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『ぼくらに嘘がひとつだけ』のあとがき

7月25日に文藝春秋より新刊『ぼくらに嘘がひとつだけ』が発売されました。
自分にとっては42冊目の本で、文藝春秋からは初めての刊行です。

作家生活は今年で13年目なのですが、ここ数年、自分でも成長出来ている気がしていて。再び、今までで一番面白い小説を書けたように感じています。

初めてPVも作ってもらいました。


こちらのページで、第一部の終わりまで読んで頂けます。


『ぼくらに嘘がひとつだけ』には、あとがきがありませんので、徒然に。

メフィスト賞が(と言うか、森博嗣先生が)好きなので、若い頃に憧れていた編集部は、講談社の第三出版部でした。
デビュー後、最初に声をかけて下さった編集者さんが、その第三出版部にいた方だったこともあり、数年後、講談社タイガの創刊をきっかけに実際に仕事をするようになりました。そんなわけで、割と早々に、憧れの編集部でも原稿を書かせてもらえるようになったのですが。

作家のお友達と喋っていると、「どこの出版社で仕事がしたい?」みたいな話題になることがあります。
講談社や角川書店で原稿を書くようになった後、僕はよく文藝春秋と言っていたんですが(言い続けていたら、誰かが繋いでくれるんじゃないかと期待して)、しかし、チャンスもないまま、時は過ぎ……。
もう、いっそのこと【松本清張賞】に送ろうかな。プロアマ不問だしな。仕事がしたいなら正面からだよな。みたいなことを思っていまして。
そんな折、文藝春秋の編集者さんと知り会う機会があり、こちらの記事の事件(?)に繋がりました。

https://bessatsu-bunshun.com/n/nf819a829d5da


一期一会というか。
小説を書くって想像以上に人と人の仕事なので。
原稿を書くのは一人なんですけど。
巡り合わせとタイミング。
一緒に作って下さる方のアドバイスで、物語はいかようにでも変わってきます。

今回の本も、【新生児の取り違え】をやりたいと思った時は、棋界を舞台にしようとは考えていませんでした。将棋を主題にしようと決めて、プロットを修正した時も、当初は第二部の厚仁パートがありませんでした。
しかし、編集者さんたちからアドバイスを頂いて。
適切な、この物語にとっての一番正しい形、構成に、辿り着けた気がしています。

オール讀物2022年8月号のブックトークというコーナーにインタビューを載せて頂いたんです。
zoomを使ってオンラインで取材を受けたんですが、その時の音声を使用して、現在、Podcastが配信されています。
ちょっと音が割れていたり、まさか後に配信されると思っていなかったので、めっちゃ早口で、こう、バーッと喋ってしまっていて、恥ずかしいのですが。
執筆過程の諸々も話しているので、良かったら。


本作の執筆過程には一つ、とんでもない出来事がありました。
それは、「別冊 文藝春秋」で連載原稿を書き上げた後、佐藤天彦九段に取材をさせて頂いたことです。
しかも、noteのイベントと絡め、公開取材という形で。

本当に死ぬほど緊張したんですが、
(棋士の先生と話すのが初めてで、しかも、オンラインで生中継までされていたので)
天彦九段が本当に素晴らしい方で。一つ質問すると、こちらの意図まで汲み取り、十を答えて下さるので。
こんなにも楽しく勉強になる時間はなかったという、公開取材でした。

棋界の頂点に立たれたことのある方に、何でも質問して良いという。
幸福で、貴重な時間でした。

イベント自体も延長しているんですが、実は、その後、深夜3時まで話を伺っています。


佐藤天彦九段、本当に、ありがとうございました!
あの日のイベントを受けて、単行本刊行に向けて、様々な部分に手を入れています。

天彦九段の話は超絶に面白いので、個人的には、YouTubeで実際にお話を聞いて欲しいですが、抜粋した記事も文春オンラインに載っています。


嬉しかった話を、もう一つ。
SNSで小説を紹介されているけんごさんが、TikTokで紹介動画を作って下さいました。
『死にたがりの君に贈る物語』の時にも驚いたのですが、動画で作品を紹介して頂けるって、未来です。

けんごさん、素敵な動画をありがとうございます!

@kengo_book

『ぼくらに嘘がひとつだけ』才能を決めるのは、遺伝子か、それとも環境なのか? #本の紹介 #おすすめの本 #小説 #小説紹介

♬ 花に亡霊 - ヨルシカ


時々、新作を刊行する前に、プルーフというものを作ってもらえることがあります。
関係者だったり書店員さんに発売前に読んでもらうためのものなのですが、今回も作って頂いていて、こんなページも。

発売前は、特に、精神状態が不安定になるので。
ここに紹介されている感想はもちろん、ほかにも何十人という書店員さんが寄せて下さった感想に励まされました。お忙しい中、プルーフを読んで頂けたことに、本当に感謝しています。


知らないところで、書評もアップされていて。
こちらの二つの記事にも驚きました。

吉田大助さん、皆川ちかさん、ありがとうございました!
伝わっている。届いていると実感出来て、本当に嬉しかったです。


PV、YouTube、TikTok、Podcast、文春オンライン。
まとめてみると未来感があります。
執筆を始めた時は、こんなことになるなんて想像もしていませんでした。

今は、一人でも多くの人に楽しんで頂けたらと願うばかりです。

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