケースを背負った中学生くらいの女の子がいたり。私は2階上手側バルコニー席だったのですが、隣は、おしゃべりから察するに、80代のご婦人2人組。ホジャイノフ氏のファン層の厚さも興味深いものでした。
 
第1部は英雄ポロネーズから始まり、ノクターンやエチュード、そしてバラード4番、第2部はショパコンでも話題になったフーガと大曲ソナタ3番。「第3部」といってもいいアンコール10曲(!)で終わりました。
 
ホールの仕様なのか、彼の演奏技術なのか...地を這うような低音の一方、突き抜ける高音の響きが印象的で、これはコンクール配信では気づかなかったことです。
 
アンコール10曲に、Twitter上では「祭り」と称され話題となるほどでした。その10曲のうち2曲がラフマニノフ「楽興の時」第4番とスクリャービン「12のエチュード」の『悲愴』で、これらこそホジャイノフ氏のお家芸を見せつけられました。髪を振り乱し、顔を紅潮させ、現在起こっている遠い彼の地の悲しみを体現しているような演奏に、私の心はすっかり射抜かれました。
 
1階前方席の小学生はピョンピョン跳ね、私の隣のご婦人もハンカチをブンブン回しながら、スタンディングオベーションでホジャイノフ氏の演奏に賛辞を送っていました。
 
日常生活では得られない、心の騒めきや高鳴りに浸りつつ帰路につきました。

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